年々高まる国内市場における輸入車人気。その人気を支えるのが取り回しの良いサイズでキュートなデザインのコンパクトカーに他ならない。そして贅の極み尽くしたラグジュアリーモデルをはじめ、究極のスポーツ性能を追求したスパルタンモデルなど、日本車とは一味違う存在感が人気の理由だ。そんな人気の輸入車によく見られる“アルミホールの黒い汚れ”。日本車ではあまり見かけない、この特徴的な輸入車のアルミホイールの汚れの原因を探ってみた。

黒い汚れは大量に付着したブレーキダストによるもの

アルミホールに付着する黒い汚れをブレーキダストと呼ぶ。その正体はブレーキパッドの削りカスだ。現代のクルマの多くは四輪ディスクブレーキを採用している。ディスクブレーキの仕組みは、タイヤとともに回転するディスクローターを、ブレーキキャリパーに備えられたブレーキパッドがディスクローターを左右から挟み込むことでクルマを減速させる。このブレーキング時にディスクローターとブレーキパッドの間に激しい摩擦が発生し、互いに摩耗する。これが細かいチリとなって発生する。このチリがブレーキダストと呼ばれるもの。主成分はブレーキパッドに含まれる鉄粉で、これがタイヤやホイールに付着する。ブレーキダストはかなり高温のため、ホイールのクリア塗装を溶かして焼き付くことでホイールの黒汚れが発生するのだ。

国産車のブレーキパッドはロングライフを重視している

画像: 制動力を重視した輸入車のブレーキパッドは、国産車と比べてブレーキダストが発生しやすい。

制動力を重視した輸入車のブレーキパッドは、国産車と比べてブレーキダストが発生しやすい。

ディスクブレーキなら国産車にも採用されているが、国産車のホイールは輸入車のような黒い汚れは、ほとんど発生しない。国産車と輸入車のブレーキに違いはあるのかと問われると、これがあるのだ。それがブレーキパッドの志向性だ。

国産車のブレーキパッドは法定最高速が130km/hと低いため、輸入車のブレーキパッドに比べて制動能性が抑制されているが、国内では必要にして十分なレベルなのだ。これにより、ディスクローターとブレーキパッドの削りカスも出にくくなるのでブレーキダストも発生しにくい。制動性を抑制することでロングライフとなり、運転状況によるが一般的に4~5万kmくらいでの交換となる。

輸入車は制動性重視のブレーキパッドを採用

輸入車のディスクブレーキのブレーキパッドは、制動力が最優先される。それはすなわち、ブレーキローターとブレーキパッドが摩耗しやすいということであり、ブレーキダストも発生しやすい。とりわけ欧州車は、高い速度で走行できる道路環境が整っている。ドイツのアウトバーンでは速度無制限区間を設けているため、必然的に高性能なブレーキが必要になる。また欧州は自動車を移動ツールとして割り切る風潮があり、自動車の基本性能の「走る・曲がる・止まる」の追求に余念がない。そのため小型車からスポーツモデルまで、クラス相応以上の高性能なブレーキを備えている。よって輸入車のブレーキダスト問題は、ほとんどのモデルで発生する。

ブレーキダストを寄せ付けない3つの方法

画像: 輸入車特有のホイールの汚れは、ブレーキパッドを交換することで抑制することができる。

輸入車特有のホイールの汚れは、ブレーキパッドを交換することで抑制することができる。

ブレーキダストは輸入車に顕著に見られるが、国産車にも多少ながら発生する。そこでブレーキダストの対策方法を紹介しよう。その対策方法とは、「出さない・寄せ付けない・清掃する」の3点だ。

最初の対策は、ブレーキダストを出さないことだ。つまりブレーキパッド自体を交換してしまう方法だ。国内で輸入車を使用するのなら、欧州基準の制動力は宝の持ち腐れだ。そこで日本の道路状況を考慮して開発された輸入車用の車検対応ブレーキパッドへ交換するのもいいだろう。これによりロングライフとブレーキダストの低減が期待できる。

2番目の対策は、ブレーキダストをホイールに付着させない方法だ。それはホイールコーティング剤で抑制できる。カー用品量販店やホームセンター、ネット通販で購入できるので試してほしい。市販品で期待した効果が得られないときは、ホイールコーティングを業者にお願いするのもいいだろう。

3番目の対策は、ホイールに付着したブレーキダストを頻繁に洗い落す方法だ。ホイールに焼き付いたブレーキダストを長期間放置すると専用の溶解剤でないと洗浄できなくなる。こちらもカー用品量販店などで購入できるが、この手の製品は酸性が強く、直接皮膚に触れると火傷する可能性があるので、作業時にはゴム手袋が必須だ。また焼き付いたブレーキダストやその溶解剤により、ホイールのクリア塗装は多少なりとも傷んでしまうので、ホイール表面のメンテナンスも必ず行おう。(文:猪俣義久)

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