BEV(電気自動車)のシェアが50%超を占めるというノルウェーで開催された「マツダテックフォーラム2019」。その試乗の印象をお伝えしたい。(Motor Magazine 2019年11月号より)

マツダらしさが際立つEV試作車

マツダが提唱する人間中心の思想「人馬一体」という哲学を具現化するのに最適なのは、実はEVでは?筆者が常々抱いてきた思いは、やはり正解だったようだ。

ノルウェーの首都、オスロで試乗が実現したマツダのEV試作車「e-TPV」(技術試作車両の英語略)の走りは、ある意味で内燃エンジン車以上にマツダらしさが際立っていたのである。フロントに積まれて前輪を駆動する電気モーターの瞬間大トルクをきれいに受け止めて、発進は力強く、かつジェントル。加速時は、あえて合成音をプラスすることで加速感、速度感などの車両挙動を掴みやすくしている。

アクセルペダルを戻すと軽い減速Gが出るが、この繋がりは自然だから一定速度の維持も楽で、ギクシャクすることはない。いわゆるワンペダルドライビングは志向されておらず、ある程度以上の減速にはブレーキペダルを踏む。減速時の、身体に前方向のGがかかった状態では、戻すより踏み込む方向の動きの方が自然にできるからだ。

画像: 試乗車の外観はカモフラージュされたCX-30だが、そのシャシはBEV専用デザインのものが採用されたe-TPV(Technology Prove-out Vehicle/技術試作車両)。数字は識別用。

試乗車の外観はカモフラージュされたCX-30だが、そのシャシはBEV専用デザインのものが採用されたe-TPV(Technology Prove-out Vehicle/技術試作車両)。数字は識別用。

発電用ロータリーエンジン搭載も可能

マツダ得意のGVC(Gベクタリングコントロール)は、電気モーターの活用で、より緻密な制御が可能になった。とくに内燃エンジンと違って、アクセルペダルオフ時でも加減速両方向の制御を行うことができるのが大きい。

これらの働きで生まれたのが、加速も減速もコーナリングさえもシームレスな走りだ。走りの一体感、乗員への優しさはいま、マツダが目指している理想、そのものというわけである。

リチウムイオンバッテリーの生産、廃棄などまで考慮し、ライフサイクルでCO2排出量低減を実現するべく導き出したバッテリー容量は35.5kWh。航続距離は200km近辺となるだろうが、実は奥の手として小型化された電気モーターの隣にはこれまたコンパクトなロータリーエンジンが搭載でき、レンジエクステンダー付き、PHEV、シリーズハイブリッドにまで展開できる。

ハードウエア面でも、まさにマツダにしかできない電動化が実現できるというわけだ。期待度大のマツダのEVは、2020年に市販予定。その時には専用デザインが与えられるということである。(文:島下泰久)

画像: フォーラム会場に展示されたBEV車用シャシ(右がフロント側)。駆動用バッテリーは後輪前方の下側に搭載。

フォーラム会場に展示されたBEV車用シャシ(右がフロント側)。駆動用バッテリーは後輪前方の下側に搭載。

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