2019年12月1日から、改正道路交通法が施行されるが今回の改正の重要ポイントは2点だ。1点目は「ながら運転」が厳しく取締られ、行政処分・刑事罰とも強化される。2点目はレベル3以上の自動運転を道路交通法で初めて規定する点で、法律上では自動運転システムによる運転が容認された形になる。ここでは「ながら運転」に関連する改正道路交通法を解説していこう。

運転中の携帯電話使用/所持は2019年12月の道路交通法改正で厳罰化

運転中の携帯電話利用は、非常に危険な行為であることは言うまでもない。警察庁によれば、運転中の携帯電話操作が原因で発生した事故件数は、平成25年(2013年)に2038件だったが、平成30年(2018年)には2790件へと増加している。

そして、運転中の携帯電話使用の取締り件数は平成30年で84万件と、もの凄い数字になっている。平成30年の全体の取締り件数が600万件なので、実に14%に及ぶことになる。いくら歩行者や軽車両といった交通弱者が交通ルールを守っても、自動車のドライバーがよそ見運転をしていては事故は防止できない。1980年代の日本の道路交通の混雑ぶりは道路ウォーズと評されたが、現代の状況は道路クライシスとでも言えよう。このような現実が、今回の道路交通法改正の背景にあるわけだ。

「ながら運転」の対象となるのは、携帯電話や無線装置など通話のために手に持たなければならない無線通話装置と車内に設置してある画像表示モニターの操作である。無線通話装置は運転中に使用するのはもちろん、手に持つだけで取締りの対象となる。ただし、傷病者の救護や公共の安全のためにやむを得ず使用する場合は除かれる。

画像表示モニターについては、常設でも持ち込みでも画像を映す機器すべてが対象となる。ビルトイン式カーナビだけでなく、ポータブルカーナビや各種タブレットももちろん処罰対象だ。そして、それらを運転中に「画面を注視」したり「機器を手に取る」と処罰の対象になるわけだ。

画像: 2019年12月に適用される道路交通法の改正により、運転中の携帯電話による通話はもちろん、機器を手に持っているだけでも取り締まりの対象となる。

2019年12月に適用される道路交通法の改正により、運転中の携帯電話による通話はもちろん、機器を手に持っているだけでも取り締まりの対象となる。

2019年12月の道路交通法改正で「ながら運転」は懲役刑の可能性も

そしてこれらの「ながら運転」行為は、非常に重大な人命にかかわる事故を発生させるとして、2019年12月1日から厳罰化されることになったわけだ。そして、「ながら運転」が事故の原因になった場合とそうでない場合に刑罰の重さが変わる。

道路交通法で「携帯電話使用等(交通の危険)」にあたる、「ながら運転」が原因となる事故を起こした場合、違反点数は従来の2点から6点になり一発で免許停止、酒気帯び運転(0.25mg未満)が加わると16点に引き上げられ一発で免許取消しとなる(いずれも前歴なしの場合)。ただし、この場合、反則金は適用外で0円となる。

道路交通法改正後の「ながら運転」は非反則行為にあたり、従来(大型1万2000円/普通9000円/二輪7000円/小型特殊6000円)の反則金は適用されない。そして、いきなり罰則適用が確定する。その罰則は、従来「3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金」であったものが、改正後「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」となるのだ。

では次に、道路交通法で「携帯電話使用等(保持)」にあたる、「ながら運転」でも事故を起こしていない場合だが、違反点数は従来の1点から3点へ、酒気帯び(0.25mg未満)も加わると15点に引き上げられる。15点の違反点数は、すぐに免許取消しとなる。

反則金は従来が大型7000円/普通と二輪6000円/小型特殊5000円であったのに対し、改正後は大型2万5000円/普通1万8000円/二輪1万5000円/小型特殊1万2000円と大幅に引き上げられる。従来の罰則「5万円以下の罰金」は、改正後に「6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金」に強化される。

懲役刑は前科になる。会社を解雇される理由になるだけでなく、その後の就職や海外渡航にも不利になり、履歴書の賞罰として書かなければならなくなる。これから忘年会シーズンになるが、飲酒運転はもちろんのこと、運転中の携帯電話使用もしてはならないということを肝に銘じておこう。(文:猪俣義久)

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