Cセグメントのスポーティなハッチバックとして人気を集めていたアルファ147が、2005年(欧州では2004年)にフェイスリフトを行なっている。フロントグリル、ヘッドライト、テールライトのデザインが一新され、精悍な「ブレラ顔」となって登場、それとともに細部の改良、精度の向上、プレミアム化が進められている。果たしてこのフェイスリフトは成功となったのだろうか。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2005年7月号より)

改良セレスピードとコンフォートサスで走りはさらに進化

156シリーズとともにアルファロメオブランド復活の原動力となった147シリーズ。2000年にデビューして4年で36万台を全世界で販売した、アルファにとってはドル箱とも言えるモデルだ。

そんな147シリーズがマイナーチェンジしたのは2004年秋のこと。その日本仕様が2005年春、ようやく上陸を果たした。

マイナーチェンジのポイントを簡単に整理しておこう。まさにフェイスリフトというべき内外装のデザイン変更がまずひとつ。見た目に明かなように、横長でつり上がったヘッドライトを採用し、低く長くみえるノーズデザインと相まって、マスクのイメージはかなり獰猛な感じになった。

リアセクションもコンビランプが大型になり、よりシャープなデザインに。メッキのガーニッシュを装備するなどは、プレミアム化が進む欧州Cセグメントを象徴するが、個人的には付け焼き刃な感じが否めないと思う。

インテリアに関しては、全体の雰囲気はさほど変わらない。メーターパネルが、クロノウォッチのようなデザインに変更されたほか、最新の156と同様にアルファテックスと呼ばれるスェード調表皮を標準で採用したことがポイント。

パワートレーン系では、本国仕様こそ新型のディーゼルターボを搭載したのがニュースだったが、日本仕様に大きな変更点はなし。当初導入されるのは1.6Lと2Lのツインスパークだ。

え? JTSじゃなくてまだツインスパークなの? という熱心なアルファファンもおられるだろう。本国のエンジニアによれば、JTS搭載も考えたが156ならいざ知らず、「ホットハッチのイメージが強い147にはツインスパークの活発なエンジンフィールが必要」という結論に落ち着いたらしい。156後継の159から使われる次世代直4ユニットではツインスパークで「ユーロ4」もクリアするというから、156のマイチェンのタイミングで直噴ストイキJTSを採用したのは、いったい何のためだったのか。156にだってツインスパークが似合うと思うのは私だけであるまい。

閑話休題。エンジンそのものには大きな変更点はないものの、2ペダル式セミオートマのセレスピードには若干の進化がみられた。また、コンフォートサスペンションと呼ばれる足回りを採用したことも大きなニュース。前ダブルウイッシュボーン式、後ストラット式という形式そのものは従来モデルを踏襲するが、ダンパーやジオメトリーなどを改良し、軽量化や仕様変更を数多く施している。

残念なニュースがひとつ。2004年秋ナポリで開催された国際試乗会で、コンフォートサスと並んで注目された新たなロボタイズドミッション「イージースピード」は、どうやら開発中断の憂き目にあっているらしい。イージースピードそのもののデキもさることながら、トップ交代劇やブランドイメージ再構築といった政治的・戦略的な要因もあるようなのだ。

画像: フロントと同様のイメージで大型化されたテールランプ、リアゲート下端のメッキガーニッシュが新型147の特徴だ。足下はエレガントな15本のフィンタイプのアルミホイールに205/55R16という組み合わせ。

フロントと同様のイメージで大型化されたテールランプ、リアゲート下端のメッキガーニッシュが新型147の特徴だ。足下はエレガントな15本のフィンタイプのアルミホイールに205/55R16という組み合わせ。

新しい147の走りはすべてにコンフォート

今のところ、日本に導入されているのは、前述の2エンジンに対して、5ドアボディのみ。右ハンドル+5MTの「1.6TS」、左ハンドル+5MTと右ハンドル+セレスピードの「2.0TS」という3モデルがとりあえず導入された。このうち2Lモデルにはコンフォートサスペンションが標準で採用される。また、今後、3ドアモデルやTI仕様が次々に導入されるだろう。ハイパフォーマンス仕様のGTAは、従来型を継続生産する。

2.0ツインスパークのセレスピードはアルファテックスとオプションのレザー仕立ての両方に試乗したが、雰囲気、質感ともにアルファテックスの方に軍配が上がる。どうしてもレザーじゃなきゃという人はともかく、そうでない人はまずアルファテックスを実感されたい。特にドアトリムあたりの質感は、絶対にアルファテックスの方が勝っていると思う。

見馴れないメーターパネルだが、ダッシュボードの素材を含め、従来よりも質感は向上した。けれども、やはり古さは隠しきれない。最新の欧州Cセグメント車に比べれば、見劣りしてしまうのは仕方ないところか。

まずはCITYモードで走り出す。これは所謂オートマチックモードで、従来はそのシフトショックの大きさに辟易し、いわば使えない、というか使わないモードであった。今回のマイナーチェンジでは、そのCITYモードにおける変速ロジックに改良が加えられた。新型のコントロールユニットが採用され、モードごとにより見合った制御を施すよう進化した。

その効果ははっきり体感できる。オートマチック走行において、つんのめるようなショックが、完全ではないものの大幅に抑えられた。しかも、モードのデフォルトが効くようになった。つまり、CITYモードで走っている最中、パドルまたはシフトノブで変速をしてもその後はまたCITYモードに戻るのだ。CITYモードが積極的に使えるものになり、断然、この方がいい。

コンフォートサスペンションはどうか。街中での心地ははっきりとマイルドになった。決してヤワじゃなく、路面からの突き上げを小気味よくいなす感じだ。従来型のように、尖った印象は薄らいでいる。

高速巡航時のスタビリティも明らかに増している。ここでも、体に直接響くような厳しい入力は激減した。ツアラーとしても使えるクルマになったと言えるだろう。

しかしだからといって、アルファらしい走りを諦めたわけじゃない。ダイレクト&クイックなハンドリングというイメージこそ薄らいだが、コーナリング時には前輪がきっちり程良くロールし、ノーズもさほど遅れることなく向きを変えてくれる。以前よりコントロールはしやすくなった。アルファロメオらしく、楽しむことは十分にできるのだ。(文:西川 淳/Motor Magazine 2005年7月号より)

画像: 刻みが細かくなったメーターは平面的なパネル構成になる。そしてマルチファンクション機能は従来どおり中央に配される。インテリアの質感は確実にアップしている。

刻みが細かくなったメーターは平面的なパネル構成になる。そしてマルチファンクション機能は従来どおり中央に配される。インテリアの質感は確実にアップしている。

ヒットの法則のバックナンバー

アルファロメオ アルファ147 2.0ツインスパーク セレスピード(2005年)主要諸元

●全長×全幅×全高:4225×1730×1450mm
●ホイールベース:2545m
●車両重量:1330kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1969cc
●最高出力:150ps/6300rpm
●最大トルク:181Nm/3800rpm
●トランスミッション:5速AMT
●駆動方式:FF
●車両価格:313万9500円(2005年当時)

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