2019年9月29日、F1第16戦ロシアGPがソチ・オートドロームで開幕する。3連勝中のフェラーリがここでも勝利するのか。レッドブル・ホンダがどう盛り返すのか。次戦鈴鹿で行われる日本 GPに向けてという点でも興味深い一戦となる。(写真は2018年のロシアGP。ソチ・オートドロームの3コーナー)

オーバーテイクも可能で、高温多湿のシンガポールとは全く違った展開になる

ロシアGPが開催されるソチ・オートドロームは2014年冬季オリンピックの会場跡地に建設されたサーキットで、5.8kmのコースの一部1.7kmは公道を使用する。半公道サーキットのため、コンクリートウォールで囲まれた部分が多く、グランプリの走り初めはタイヤグリップが小さいが、セッションを重ねるごとにラップタイムが大きく向上していくのが特徴。変化する路面状況にあわせてマシンをどうセットアップしていくか、タイヤ戦略をどう読むかが重要なポイントとなる。

オーバーテイクポイントはストレートエンド、ターン3とターン13の2カ所となるが、ほかにもオーバーテイクのシーンは多く見られそうだ。コースレイアウトはストップ&ゴー型で、トラクション性能とグリップ性能、ブレーキ性能が要求されるとともに、リアタイヤの摩耗にも注意しなければならない。

名物コーナーはほぼ全開で駆け抜ける超高速の3コーナー。ここではマシンのバランスが試される。また、ピットレーンが長いため、ピットストップのタイムロスが大きく、ワンストップ戦略が主流となる。

レッドブル・ホンダにも大きなチャンスがあるコース設定だが、ソチには長いストレートがあり、しかもフェラーリが苦手とされていたシンガポールGPで予想外の速さを見せただけに予断を許さない。いずれにしても、シンガポールGP同様、決勝グリッドがその後のレース展開に大きな影響を与えそうだ。

昨年のロシアGPは、優勝ルイス・ハミルトン、2位バルテリ・ボッタスでメルセデスAMGの1−2となった。ただしレース前半の順位は逆で、タイヤを傷めていた2番手のハミルトンがフェラーリのセバスチャン・ヴェッテルの強襲にあったため、順位を一時的に入れ替えてボッタスがヴェッテルをブロックしてハミルトンを逃した結果だった。しかし、終盤になっても再入れ替えはなく、そのままフィニッシュしてしまった。ボッタスがそれに対して不満を示すなど後味の悪いレースとなった。結局、全てチャンピオン争いを見据えた戦略であり、このグランプリで事実上、ハミルトンのチャンピオンが決まった。

タイヤを供給するピレリは、今回のロシアGPについて「ソチ・オートドロームの路面はスムーズで、初めて開催されたときは1組のタイヤでレース全体を実質的に完了できるほどでした。ターン3をのぞいて、タイヤにとって特に厳しいサーキットではありません。歴史的にワントストップが標準です。最大限にプッシュできますが、路面の変化にうまく対処することがソチで成功するためのカギとなるでしょう」と見ている。

画像: ロシアGPの各ドライバーの選択タイヤ。

ロシアGPの各ドライバーの選択タイヤ。

一方、ホンダの田辺豊治 F1テクニカルディレクターは「高速サーキットのモンツァ、低速なストリートサーキットのシンガポールという特徴的なトラックでのレースを経て、今回は比較的、普通のサーキットと呼べるソチでのレースに臨みます。ここは90度コーナーが数多く存在していることが特徴で、パワーユニットとしてはシンガポールと同様にコーナー出口から速く立ち上がるためのドライバビリティが求められます。ストレートが長いことも特徴ですが、エネルギーマネジメントについては過去のデータもあるので、大きな問題になるとは考えていません。シンガポールではパフォーマンス的に難しい状況下で、表彰台を獲得することができました。今回のソチでもポジティブな結果を残すべく、限られた時間のなかでチームとともに準備を進めます」とコメント。ホンダ勢4人のドライバーは次のように語っている。

