3代目M3(E46)が登場したあたりから、Mモデル、BMW M社が話題にならない年はなかった。そして、BMWがF1で活躍する中、2004年、注目のモデルが登場した。それが4代目M5だった。そのコンセプトはMモデルの原点を示すと同時に、Mモデルの可能性をさらに広げることになるのだった。

歴代M5のモヤモヤを一気に払拭

2004年秋、E39の3代目M5の後継にあたる新型M5(E60)が登場した。E60のM5は、気品にあふれると同時に、かつてないほどパワフルだった。

排気量5LのV型10気筒エンジンは、最高出力507ps、最大トルク520Nmを発揮、リッターあたりの出力は100psをオーバー、エンジン回転数のリミットは8000rpmを超えていた。この数値は日常用車両とレーシングカーの境界を取り去っていた。

そしてなにより、先代M5(E39)が抱えていたモヤモヤを払拭していた。先代M5(E39)は非の打ちどころのないスポーツセダンに仕上がってはいたものの、モータースポーツとの関連性に乏しく、Mモデルとしてはどうかという声が一部にあったが、この4代目M5(E60)はウイリアムズと組んで参戦しているF1のイメージを色濃く投影し、サーキット直系の匂いを濃厚に漂わせていたのだ。

実際の性能ももはやモータースポーツのレベルで、F1マシンと同じV10エンジンと7速SMGとの組み合わせにより、ライバルとされた量産型スポーツセダンを凌駕、0→100km/h加速は4.7秒となっていた。なお、最高出力507psという数字は、往年の名車ロードスター「BMW 507」をリスペクトした結果とも言われている。

画像: 2005年に上陸、日本にも大きな衝撃を与えた4代目M5(E60)。高性能スポーツセダンであるだけでなく、Mモデルらしい、レースの匂いを感じさせるモデルでもあった。

2005年に上陸、日本にも大きな衝撃を与えた4代目M5(E60)。高性能スポーツセダンであるだけでなく、Mモデルらしい、レースの匂いを感じさせるモデルでもあった。

トランスミッションは油圧によりクラッチを作動させる、2ペダルMTのセミオートマチックトランスミッションとなる7速SMG。ダンパーには電子制御で減衰力を調整できるEDCが備わり、これらはステアリングホイールに設けられたMボタンを押すことで、事前にiDriveで設定した好みの状態を瞬時に呼び出すことができた。さらにF1マシンのような強烈タートダッシュを決めることができるローンチコントロールまで備わっていた。M5(E60)は、最新技術の投入に熱心なBMWを象徴する、最高のハイテクマシンに仕上がっていたのだった。

外装には専用エアロパーツが備えられ、歴代のM5と比較してアグレッシブなイメージを備えていた。ただし、フロントフェンダーに備わるエアアウトレットには機能上の放熱効果はなかった。また、リアのMスポイラーは日本では標準装備だが、海外ではオプションだった。

欧州にはワゴン仕様であるM5ツーリング(E61)も存在したが、日本国内には正規輸入されていない。

そして、M5登場のわずか数カ月後に同じエンジンを搭載したM6クーペ(E63)、2006年にはM6カブリオレ(E64)も登場している。ボタンで調整が可能なサスペンションなどメカニズムはM5(E60)と共通だが、M6クーペ(E63)にはM3 CSLと同様に炭素繊維製のルーフが装備されていた。もちろん、M6も250km/hより速く走行することが可能であり、そのため、BMWは閉鎖されたコース内で行うドライバートレーニングを通じて、より高い最高速度を体験する機会を提供していた。

BMW Mの系譜のバックナンバー

BMW M5(2005)

●全長:4855mm
●全幅:1846mm
●全高:1469mm
●ホイールベース:2889mm
●車両重量:1830kg
●エンジン:V型10気筒 DOHC
●排気量:4999cc
●最高出力:507ps/7750rpm
●最大トルク:520Nm/6100rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:7速SMG

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