A5スポーツバックをベースとした初のRSモデルが登場した。美しいデザインと高い実用性を持つだけでなく、とびきりの速さを兼ね備えたRS5スポーツバック。その走りを、日本のワインディングロードで堪能してきた。(Motor Magazine 2019年11月号より)

A5に初めて加わったハイエンドスポーツモデル

クーペならではの流麗なスタイリングに、ハッチゲートを備える5ドアボディゆえの高い利便性。加えて、いかにもアウディ車らしい先進イメージの演出や各部の上質な仕上げの実現などで、2ドアモデルへの追加設定がなされて以来、シリーズ内でも高い人気を獲得し続けているというのがA5スポーツバック。

そこに、ハイエンドスポーツモデルを手掛ける子会社『アウディスポーツ』が、本格的なサーキット走行まで視野に入れながら大幅なリファインを加えたのが、ここに紹介するRS5スポーツバックだ。

A5スポーツバックにRSグレードが設定されるのは、これが初めてだ。そんなこのモデルは「最新のRS」であると同時に、1994年に『RS2』が誕生して以来25年の節目を迎えた、記念すべき作品という位置づけも持つ。

今回のテスト車は、「カーボンスタイリングパッケージ」や、パークアシスト/サラウンドビューモニターから成る「アシスタンスパッケージ」、ヘッドアップディスプレイや「RSスポーツエグゾーストシステム」などをオプション装着したモデル。興味深いのはやはりオプション装着されていたセラミックブレーキが、「前輪のみ」の設定となっていること。

そんなテスト車のボディが纏っていたのは「ソノマグリーン」と名付けられたメタリック色で、実はこれは現行の2ドアクーペが登場のおりに「RS5の専用色」と謳われながら導入されたもの。

このところ、グリーン系のカラーは世界的にも人気が低迷中。が、それゆえ目にする頻度が少ないこともあって、今回のテスト車では逆に新鮮さが感じられたというのも事実。RSモデルに相応しいインパクトあるカラーという点でも、高い評価を与えたくなる。

画像: クワトロは前後の駆動力配分を40対60の比率を基本に、必要に応じてフロント最大70%、リア最大85%まで配分が可能。

クワトロは前後の駆動力配分を40対60の比率を基本に、必要に応じてフロント最大70%、リア最大85%まで配分が可能。

新開発2.9Lツインターボは450ps、600Nmを発生

全長×全幅サイズは、ベースのA5スポーツバックに比べるとそれぞれ30mmと15mmの上乗せ。前者は専用デザインのバンパーによるもので、後者はフェンダー張り出し量が増したため。初代『クワトロ』をオマージュしたフェンダー部分の強い張り出しは、高いスポーツ性を備えるRSモデルのアイコン的特徴。

ただしこのモデルの場合、ベース車両との差は一見ではわかりにくい。RS4のごとく、より明確な張り出し形状で差別化を図らなかったのは、より上質な「大人のモデル」という判断からだろうか。

2010年の初代クーペ誕生当初には、レブリミットが8500rpmで最高出力発生ポイントも8250rpmという、典型的な高回転&高出力型の4.2L自然吸気V8エンジンを搭載したRS5。が、時代は流れ、現在のRS5スポーツバックに8速ステップATとの組み合わせで搭載されるのは、2ドアクーペ登場時に「ゼロから開発を行った新エンジン」と謳われた、2.9Lのツインターボ付きのV6直噴ユニットだ。

重量は2ドアクーペ比で50kgのプラス。ハンドリング向上を目的に、後輪側により多くのトルク配分が行われる4WDシステムや、日本仕様では標準化をされたリアのスポーツディファレンシャル、対角線上のダンパーを、途中に制御バルブが挿入された油圧回路で結んだ「DRC」の採用、さらには19ものスピーカーを用いたオーディオの採用などにより、車両重量は1.8トン超と重量級だ。

けれども、いざスタートをすれば「そんな重さなど忘却の彼方」となったのは、半ば予想どおりの結果。450psという最高出力はもとより、すでに2000rpmを待たずして得られる最大トルクが600Nmと強大なので、「それもそのはず」なのである。

画像: 新開発の2.9LTFSI(最高出力450ps/最大トルク600Nm)に8速ATとクワトロ(フルタイム4WD)を組み合わせる。

新開発の2.9LTFSI(最高出力450ps/最大トルク600Nm)に8速ATとクワトロ(フルタイム4WD)を組み合わせる。

スタイリッシュにして超俊足。長距離移動も快適に過ごせる

そんなスタートのシーンを筆頭に、絶対的な動力性能はもはや「速すぎる速さ」と言って過言ではないもの。アクセルペダルを踏み続ければたちまち「とんでもないスピード」に達してしまうことは、0→100km/h加速タイムがわずかに3.9秒と、まさに「スーパーカーのレベル」そのもののデータも証明している。

一方、街乗りシーンを中心にやや気になったのは、アクセル操作に対する加速Gの立ち上がりが過敏気味であったこと。ブレーキの印象も同様で、端的に言ってしまえば「相当に丁寧にペダル操作を行ったつもり」でも時に「カックンブレーキ」になりがちだった。

これは、どうやら前輪側に採用されたセラミックブレーキの影響でもありそう。同様のアイテムをいち早く採用したポルシェ911でも、当初は同じ傾向があったことを思い出す。あるいは、前輪側のみの採用で、余計に神経質さが目立つ結果となったのかもしれない。

コーナーリングシーンでは、前軸重量が後軸重量より300kg以上も重いフロントヘビーがもたらす挙動を、リアにバイアスが掛けられたエンジンのトルク配分や前述のスポーツディファレンシャルなどが巧みに抑え込んでくれる印象。

とくに、積極的なアクセルONによってダイナミックなコーナリングフォームを作り出そうという気配が濃厚であることに、「これはちょっとサーキットで走ってみたいな」という思いを抱かされることにもなった。

ちなみに、ドライブモードセレクターで「ダイナミック」を選択すると、一般道上での乗り味はさすがに揺すられ感が強い。どうやらこのポジションは、舗装状態が行き届いたサーキットでこそ、その真価を発揮しそうなセッティングであるようだ。

スタイリッシュにして超俊足。大人4人と大量の荷物を飲み込みながらも、500km、あるいは1000km以上という距離を苦もなく快適な環境とともに移動させてくれそうなこのRS5スポーツバックは、なんとも贅沢な1台。もちろん、そんな場面の途中で悪天候に見舞われても平然と切り抜けてしまいそうなクワトロシステムの搭載も、いざというシーンではライバルに対する大きなアドバンテージとなるはずだ。(文:河村康彦)

画像: 試乗車はオプション設定のデコラティブカーボンパネルを装着し、スポーティ感を強調している。

試乗車はオプション設定のデコラティブカーボンパネルを装着し、スポーティ感を強調している。

試乗記一覧

■アウディRS5スポーツバック主要諸元

●全長×全幅×全高=4780×1860×1390mm
●ホイールベース=2825mm
●車両重量=1810kg
●エンジン= V6DOHCツインターボ
●排気量=2893cc●最高出力=450ps/5700-6700rpm
●最大トルク=600Nm/1900-5000rpm
●駆動方式=4WD
●トランスミッション=8速AT
●車両価格(税込)=1302万円

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