2代目M5(E34)は明確なレースフィールドを想定して開発されたわけではないが、モータースポーツを戦えるだけのパフォーマンスを備えており、実際に北米を中心にレースでも活躍することになる。

セダンに続いて、ツーリングモデルも登場

初代M3の大成功を受けて、1988年には第2世代のM5(E34)が登場した。

搭載される3.6L直列6気筒エンジンは315psの最高出力と360 Nmの最大トルクを発揮、ゲトラグ製の5速MTが組み合わされていた。このM5からエンジンの社内生産コードに付けられる識別記号が「M」から「S」に変わり、モータースポーツ社のエンジンは通常のものと識別することができるようになった。

初代M5同様、モータースポーツ参戦を想定した高性能な仕様となっていたが、やはりマッシブなホイールアーチや派手なスポイラーなどを持たない佇まいはひっそりとしたおとなしいもので、このモデルもまた「羊の皮を被った狼」だった。

画像: 同じ「M」のエンブレムを冠するものの、2代目M5(E34)は、グループAツーリングカー選手権のホモロゲーションを取得するために開発されたM3(初代E30)とは少々趣きが違っていた。外観はいたって穏やかで涼しげ。

同じ「M」のエンブレムを冠するものの、2代目M5(E34)は、グループAツーリングカー選手権のホモロゲーションを取得するために開発されたM3(初代E30)とは少々趣きが違っていた。外観はいたって穏やかで涼しげ。

それでもボディのスタイリングは7シリーズと共通した流麗なイメージとなり、アルミホイールにエアロディスクを被せるなどエアロダイナミクスにも配慮され、高速域での安定性が大きく向上した。また、専用設計パーツを採用し、スポーティなドライビングを可能にしていた。

1992年には排気量を3.8Lに拡大し最高出力を340psにアップ。その後、1994年の改良では6速MTと18インチタイヤが採用され(前期型は17インチ)、フロントブレーキが大径の4ピストンに変更されている。

最高速度は250km/hを超えるが、リミッターによって250km/hに制御されることになったのもニュース。まずはセダンのM5が市場に導入され、1992年には3.8L直6エンジンを搭載したツーリング(ワゴンボディ)が登場、このモデルは傑出したスポーツ性と実用性を併せ持つモデルとなった。

2代目M5はレースで活躍できる実力を持っていたが、当時ヨーロッパではコンパクトなツーリングカーレースが好まれており、主にIMSAを中心としてアメリカのレースフィールドで活躍することになる。第2世代のM5は販売台数を初代の約5倍まで増やして1万1363台を生産、日本市場にも1988-1996年まで導入された。

画像: エンジンは通常の5シリーズに搭載されるものとは別物の直列6気筒ユニット。あのM1に搭載されていたものと同じ系譜を持つ。

エンジンは通常の5シリーズに搭載されるものとは別物の直列6気筒ユニット。あのM1に搭載されていたものと同じ系譜を持つ。

画像: M5には通常のモデルでは実現できないスペシャルな性能が盛り込まれていた。それゆえ乗り心地は硬めで、本物のレーシングマインドが感じられた。

M5には通常のモデルでは実現できないスペシャルな性能が盛り込まれていた。それゆえ乗り心地は硬めで、本物のレーシングマインドが感じられた。

BMW Mの系譜のバックナンバー

BMW M5 (1990) 主要諸元

●全長:4720mm
●全幅:1751mm
●全高:1475mm
●ホイールベース:2761mm
●車両重量:1670kg
●エンジン:直列6気筒 DOHC
●排気量:3535cc
●ボア×ストローク:93.4×88.0mm
●最高出力:315ps/6900rpm
●最大トルク:360Nm/4750rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:5速MT
●サスペンション:ストラット/セミトレーリングアーム
●最高速:250km/h
●0→100km/h加速:6.3秒

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