デビュー早々ヒット作となったE90型3シリーズに、2005年夏、ワゴンボディのツーリングが加わっている。日本上陸が待ち遠しいモデルとして、まずは欧州からの試乗第一報はどんなものだったのか、振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2005年9月号より)

キーワードは「大型化とクロスオーバー」

BMWのボリュームモデルに対するマーケティング戦略は、絵に描いたように巧妙なスケジュールで進んでゆく。たとえば、まず最初に4ドアセダンをリリースし、続いてワゴン、そしてクーペに続いてカブリオレ、さらに熟成を迎えた頃、最後にトップスポーツバージョンが登場するという訳である。この間、およそ3年はベース車両も含め必ずメディアに登場する。常に話題があり、また販売店にも必ず「ニューモデル」が存在するというシナリオである。

3シリーズについても、今年春の4ドアセダンのリリースに次いで、今回は計画どおりワゴンバージョンのツーリングが登場した。

日本ではミニバンの勢いに押され気味のワゴンであるが、ヨーロッパ、特にドイツでは安定した成長を続けており、3シリーズに関して言えば1999年にわずか8%に過ぎなかったワゴンのシェアが、2004年には34%へと増加している。ただし、世界的に見ると7%に留まっているのではあるが……。

最近のニューモデルにおけるキーワードは「大型化とクロスオーバー」、この3シリーズツーリングも、その宿題はきちんと済ませている。

まず、サイズは、ベースになったセダンと同様で、全長4520mm、全幅1817mm、全高1418mm、そしてホイールベースが2760mm。これは旧ツーリングを大きく上回る。またミニバンに負けないように使い勝手も向上している。リアコンパートメントは大人ふたりがゆっくりと座れ、長距離ツーリングでも不満はでないだろう。同時にカーゴルームは通常の状態で460L、リアシートを畳めば1385Lの容量をもつ。

さらに、この荷室には色々な工夫が施されている。まず、通常のバゲッジネットはもちろん、ホイールハウス部分には幅広のラバーベルトがあって、ペットボトル程度のものならば固定しておくことができる。またフロアの下、かつてスペアタイヤがあったことろには小物入れが用意されている。

さらにワゴンボディの場合、重い荷物の出し入れで困るのは敷居の高さだが、このツーリングは59cmと比較的低い。これで重いスーツケースなどでもラクに押し込める。

しかしカバンならばともかく、固い荷物を無理に扱うと美しいカラードバンパーに傷が付く恐れがある。そこでBMWは今度のツーリングではフロアボードをリバーシブルにして、その裏側に幅広いラバープロテクターを貼り付けた。バルキーな荷物を搭載する場合にはフロアを裏返しにして、このラバーをバンパー上に広げ、擦り傷を防ぐわけだ。

画像: E90型3シリーズに加わった「ツーリング」。試乗車は325iツーリング。

E90型3シリーズに加わった「ツーリング」。試乗車は325iツーリング。

ワゴンと言えども、ドライビングが楽しい

さて、今回の試乗会はヨーロッパ向けのもので、ミュンヘン空港には2.5Lエンジンを搭載した325iツーリングと、2Lターボディーゼルを搭載した320dツーリングの2車種だけが用意されていた。しかもすべて標準の6速マニュアルトランスミッション仕様である。

そこでレポーターは325iツーリングを選択することにする。搭載されている2.5L直列6気筒エンジンは、すでに日本へも輸出されている330iに組まれている軽量ハイテクエンジンの縮小版である。

つまりクランクケースやベッドプレート、さらにシリンダーヘッドまで超軽量素材のマグネシウムとアルミの合金で作られている。この結果、従来の鋳鉄製エンジンよりも大幅な軽量化に成功している。

また、スロットルバタフライを省略し、特にパーシャル時の燃費を向上させるバルブトロニック、カムシャフトを変位させることで低中回転域のトルク発生を改良するVANOSも当然装備されている。これらはBMWの特徴的な技術であり、さらに細かなことだが、ウォーターポンプは電気モーターで駆動されるなどの燃費対策も行われている。総排気量は2497cc、3Lエンジンのボア/ストロークをそれぞれ3mm/9.2mmカットしたものである。

