デザインはキープコンセプトでも新技術にもトライ
SUVという成り立ちがさながら普通のクルマのように平準化してくると、差別化としてこのようなクルマが生まれてくるのは自然な話なのだろう。メルセデス・ベンツGLEクーペのようなSUVスペシャリティのカテゴリーは、ゴリゴリの車内空間や走破性を求めてはいないけど、都会に溶け込みスポーティに走りたいというニーズに受け入れられ、W166系をベースとした初代GLEクーペも販売は好調だったという。
それを踏まえて登場した新型GLEクーペは、キープコンセプトのスタイリングである一方、技術的な面では新たなチャレンジを盛り込んでいる。そのサイズは相変わらず堂々としたものだ。全長4961mm、全幅2018mm、全高1720mmと、初代と比べれば全長がわずかに長くなった程度だが、「顔面力」の強さもあって、パッと見るとひとまわりは大きくなったような印象を受ける。
お察しのとおりベースとなるのは現行W167系のGLEクラスだが、ホイールベースは短縮。エンジニアによれば、ドライバビリティにクーペらしいアグレッシブなテイストを与えるうえで、骨格の見直しは必須だったという。
ちなみに居住空間や荷室容量はわずかだが、先代より向上した。 試乗会に用意されていたパワートレーンは、3L直6ディーゼルターボの「400d」と、2L直4ディーゼルターボに駆動モーターを組み合わせたPHEVの「350de」、そして3L直6ガソリンターボにISGと呼ばれる48Vスタータージェネレーターシステムを組み合わせたマイルドハイブリッドの「AMG53」の3種類。今後は4L V8ツインターボの最強バージョン「AMG63」も当然バリエーションに追加されることになるだろう。
これらのうち、日本導入が予定されているのは当面400dとAMG53の2つになる模様だ。なのだが、私は配車の関係で400dと350deの試乗となった。パワートレーンは全モデル9速AT&4マティックとなる。
ディーゼル+モーターのPHEVも用意される
まず試乗したのは400d。GLEクーペは21インチの巨大なタイヤを履いていながら乗り心地は上々で、ベースモデルのGLEで感じていた低速域でデコボコを正直に拾うような兆候はまったく窺えなかった。操舵の応答も正確な上にラグも小さく、結果として2mオーバーの全幅を車線内に入れておくことも苦にならない。
試乗したこの400dには、W177系の世代から採用されたまったく新しいサスペンションシステム「Eアクティブボディコントロール」が装着されていた。これは4輪のエアスプリングとは別にダンパー側の伸縮量も任意かつ瞬時に調整できるという優れモノもので、車高調整の自在性ばかりでなくピッチ&ロール、スクワット等の車両姿勢も四輪個別に制御できるというものだ。
これによって付加された機能としてアナウンスされたのは、車体の素早い上下動を繰り返して砂漠のスタックでトラクションを回復させ脱出するというデモンストレーションだが、今回初めてオンロードで乗ってみるとアンチロールやダイアゴナル方向のロールの制御にも効果的であることが体感できた。とくにコーナリングではさながら車体が二輪車のようにイン側に倒れているのではないかと錯覚させるほどのロールコントロールをみせてくれる。
好き嫌いは分かれそうだが、大柄で高重心な車体の向きを機敏に変えることができるという点でも、効果は大きかった。が、この凝りに凝った足まわりは高価格がゆえ、現状、残念ながら日本導入の予定はないという。
新技術の投入という点では350deのパワートレーンのシームレスぶりや十二分な力強さも印象深い。31kWhの大容量バッテリーを搭載していながら車室側の容量的制約は一切なく、100km超のEV航続距離を実現している。もちろん多用途性と動的質感をきれいに両立した400dが日本でも売れ筋となることに疑いはないが、350deも日本導入を検討してもいい美点と個性を備えている。(文:渡辺敏史)
■メルセデス・ベンツ GLE 400d 4マチック クーペ主要諸元
●全長×全幅×全高=34939×2010×1730mm
●ホイールベース=2935mm
●車両重量=2295kg
●エンジン= 直6DOHCディーゼルターボ
●排気量=2925cc
●最高出力=330ps/3600-4200rpm
●最大トルク=700Nm/1200-1300rpm
●駆動方式=4WD
●トランスミッション=9速AT