日産 パルサーEXAターボ(HN12型・1983年5月発売)
日産初のFF(前輪駆動)車、チェリーが発売されたのが1970年(昭和45年)10月。そのチェリーは2代続いて、1978年にパルサーへと代替わりする。チェリーもパルサーも、ハッチバックスタイルのコンパクトカーであった。
1982年(昭和57年)4月、パルサーは最初のフルモデルチェンジを行う。そのときに追加登場したのが、クーペモデルのEXA(エクサ)だった。当時流行し始めていたリトラクタブルヘッドランプを採用し、風を友とする超空力フォルムのウエッジシェイプボディは、一見ミッドシップスポーツカーのようにも見え、当時の国産車としては斬新なスタイルで注目を浴びる。また、このクラスの国産車としては初めてドアミラーを採用している。
デビュー当初のEXAのエンジンは自然吸気のE15型のみで、EGIを装着した高性能版のE15Eでも最高出力は95psだった。それでも800kg台の軽量ボディによって軽快な走りを楽しむことができた。当時、富士スピードウェイで開催されていたフレッシュマンレースでは、EXAのワンメイククラスもあったほどで、このクルマでモータースポーツを始めたという人も少なくないはずだ。
翌1983年5月、EXAに待望のターボモデルが追加される。E15Eにターボを装着したE15ET型エンジンは、従来の自然吸気版を20psも上回る115psの最高出力と、2L自然吸気エンジン並みの17.0kgmという最大トルクを3200rpmから発生した。モーターマガジン誌の実測テストでは、3速AT車ながら最高速度は176.47km/h、0→400m加速は17.82秒というデータをマークして、ターボの威力をまざまざと見せつけている。
E15ET型エンジンは低速トルクカムを組み合わせて、ターボは800rpmという低回転域から過給を開始することから、日産はこれを「超広域ターボ」と呼んでいる。高出力化に合わせて、サスペンションもスプリングやショックアブソーバーのセッティングを変更し、フロントスタビライザーを装着、リアトレーリングアームは取り付けスパンを拡大するなど、細部にわたるチューニングが行われている。
さらにターボ専用装備として、8インチのブースター付き4輪ディスクブレーキと175/70SR13タイヤ、ブースト計を配したメーターパネル、専用のバケットタイプスポーツシートなど、ドライバーを高揚させる魅力的なアイテムを数多く備えていた。
日産 パルサーEXAターボ(1983年)主要諸元
●全長×全幅×全高:4125×1620×1355mm
●ホイールベース:2415mm
●重量:885kg
●エンジン型式・種類:E15ET型・直4 SOHCターボ
●排気量:1487cc
●最高出力:115ps/5600rpm
●最大トルク:17.0kgm/3200rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:175/70HR13
●価格:157万3000円