東京モーターショー2019は若者世代も含めて盛況だった
2019年10月24日から12日間に渡って開催された第46回東京モーターショー2019が、11月4日に閉幕した。従来のモーターショーであれば、コンセプトカーやプロトタイプといった最先端車両、市販予定車両の展示、研究中の周辺技術のデモ、新発売のカー用品の展示などのコンテンツを中心として、選りすぐりの美人コンパニオンたちもまたクルマ好き男性諸氏の来場意欲にもなっていた。
しかし、今回の東京モーターショーは趣を異にするものだった。とはいえ、従来どおり自動車と周辺技術の展示が中心であり、会場に彩りを与える美人コンパニオンたちの存在も健在だ。これに加えて新たな試みとして、キッザニアによる子どもたちの自動車産業体験や、「MUSIC FES '19」、吉本興業による「よしもとステージ」などを催したのだ。こうした改革もあって総来場者数は130万人をオーバー、6年ぶりに100万人の大台を大きく超えて盛況であった。
東京モーターショー2019の来場者130万人を見ると若者の存在が目立った。最新の自動車、レースマシン、美人コンパニオン、自動車関連のミニイベントなど興味の対象はそれぞれであろうが、いずれも自動車に関連する。若者がクルマから興味を失ったとも言い切れないような気もする。
「若者のクルマ離れ」は、自動車運転免許の取得率に関係するのか
クルマへの興味関心を失ったわけではないとすると、「若者のクルマ離れ」とは運転免許の未所有を意味するのだろうか? ここで免許取得率を調べてみよう。
警察庁が2019年3月27日に発表した「運転免許統計」を使用し、年代別に普通自動車免許の取得状況を比較してみた。これによると、10代の所有者数は約74万人と少ないが、実質2年しかないのでこれは仕方ない。次の20代の取得者数は998万人となっている。総務省の統計によると、2019年10月1日時点での日本の20代の人口が1186万人なので、運転免許取得率は84.2%となる。同じように30代以降と比較してみよう。
年代:人口/運転免許取得者数/運転免許取得率
20代:1186万人/998万人/84.2%
30代:1417万人/1339万人/94.5%
40代:1843万人/1731万人/93.9%
50代:1578万人/1432万人/90.7%
60代:1684万人/1442万人/85.6%
70代:1510万人/948万人/62.8%
20代の運転免許取得率を見ると、30〜50歳代と比較しておよそ5〜10ポイント低い。また、母数となる20代の人口が少ないので、免許取得者数は300万人から最大で700万人も少ないことになる。さらに、現在の30代が20代だった10年前、2009年時点での運転免許取得率/取得者数と比較してみると、2.5ポイント減/237万人減と「若者のクルマ離れ」の一端が見て取れる。
年代:運転免許取得者数
2019年の20代:1186万人/998万人/84.2%
2009年の20代:1425万人/1235万人/86.7%
「若者のクルマ離れ」で若者は自動車を保有しなくなったのか
日本の人口で40代が最も多く、上記比較表からもわかるとおり運転免許証所持者は1731万人にものぼる。一方で20代の運転免許所持者は998万人で、40代と比較して約733万人少ないことになる。自動車業界にとって733万人もの新規ユーザー候補が減少したのは痛いところだ。
では998万人の20代運転免許ホルダーが、自動車をどの程度保有しているのか気になるところだ。そこで内閣府発表の「主要耐久消費財等の普及・保有状況」(2019年3月調査)を調べてみた。同調査は世帯状況と世帯主の年代別に、耐久消費財の普及・保有状況を調査しており、耐久消費財には自動車も含まれる。
年代別の自動車保有状況を調べてみると、29歳以下の自動車保有率は57.5%であり、ほかの世代と比較(下記)すると20ポイント程度低いことになる。
年代:自動車保有率
29歳以下:57.5%
30代:77.6%
40代:79.8%
50代:78.0%
60代:75.4%
では、自動車保有台数で比較してみるとどうだろうか。年代別運転免許所持者数に自動車保有率を乗じれば、実数に近い自動車保有台数が年代別にわかるはずだ。20代は運転免許所有者998万人、総世帯の自動車保有率57.5%で自動車保有台数は約574万台ということになる。同様に30代以降と比較してみよう。
年代:自動車保有台数(概算)
29歳以下:574万台
30代:1039万台
40代:1381万台
50代:1117万台
60代:1087万台
各年代で自動車保有台数を比較すると20代は約465万台から最大807万台少ない。運転免許所持率も含めて比較して、ここまでの差が出ると「若者のクルマ離れ」と呼ばれても仕方がないように見える。
自動車産業界にとって死活問題といえるその要因は様々あるが、声高に叫ばれているのは所得の低下、租税公課の上昇、あおり運転や自転車の飛び出しなどの危険な交通実態、そして若者の人口減少であろう。ユーザーがいなければ、どんなに良い商品でも絶対に売れない。「若者のクルマ離れ」は国を挙げて改善に取り組む問題であり、企業レベルでどうにかできる問題ではないだろう。(文:猪俣義久)
※人数・台数を表すすべての数値は、下4桁を四捨五入して掲載。パーセンテージを表す数値は小数点第2位以下を四捨五入して掲載。