2005年4月18日、ジュネーブオートサロンでワールドプレミアされたレクサスISが富士スピードウェイに姿を現した。日本での正式発表は8月とされていたが、それに先駆けて一部ジャーナリストに向けて公開されたのだった。Motor Magazine誌ももちろんレクサスISに大注目、その日本デビュー第一報を伝えている。(以下の記事は、Motor Magazine 2005年6月号より)

プレミアムDセグメントで欧州のライバルと戦う

先のジュネーブオートサロン(2005年)がワールドプレミアとなったレクサスISは、メルセデス・ベンツのCクラス、BMWの3シリーズなどと真っ向からぶつかる欧州Dセグメント相当の小型(というには最近のDセグメントは成長著しいのだが)サルーンだ。

サイズや価格がリーズナブルなことから、欧州のプレミアムブランドもこのクラスが最量販。したがってレクサスが高級ブランドとして日本や欧州で本当に認知されたかどうかは、ISの人気がひとつの判断材料になり、極めて重要な意味を持つモデルである。

ジュネーブオートサロンのブースに展示されたISは左ハンドルだったが、今回、富士スピードウェイで公開されたのは右ハンドルの日本仕様。しかし違いはそれだけに留まらない。欧州仕様が2.5Lのガソリン直噴(これはクラウンに既存のもの)と、新開発の2.2Lディーゼルを搭載すると発表されたのに対し、日本仕様はこのディーゼルに代えて新開発の3.5Lガソリン直噴を積むと発表されたのだ。

この新エンジンがかなりのワザモノらしい。現時点ではそのメカニズムを詳細に語れる資料はまだないものの、直噴といっても希薄燃焼を行なうエコ志向一辺倒のものではなく、常に理論空燃比で回るストイキ直噴だ。

ちなみにトヨタはこれをD-4Sと命名した。面白いのは直噴用のインジェクターとポート噴射用のインジェクターの2つを持ち、これらを状況に応じて組み合わせて使うことにより、スワールなどのシリンダー内旋回流を作り出し、理想的な燃焼を実現するという点。パワースペックは最高出力300ps、最大トルク373Nm(38kgm)以上というからかなりの高出力タイプだ。

この新エンジンはGSにも搭載が決定しているのだが、よりコンパクトなISに積まれるということから、IS自体の性格もよりはっきり見えて来た。このクルマは現行のアルテッツァにも増して本格的でプレミアムなスポーツサルーンなのだ。

Dセグメントでスポーツと言えばBMW3シリーズの名前がまず挙がるわけで、レクサスISは世界各国で新しい3シリーズと激しい競争を展開して行くことになると予想される。そう考えると、ISがワールドプレミアの場所を新型3シリーズと同じジュネーブとしたのも偶然とは考えにくい。

さて、ISのスポーツ性はプロポーションにも表れている。全長4575×全幅1795×全高1425mmのスリーサイズは新型3シリーズとほぼ近似値。フロントのオーバーハングが極端に短いプロポーションも両車に共通する事柄だ。狙いが同じだとディメンジョンやフォルムも大体同じところに収斂されていく、というわけなのだろう。

ただし、見た目の迫力は3シリーズよりもISの方が強烈だと僕は思った。ボディの絞り込みが強く、最大225/40R18というサイズのタイヤを包み込むフェンダーフレアも明確なISのスタイリングは、独特の凝縮感があっていかにも「走りそう」。しかもアルテッツァに感じられた子供っぽさも完全に払拭されている。BMWと較べて「どう」ということではなく、IS単体として魅力的な佇まいで、これは日本のスポーツセダン好きお父さんにも強くアピールしそうだ。

インテリアはどうか。ロングノーズのプロポーションなのでキャビン空間をまず心配したのだが、近年のクルマとしては珍しくダッシュボードが短く、Aピラーも比較的立った形状として室内長を稼いでいる。そのためリアシートの足元スペースも大人2人の実用に十分な余裕がある。ベルトラインが高いためやや包まれ感は強いものの、広さ自体に不満を感じることはないだろう。

