昭和は遠くなりにけり・・・だが、以前に連載した「昭和の名車」では、紹介しきれなかったクルマはまだ数多くある。そこで、1960年代以降の隠れた名車を順次紹介していこう。今回は「トヨタ セリカ カムリ」だ。
トヨタ セリカ カムリ 2000GT(RA55型):昭和55年(1980年)8月発売
セリカ カムリは1980年(昭和55年)1月に登場した。背景には小型乗用車市場の需要の多様化、とくに高級セダンに対する需要の増大があった。開発のコンセプトは「走行性能に優れた高級スポーティセダン」というものだ。セリカ カムリはトヨタの新しい販売チャンネルであるビスタ店でも販売するクルマで、ベース車はカリーナだった。あまり好評とはいえなかったカリーナのデザインをリファインしたという面もある。
登場時のエンジンは1.8Lの直4 OHV(13T-U型)と1.6Lの直4 OHV(12T-U型)の二本立てで、グレードはそれぞれXTとLTを設定した。このラインアップでは、ちょっと地味な感じは否めなかった。デザイン的にもフロントビューにA40型セリカXXの面影を残しつつ、コンベンショナルなセダンにしたという程度で、特別に目立つところもない。このままでは特徴のない冴えないクルマで終わっただろう。
しかし、8月に2Lの直4 DOHCを搭載した2000GTが投入され、本格的なスポーツセダンとして注目された。搭載されたエンジンは18R-GEU型。2代目カリーナ2000GTなどトヨタのスポーティカーを支えたユニットだ。排出ガス対策のためにEFIによって燃料供給されるようになり、規制前のハイオク仕様のソレックス ツインキャブで145psだった頃の中回転域からの厚いトルクを感じさせるようなフィーリングは得られない。それは残念な面であった一方、扱いやすくフラットトルクともいえるわけで、マニア好みではないが十分に速く使いやすいエンジンとなった。
サスペンションはフロント:ストラット/リア:セミトレーリングアームという組み合わせだ。XTとLTのリアサスペンションはリジッドだったが、GT、および同時に登場した2Lの直4 SOHC(21R-U型)を搭載した2000SE、1.8Lの直4 OHV(3T-EU型)を搭載した1800SXは4輪独立式となった。とくにGTには強化サスペンションとスタビライザーが装着され、走りを支えた。
ブレーキは前後ともディスクブレーキを装着した。サーボの効きが極めて良く、軽いタッチで大きな減速力が得られるGTの走りにふさわしいものとなった。17.5〜20.5というバリアブルレシオのステアリングギアボックスが採用されたことによって、初期応答性はシャープに、大舵角になると鷹揚になる方向のフィーリングも違和感がないものだ。
室内では、ドライビングシートもセミバケットタイプになっており、座り心地とホールド性は良好で、ステアリングにはチルト機構もついて的確なドライビングポジションが取れるのも良かった。欠点(?)といえるのがトランクのスペース。せっかくのセダンで使い勝手に期待するが、奥行きがあっても深さが足りない。せっかくセミトレでスペース的には余裕があるはずなのにもったいないところ。このあたりはライバルに見劣りがするポイントといえるだろう。
セリカ カムリは販売期間が2年あまりと短命なモデルで、2代目からはセリカの名称が消えFFに駆動方式が変わるなど、実質一代きりのモデルといえる。古き良きFRセダンの最後を飾る一台といってもいいだろう。
トヨタ セリカ カムリ 2000GT 主要諸元
●全長×全幅×全高:4445×1645×1395mm
●ホイールベース:2500mm
●重量:1125kg
●エンジン型式・種類:18R-GEU型・直4 DOHC
●排気量:1968cc
●最高出力:135ps/5800rpm
●最大トルク:17.5kgm/4800rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:185/70HR14
●価格:151万6000円