マックス・フェルスタッペン

画像: マックス・フェルスタッペン(左/レッドブル・ホンダ)。ドライバーズランキング3位。右はフェラーリのシャルル・ルクレール。

マックス・フェルスタッペン(左/レッドブル・ホンダ)。ドライバーズランキング3位。右はフェラーリのシャルル・ルクレール。

「シンガポールでは表彰台に立ててうれしかったですし、チームもいい戦略を立ててくれました。ロシアはオーバーテイクのチャンスが多いサーキットなので、楽しみにしています。ほとんどのコーナーが90度という独特のコースで、高速のストレートから低速コーナーへのアプローチはチャレンジングですし、ブレーキングでのベストな性能を引き出さなければなりません。シンガポールではフェラーリが速くて、ソチのストレートも彼らに合っていると思いますが、先週末のレースでパフォーマンス向上のアイデアをいくつか見つけたので、それを解析して、ロシアでは向上できればと思います」

アレクサンダー・アルボン

画像: アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)。ドライバーズランキング8位。

アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)。ドライバーズランキング8位。

「ソチでは、F2で優勝経験があり、楽しみにしています。90度コーナーが多く配置されているので、ひとつうまくいけば、18のコーナーすべてで有利になります。また、ロングストレートもあり、オーバーテイクも可能なので、高温多湿のシンガポールとは全く違った展開になるでしょう。レースごとにマシンの感触はよくなっていて、僕の知見もどんどん深まっているので、チームとの仕事を楽しめています。ロシアでの目標は、ここまで学んだ成果を最大限に発揮して、チームのためになるべくいい結果を持ち帰ることです」

ピエール・ガスリー

画像: ピエール・ガスリー(トロロッソ・ホンダ)。ドライバーズランキング6位。

ピエール・ガスリー(トロロッソ・ホンダ)。ドライバーズランキング6位。

「昨年のロシアGPではレース中に僕もブレンドン(ハートレー)も同じ個所に問題を抱えて厳しいレースウイークになりました。ただ、サーキットには魅力がたくさんありますし、似たような90度コーナーが多く、それぞれ同じ速度域で抜けていくんです。カギになるのは、こうしたコーナーに合わせたセットアップです。ここでうまく機能すれば、シーズン残りのコースでも力を発揮できるチャンスがあると思います。僕にとっては、チームへ戻ってきて4戦目を迎え、重要な一戦になります。エンジニアとともにポイントを目指して取り組んでいる方向性が間違っていないと示さなければなりません。スパ、モンツァから取り組んできましたが、前戦のシンガポールでは、エキサイティングなレースを楽しみ、8位入賞で4ポイントを獲得しました。僕らはコンストラクターズランキングの順位を上げることを目指しているので、とても貴重なポイントです。このGPを終えるとホンダのホームで、僕らにとって重要な一戦となる日本GPです」

ダニール・クビアト

画像: ダニール・クビアト(トロロッソ・ホンダ)。ドライバーズランキング10位。

ダニール・クビアト(トロロッソ・ホンダ)。ドライバーズランキング10位。

「毎回たくさんのファンが応援してくれる母国ロシアでレースができて、とてもうれしいです。いい雰囲気になりますし、ロングストレートのあるコースは、いつも見どころのあるレースが展開されます。僕らにとってもおもしろいレースになるでしょうね。2014年にソチで初開催されたときのことは今でも忘れません。そのときもトロロッソにいましたが、予選ですばらしい走りができて、5番手からスタートしたんです。そして、その1年後にはレッドブルで走って5位入賞と、いい思い出がたくさんあります。今回はタフなレースになると思いますが、いつも通り自分自身とチームのために全力を尽くします。シンガポールでは、うまくいかずにかなり厳しいレースでした。でも、そこで下を向かずに今週末に向けて気持ちを切り替えようとしています。いい結果を出して、みんなで喜びたいですね!」

F1第16戦ロシアGPは、9月27日金曜日11時(日本時間17時)からのフリー走行1回目で開幕、予選は9月28日15時(日本時間21時)、決勝は9月29日14時10分(日本時間20時10分)に開始される。

2018年 ロシアGP 予選結果(参考)

1位 77 V.ボッタス メルセデスAMG 1:31.387
2位 44 L.ハミルトン メルセデスAMG 1:31.532
3位 5 S.ヴェッテル フェラーリ 1:31.94
4位 7 K.ライコネン フェラーリ 1:32.237
5位 20 K.マグヌッセン ハース・フェラーリ 1:33.181

2018年 ロシアGP 決勝結果(参考)

優勝 44 L.ハミルトン メルセデスAMG
2位 77 V.ボッタス メルセデスAMG
3位 5 S.ヴェッテル フェラーリ
4位 7 K.ライコネン フェラーリ
5位 33 M.フェルスタッペン レッドブル

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