コクピットはステアリングの中にメーターナセルがきっちりと納まり、スイッチ類の操作系もよく整理された機能優先の空間だ。GSの金属パネルのメーターのような凝った演出はないものの、樹脂の質感やパーティングラインの詰まり具合なども堂に入ったもので高級感もある。

トランスミッションはおそらくアイシンAW製の6速ATで、操作はゲート式のシフトレバーで行なうが、ISはこれに加えてステアリングコラムから生えたパドルでのマニュアル操作もできる。これもスポーツセダンらしい部分。ちなみに操作は左パドルを引いてダウン、右パドルでアップだ。

この他の装備としては、VDIM(ビークル・ダイナミック・インテグレーテッド・マネージメント=統合型走行安定システム)やプリクラッシュセーフティシステム、インテリジェントAFS(アダプティブ・フロントライティング・システム)などの導入が伝えられているが、仕様による展開など細かい部分は正式発表を待つしかない。ただ、GSのようにVGRS(バリアブル・ギア・レシオ・ステアリング)を使ったカウンターステア制御は、運転をより積極的に楽しませたいとするスポーツセダンの考え方から、ISには採用されていないそうだ。

以上が、8月に登場するレクサスISの、現時点でわかる内容のすべて。スポーツセダンの真価は走らせてみるまでわからないが、GSの欧州での走りと、盛り込まれたメカニズムを見る限り、かなり期待していいと思う。

画像: 2005年に登場したレクサスIS。日本市場では初代となるレクサスISだが、北米市場ではこれが2代目。北米市場の初代ISは、日本市場ではトヨタ・アルテッツァとして登場していた。

2005年に登場したレクサスIS。日本市場では初代となるレクサスISだが、北米市場ではこれが2代目。北米市場の初代ISは、日本市場ではトヨタ・アルテッツァとして登場していた。

画像: シャープネスとラウンドというレクサスの手法はGSと同じだが、ISの方がコクピットが全体にタイトでスポーツ度が高い。

シャープネスとラウンドというレクサスの手法はGSと同じだが、ISの方がコクピットが全体にタイトでスポーツ度が高い。

商品とともにおもてなしの準備が整いつつある

ところで、レクサスにはもうひとつのニュースがある。国内のレクサスチャンネルの販売とサービスに携わるスタッフの研修施設として富士スピードウェイ内に建設された「富士レクサスカレッジ」だ。

延べ床面積3500平米という建屋は、現在各地に建設中のレクサスディーラーとほぼ同じクオリティの内装で仕立てられており、180名(将来のレクサスの店舗数=全ゼネラルマネージャーの数)が一堂に会せる研修室や、14台を同時に用いて受講できるサービスピットなど設備も非常に充実していた。

しかし何よりも驚かされるのは、その研修方針だ。ゼネラルマネージャーは一流ホテルや百貨店での研修を経て顧客に対するホスピタリティを学んでいるというし、レクサスの思想や価値をスタッフすべてが共有できるようにと、セールスコンサルタントやテクニカルスタッフ(レクサス流の呼称)も全員がこのカレッジで研修を受ける。

その内容もチーフエンジニアやデザイナーを講師とした座学、スピードウェイの敷地にあることを活用した体験走行など非常に充実しているという。

新たなブランドを作り上げることがどれだけ大変か、北米での経験を経てトヨタは十分理解している。それに対応するための「人」と「商品」も着々と揃いつつある。いよいよ8月が楽しみになってきた。(文:石川芳雄/Motor Magazine 2005年6月号より)

画像: 商品とともにおもてなしの準備が整いつつある

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レクサス IS 350 主要諸元

●全長×全幅×全高:4575×1795×1425mm
●ホイールベース:2730mm
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3.5L
●最高出力:300ps以上
●最大トルク:373Nm(38kgm)以上
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR(4WDも設定)
(正式発表前データ)

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