日産 セドリック(30型):昭和35年(1960年)4月発売
![画像: 全長は4410mm、ホイールベースは2530mmと、いまのクルマと比べるとコンパクトなサイズだった。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2019/12/02/093c101f767420653298b396b3ed3adc1d993161_xlarge.jpg)
全長は4410mm、ホイールベースは2530mmと、いまのクルマと比べるとコンパクトなサイズだった。
日産は戦後大きく遅れをとった乗用車生産技術を習得するため1952年(昭和27年)からオースチンA40をノックダウン生産。1956年にはA50の完全国産化を実現したが、1960年3月に英BMC社との契約が終了するため、日産独自の1.5Lクラス乗用車開発が急務となっていた。
戦後初の“ニッサン”ブランド乗用車の開発に際しては、
1)斬新で豪華なスタイル、
2)小型車規格内で6人乗りとして十分なスペース、
3)乗り心地/高速安定性/操縦性/制動性能にはとくに注意を払い大型車の感じを与える、
という重点目標が置かれたという。
1960年(昭和35年)4月に発売されたセドリックは、Aピラーを前傾させたパノラミック(フロント)ウインドーやメッキパーツの多用などアメリカ車の影響を強く受けたスタイリングに、ワイド感を強調する縦目丸4灯という独自の個性をプラス。前後ベンチシートの室内も3人並んで座れる幅を持っており、前:ダブルウイッシュボーン/コイル、後:3枚リーフ/リジッドサスペンションはそれぞれ280mm/180mmのストロークを確保してソフトな乗り心地を実現していた。
![画像: シートは前後ともベンチタイプで乗車定員は6名。ミッションはコラム式の4速MTのみだった。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2019/12/02/92e3b62437c37494515f198f85110f373b6ca764_xlarge.jpg)
シートは前後ともベンチタイプで乗車定員は6名。ミッションはコラム式の4速MTのみだった。
機構面では、ユニットコンストラクション(モノコックボディ)で車重をデラックスで1195kgに収めたのが画期的だった。構造はサイドシルを主要強度部材とするA50の発展型だが、国産1.5Lクラスでは初採用だったし、ボディ剛性もA50より曲げ1.14倍、捻り1.31倍になったと公称している。
エンジンは1488ccの直4 OHVで圧縮比8.0と2バレルキャブにより当時としては高回転だった5000rpmで71psを発生した。トランスミッションは唯一A50から引き継いだ4速MTで、2速以上に付くワーナー製のボークリング(シンクロナイザーリング)により、確実で気持ちよいシフトを実現していた。
![画像: 写真のエンジンは1961年4月に追加登場した1.9LのH型。パワースペックは88ps/15.6kgm。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2019/12/02/5cc414947e2b9130203c9b5b080b65cf6b76ceb2_xlarge.jpg)
写真のエンジンは1961年4月に追加登場した1.9LのH型。パワースペックは88ps/15.6kgm。
動力性能は16.8kg/psの馬力荷重を活かし、0→80km/h加速は13.7秒を計測(モーターマガジン誌による車載メーターとストップウオッチによる計測。雨天の4名乗車)。ハンドリングも、巧みなサスペンションセッティングと6.40-14タイヤにより、当時としては異例ともいえる弱アンダーステアを維持した。操舵系はギア比17.3のウオーム&ローラーと直径430mmのコーン型ステアリングを採用。ロックtoロック3.5回転と操作が忙しいとはいえ非常に素直なものだった。ブレーキは、セルフサーボ機能を持ち軽い踏力で強力な効きが得られる前:ユニサーボ、後:デュオサーボが採用された。フェザータッチのペダルフィールは女性に好評だった一方、慣れないうちは効きすぎるという人も多く、評価は二分している。
装備の充実もセドリックの美点のひとつで、デラックスにはヒーター、ラジオ、時計などが標準装備される。とくにラジオはアンテナ/バッテリー/スピーカーを内蔵していて、車載時には12V電源に接続して自動車ラジオとなり、専用キーで取り外せば車外に持ち出せるポータブルラジオとなるアイディアで注目された。またオプションでヒーター/クーラー両用のダッシュタイプエアコンも装着可能で、エンジンブロックにあらかじめコンプレッサー取り付け用の穴が設けられるなど、グレードアップを見越した準備も怠りない。
![画像: 1962年10月、2度目のマイナーチェンジでヘッドランプは横型4灯式に変更された。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2019/12/02/d5673b4f18c899b15d543059ac40f926e0327b94_xlarge.jpg)
1962年10月、2度目のマイナーチェンジでヘッドランプは横型4灯式に変更された。
日産 セドリック デラックス(1960年)主要諸元
●全長×全幅×全高:4410×1680×1520mm
●ホイールベース:2530mm
●重量:1195kg
●エンジン型式・種類:G型・直4 OHV
●排気量:1488cc
●最高出力:71ps/5000rpm
●最大トルク:11.5kgm/3200rpm
●トランスミッション:4速コラムMT
●タイヤサイズ:6.40-14 4P
●価格:101万5000円