2020年春、次世代ネットワーク「5G」のサービスがついに日本で開始される。超高速通信が可能になる5Gのスマートフォンの登場によって、遠隔医療や自動運転の技術が飛躍的に向上するなど、これまでとは異なる新たなライフスタイルが始まる。「2020年自動車キーワード」の短期連載の第6回目では、「超高速通信5Gがもたらす、これからのクルマ社会」を紹介する。

現在の「4G通信」と比べて100倍以上の超高速通信が可能な「5G」

画像: 2020年夏、トヨタはレクサスLSをベースとした自動運転実験車「TRI-P4」でレベル4自動運転車の同乗試乗を東京・お台場地区で実施する。

2020年夏、トヨタはレクサスLSをベースとした自動運転実験車「TRI-P4」でレベル4自動運転車の同乗試乗を東京・お台場地区で実施する。

最近スマートフォンをはじめとする通信業界で、何かと耳にするようになったキーワードが「5G」。5Gの「G」はGenerationの頭文字で、日本語で言うと「第5世代」の通信技術のことだ。現在使われているのは「4G(第4世代)」で、「LTE (Long Term Evolution):第3世代の3Gを進化させた通信規格」とほぼ同義語で用いられることが多い。そうした中、世界的にも開発競争が進む5Gのサービスが2020年より日本で開始される。これに伴い、5Gに対応したスマートフォンが相次いで登場している。

5Gの特徴は主に4つ、「超高速通信」と「超大容量」、「超大量接続」、「超低遅延」である。速度は現在の「4G」と比べて100倍以上と言われる10Gbpsの超高速(もちろんベストエフォート時)にもなり、動画など負荷の大きな通信にも耐えられる大容量化を実現している。

さらに一度に多くの通信機器と接続できるため、たとえば家庭内のシステムとモバイル機器とをつないで外部から自在にコントロールできる(IoT:Internet of Things)上に、超低遅延になるため、ほとんどタイムラグが起きないことを利用して遠く離れたところからの遠隔医療や、映画や音楽もアッという間にダウンロードが可能になる。

このように大量の接続が同時にできることは、クルマ社会にとってもプラスとなる。「クルマとクルマ」、「クルマとインフラ」、「クルマと歩行者」などが互いに高速通信することで、交通事故の低減にもつながるのだ。

ただ、これらの特徴は移動が常となるクルマにとっての直接的なメリットを受けるのは、まだ先になりそうだ。なぜなら、5Gが展開されるエリアはしばらくの間は限定的で、通信エリアを跨いだ時のハンドオーバー技術もまだ確立されていないからだ。5Gはより高い周波数帯域を使うため、電波の指向性が強く、建物があるだけで急激に電波状況が悪化してしまう。その上、安定したハンドオーバー技術を高める必要も欠かせない。

海外では中国の深センをはじめ、いくつかの地域で先行的に整備が進んでいるが、それも限定したエリア内での話だ。5Gを広く普及させるには解決すべきハードルは数多いというのが現状だ。

5Gに向けてトヨタはカローラにディスプレイオーディオを標準装備した

画像: 国内トヨタブランドとして初めてディスプレイオーディオ(DA)を全車に標準装備したカローラ。

国内トヨタブランドとして初めてディスプレイオーディオ(DA)を全車に標準装備したカローラ。

そんな中、トヨタは新型カローラを皮切りに、ディスプレイオーディオの本格搭載をスタートさせた。ディスプレイオーディオとは、ナビゲーション機能のないディスプレイとスマートフォンを連携し、それに対応したアプリをディスプレイに表示することができるシステムだ。この流れは他のトヨタ車へも波及しており、2020年にはアルファード/ヴェルファイアをはじめ、大半のモデルにディスプレイオーディオの標準装備が実現されそうだ。その狙いはどこにあるのだろうか。

あくまで推測の域を出ないが、もっとも重視しているのは車内インフォテイメントシステムのグローバル対応だろう。海外ではスマートフォンと連携して使うユーザーが圧倒的に多く、ナビゲーションも Apple CarPlayやAndroid Autoで済ませることがほとんどだ。それに対して日本では、DVD/CDドライブ付きのカーナビゲーションが中心だった。車内のデザインも含め、日本だけ特別に開発する時代ではなくなったということだろう。

その一方で、トヨタはコネクテッド機能を全車に標準装備する意向を固めている。DCMという通信モジュールを装備し、位置情報付きの緊急通報をワンボタンで操作できるほか、駐車時に空スペースを知らせるサービスや警告灯の点灯をオペレーターに相談できるサービスも用意した。トヨタはこのサービスを普及させるべく、もっとも販売台数が多いカローラからスタートさせたのだ。

さらにトヨタは、「SDL(Smart Device Link)」と呼ばれる、オープンコンソーシアムで開発されたアプリで動く規格をディスプレイオーディオに搭載した。Apple CarPlayやAndroid Autoにも対応する一方で、自動車メーカー主導でスマートフォンのOSに依存しないシステムの提供をスタートさせたのだ。

これは将来カーシェアリングが日常化した時、ユーザーが使用するスマートフォンがどんな種類であれ、それを接続するだけで日頃使っているアプリがそのまま車載機で使える必要があるからだ。近い将来、5Gが普及した時にもこの規格は有効となるだろう。トヨタのディスプレイオーディオ搭載は、そんな展望に立った上でのグローバル戦略なのかもしれない。(文:会田 肇)

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