2005年、欧州で3代目アウディA4にカブリオレが登場している。先代A4に続いての設定で、プレミアムブランドとしてなくてはならない存在となっていた。残念ながらこの世代では日本に正規輸入されることはなかったが、洗練されたアウディの個性を象徴するモデルとしてファンの間では評判となっていた。ここでは欧州で行われた試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年1月号より、タイトル写真はアウディA4カブリオレ 2.0TFSI)

クラシックなソフトトップでエレガントな佇まいを実現

2005年のフランクフルトモーターショーにおける硬派な話題はハイブリッドであった。たしかに環境問題は大事であるし、将来に備えての真剣な提案は必要である。しかし「笛吹けども踊らず!」の言葉どおりこの難解なシロモノは一般来場者には不人気で、彼らの足は別のモデルへ向かっていた。

彼らの目標は新世代のカブリオレであった。具体的にはフォルクスワーゲン イオス、オペル アストラ ツイントップ、ボルボC70など、いわゆるリトラクタブルハードトップを持った2+2クーペとカブリオレのクロスオーバーモデルで、特に「年間を通じてオープンカーをドライブしたい」「そのためには耐候性が高く、安全で、さらにできれば4人乗りでありたい」と欲張りなドイツ人や我々日本人にとってもピッタリのコンセプトである。

こうした構造上のさまざまな利点のために今後、このリトラクタブルルーフを持つカブリオレはフランクフルトショーにその類似モデルが数多く登場したことからオープンモデルの主流となる可能性が高い。

しかし、この夢のような(?)モデルにも弱点はある。まず、トランクルームが致命的に狭いこと、続いて折りたたみメカニズムによる制約でルーフが完全に前方まで届かず、ウインドシールドをパッセンジャーの頭上を越えるほどにまで後退させねばならず、せっかくのオープンカーフィールを半減させる。

さらにその結果、ルーフ形状が制約され、さらに収納場所のトランクが厚く(高く)なってしまうために全体のプロポーションが崩れデザイン的に美しくなくなる。また折りたたみのメカニズムが複雑で通常のキャンバス仕様よりも50kg近く重いことなどが挙げられている。

実は、このリトラクタブルトップの弱点に関する主張はアウディから発せられたものである。というのも彼らは同じくこのフランクフルトショーで世界に向け初公開されたニューアウディA4カブリオレはクラシックなソフトトップを持っていたのである。

その数週間後、レポーターは南仏サントロペで開催されたA4カブリオレの試乗会に参加していた。初秋の柔らかな日差しの中に佇んでいたA4カブリオレはたしかに美しかった。とりわけクローズド状態のトップとボディ下部が形成する端正なプロポーションはカブリオレの黄金分割と言えるほどであった。

さらにオープンにして正面から見ると新たに与えられたシングルフレームグリルとアウディカブリオレの特徴であるウインドシールドの太目のメッキフレームがアクセントとなって、非常にエレガントでエクスクルーシブなコンビネーションを形成している。

その他、この新しいカブリオレでは、セダンに準じたヘッドライトのグラフィック、そしてリアコンビネーションライトなどに小変更が与えられている。

画像: 質感の高いA4カブリオレ2.0TFSIのインテリア。セダン/アバントの4本とは違い、カブリオレのステアリングホイールは3本スポークを採用。

質感の高いA4カブリオレ2.0TFSIのインテリア。セダン/アバントの4本とは違い、カブリオレのステアリングホイールは3本スポークを採用。

クローズドボディと変わらない高い静粛性

今回の試乗会は時間の余裕があったので、筆者はできる限りの車種をトライすることができた。最初に選択したのは、もっともパワフルなS4カブリオレである。

ドイツやヨーロッパでも流行の兆しを見せているピュアホワイトのボディに搭載されるエンジンは、S4セダンと共通の4.2L V8で最高出力344ps/7000rpm、最大トルク410Nm/3500rpmと出力も変わらない。

このS4カブリオレはソフトトップの開閉機構やボディ補強などを含め空車重量は1895kgになるが、V8エンジンのパワーはそれを補って余りある豪快な加速を見せる。合計4本のエグゾーストパイプから流れるバックグラウンドミュージックはアメリカ車を思わせる腹に響くコントラバスのようなビートだ。

スロットルをさらに踏み込むと上半身はシートに押し付けられ、スピードメーターの針が弾けるように上昇を続ける。サイドウインドウを立て、さらにリアのウインドディフレクターを立てれば風の巻き込みはなくなるが、南仏の涼風を楽しみたいレポーターは全てを下ろしたフルオープンの状態で走り続けた。けれども私のような小柄なドライバーならば、そのままでも風の巻き込みは気にならない。

曲げ、そして捻り剛性をさらに向上させたオープンボディは、この後に続いた路面の荒れたワインディングロードでも軋み音や不快な揺れなど感知されず、その強固さを改めて証明してくれた。

およそ30kmほどのショートコースを走り終えて市街地に入る。やっぱり日本人のオジサンひとりが純白のオープンカーに乗っている光景が恥ずかしいので閉めることにする。A4カブリオレでは30km/h以下ならば走行中でも開閉作動はOKだ。さらに開閉に要する時間はわずか21秒、これならば信号待ちの間でも十分にいける。

また、このソフトトップには静粛性に優れたアコースティック仕様(S4は標準)がオプションで用意される。新しい遮音素材の採用とCピラー部への防音材追加などによってクローズドボディとほとんど変わらない静粛性を得ているので街の喧騒は一気に遮られる。

この後、回頭性に優れた2.0TFSI、十分なパワーの3.2FSI、さらには太いトルクの3.0TDIなどにも乗ったが、S4の有り余るパワーとクワトロシステムの与えてくれる安心感、そしてエクスクルーシブな雰囲気との組み合わせに圧倒されてしまった。

このすべての面でさらに洗練されたアウディS4カブリオレはドイツでは標準仕様で6万1900ユーロのプライスタグがすでに付けられ、来春からデリバリーが開始されるが、日本での販売時期や価格は未定である。(文:木村好宏/Motor Magazine 2006年1月号より)

画像: 4.2L V8エンジンを搭載したスポーツモデル、S4カブリオレ。

4.2L V8エンジンを搭載したスポーツモデル、S4カブリオレ。

ヒットの法則

アウディA4カブリオレ 2.0TFSI(2006年)主要諸元

●全長×全幅×全高:4573×1777×1391mm
●ホイールベース:2650mm
●車両重量:1630kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1984cc
●最高出力:200ps/5100-6000rpm
●最大トルク:280Nm/1800-5000rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:FF
※欧州仕様

アウディS4カブリオレ(2006年)主要諸元

●全長×全幅×全高:4573×1777×1391mm
●ホイールベース:2650mm
●車両重量:1895kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4163cc
●最高出力:344ps/7000rpm
●最大トルク:410Nm/3500rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
※欧州仕様

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