パワフルでスポーティなモデルを投入
第2世代となったAクラスは、先代の欠点を事細かに克服し、シティユースに優れたコンパクトカーとして安心してお勧めできるモデルとなった。市場投入後もごく短期間で成熟するヨーロッパ車の常で、この2代目でも導入当初にあったタウンスピードにおける微振動が夏以降の生産モデルではほぼ解消されている。
そしてこのたび、ラインナップに新たなグレードが加わった。A200ターボアバンギャルドだ。注目はもちろん、ターボチャージャー付きのパワーユニットだ。
ベースはA200用136psの2L直4で、これにインタークーラー付ターボチャージャーを装備することで、最高出力を193psにまで跳ね上げた。一気に40%以上のアップである。さらに、最大トルクは10Nmも引き上げられ、しかもその280Nmを1800rpmから発する。4850rpmまでのフラットトルクだから、その走りの過激さは、想像に余りある。
試乗の前に、その他の注目点を挙げておこう。車名にもあるとおり、現行Aクラス初のアバンギャルド仕様である点にも注目したい。メルセデスのスポーツイメージであるホールグリルを採用したのをはじめ、プロジェクターヘッドランプや17インチ7スポークアルミホイール、デュアルクロームエンドパイプなど、他グレードにはない精悍な雰囲気のスタイリングとした。
インテリアも同様だ。センターコンソールやドアトリムには硬質なアルミニウムパネルを多用。シートはファブリックと人工皮革のコンビネーションタイプ。3本スポークレザーステアリングやシルバーメーターパネル、ステンレス製のペダルなどと相まって、室内の雰囲気も相当スポーティに仕立てられた。
この内装の雰囲気はスポーティ好きにはたまらない。ぜひ、ターボモデル以外にも設定して欲しいと思う(理由はのちほど)。高出力化に対応して、足回りにも専用スポーツチューンタイプが備わった。既存グレードより10mmローダウン、ぐっと低く身構えている。
さて、いよいよその過激さを試してみようじゃないか。ハンドルを握る手からは、心なしか、他グレードよりもしっかりとしたクルマ本体の存在を感じる。自然とドラポジも緊張したものになる。スポーティモデルでは大切な演出だ。
アクセルペダルを踏む。ずしん、ドーン、ズドーン。とにかくその第一歩が勇ましい。自社製CVTが爆裂スムーズな加速をサポートしている。ターボラグを感じない。放っておくとそのままバラバラになるまで加速してゆきそうだ。
しかも、姿勢は椅子に座っているかの如し。スポーツカーのようにある程度腰を深く地面に近い姿勢をとっているわけじゃないから、余計に速く感じる。椅子に座って坂をすべり降りる感覚を想像して欲しい。
街中では不用意に踏むことがはばかられる。ただし、17インチということもあって、乗り心地はノーマルに輪をかけて「つらめ」。路面の凸凹をがんがん乗り手に伝える。よく言えばダイレクトだが、Aクラスには馴染まないと思うが、どうか。
腰の浮くような加速は確かに面白いが、ちょっと考えさせられた。税込み346.5万円は、既存グレードの価格を考えるとお買い得である。+60psを得て、数々のアバンギャルド仕様を備え、A200+37万円だから、これだけ見れば欲しくもなるだろう。
だが、しかし。シティコミューターたるAクラスの本領は素の、252万円のA170ですでに存分に発揮されている。ならば、プラス100万円で、速いが悪い乗り心地を無理して手に入れる必要はあるまい。だから私は、A170にアバンギャルド内装を施したモデルがあったなら欲しいと思ったのだった。実用と雰囲気があれば十分だ。(文:西川 淳/Motor Magazine 2006年1月号より)
メルセデス・ベンツA200ターボ アバンギャルド(2005年)主要諸元
●全長×全幅×全高:3850×1765×1585mm
●ホイールベース:2570mm
●車両重量:1370kg
●エンジン:直4SOHCターボ
●排気量:2034cc
●最高出力:193ps/4850rpm
●最大トルク:280Nm/1800-4850rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:FF
●車両価格:346万5000円