エクステリアデザインは最近のライフスタイルワゴンの名に恥じないようなスタイリッシュなもので、特にルーフ後半部分からリアエンドに掛けての造形は、妙に絞り込まれた4ドアセダンよりもまとまりがよく見える。

インテリアはセダンとまったく同じ、スタートはキーユニットをスロットに押し込んで、スターターボタンを押す。すると6本のシリンダーが一斉に活動を開始、すぐさま安定したアイドリングに入る。

走り出してすぐにこのツーリングにはドイツではオプションのアクティブステアリングが装備されていることに気付く。通常のパワーステアリングに比べると、切り始めにやや不自然な抵抗を感じるのである。しかし、それから先、特に120km/h付近でのレーンチェンジなどに違和感はなく、5シリーズが登場した時と比べると格段に進歩している。

進歩と言えばランフラットタイヤによる乗り心地も日進月歩で進んでいる。もちろんまだ細かな不整のある路面に遭遇するとゴロゴロした細かなショックとノイズがパッセンジャーに届くが、全体的にハーシュネスのレベルは改良されている。少なくとも路面状況がスムーズなドイツではもう文句は出ないだろう。それ以上に少なくなったとはいえパンク修理の煩わしさに比べれば誰もがランフラットを選ぶだろう。

この日のテストはアウトバーンを50kmほど北上して、帰路は一般道路を戻ってくるというコース。まず前半部分ではハイスピードでの安定性が試される。ここで観察できたのはワゴンボディのエアロダイナミクス面でのリファインである。高速域でも風切り音はほとんど耳に入らなかった。また、ハイスピードで大型トラックを追い越したときに発生する乱流の影響もまったく心配することはなかった。

およそ50kgほど車両重量が増加したツーリングのボディにはセダンと同じベンチレーテッド・ディスクブレーキ(前:300×24mm、後:300×20mm)が採用されているが、何度かの高速からのハードブレーキにも十分に安定した効きを示してくれた。

最終セッションはバイエルン地方の典型的なカントリーロードだ。ワインディングに富んで、やや道幅は狭いが見通しが良いためにかなりのスピードで走れる。従来の3シリーズツーリングより25%剛性アップしたボディに組み込まれたダブルジョイント式ストラット・フロントサスペンションと、サブフレームでしっかりと位置決めされた5リンクリアアクスルは、軽快なハンドリングと素晴らしいロードホールディングを発揮する。ドライビングの楽しさに夢中になって、後を振り返らなければまさかワゴンとは思えないほどである。

もちろんこの3シリーズツーリングは、セダンと同様のアクティブ、そしてパッシブな安全装備が用意されている。中でもコーナリングの先を照射するアダプティブヘッドライト、またエマージェンシーブレーキを後続車両に知らせる2ステージブレーキフォースディスプレイなどは安全なドライブには大きな助けとなる。

新しい3シリーズツーリングは確かに旧型よりは大きくなり、また使いやすくはなった。けれども、絶対的な積載量を見ると決してワゴン界でのチャンピオンになったわけではない。このツーリングの良さはやはり軽快なフットワークを持ったライフスタイルマシンである点だ。

さらに、もしそのことを強調したいのならばぜひともオプションのパノラマルーフを選択すると良い。幅が745mm、長さが800mmの巨大なガラスサンルーフは前後にスライド可能で、リアシート上方にも快適な空間が生まれ、まるでカブリオレ気分でのツーリングが可能になる。(文:木村好宏/Motor Magazine 2005年9月号より)

画像: カーゴルームは同クラスのクルマと比べて圧倒的大きいわけではないが、ネットや収納法など工夫は多い。

カーゴルームは同クラスのクルマと比べて圧倒的大きいわけではないが、ネットや収納法など工夫は多い。

ヒットの法則のバックナンバー

BMW 325iツーリング(2005年)主要諸元

●全長×全幅×全高:4520×1817×1418mm
●ホイールベース:2760mm
●車両重量:1545kg
●エンジン:直6DOHC
●排気量:2497cc
●最高出力:218ps/6500rpm
●最大トルク:250Nm/2750-4250rpm
●トランスミッション:6速AT(6速MT)
●駆動方式:FR
●0→100km/h加速: 7.2秒
●最高速: 243km/h※欧州仕様

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