2005年に登場した5代目BMW3シリーズ(E90)は、次々とバリエーションを増やして人気を高めていったが、当時日本に上陸していない魅力的なモデルがまだまだあった。それが4WDモデルの330xiと、クリーンディーゼルの330d。Motor Magazine誌は隠された3シリーズの魅力を探るためにドイツで330xiと330dをテスト、5代目BMW3シリーズ(E90)の可能性を追っている。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年1月号より、タイトル写真はドイツ・ミュンヘンの目抜き通り、レオポルト通りをゆく330xiと330d。)

330xiは後輪駆動の良さを生かしたスポーツセダン

ドイツでの発売以来すでに1年が経過したBMW3シリーズだが、そのデザインは今なおユニークで、そして新鮮だ。道ですれ違うたびに何度か振り返ってしまう。もちろん販売も好調で2005年の全世界での販売台数はおそらく48万台に近づくだろうと予想されている。

この数字は、アウディA4とメルセデス・ベンツCクラスなどがひしめく、いわゆるプレミアムDセグメントにあって、最高の数字となる。それにもかかわらずBMWは手綱を緩めようとはしない。続々とバリエーションを追加して、その新車効果を維持しようと努力している。

今回、我々は3シリーズの魅力、狙い、今後の可能性など、すべてを探ろうと、ドイツ取材を敢行した。日本でまだ乗ることのできない新しい3シリーズに乗って、3シリーズの本当の姿を感じてみたいと思ったのだ。

取材はミュンヘンを中心とした南ドイツ・バイエルン地方で行い、約1000kmを走ったが、取材を行った数日間は、この時期のドイツとしては珍しいほどよく晴れ渡り、絶好のテストとなった。今回、我々がテストしたモデルは330xiと330d。330xiはBMWが近年力を入れ始めた4WDシステムを搭載した3シリーズのトップモデルであり、日本でも11月に正式に導入が発表されたが、デリバリーはまだ行われていない。

一方、330dは最近日本で話題が高まっているディーゼルエンジンを搭載した3シリーズのトップモデルである。こちらは、日本にはまだ導入する予定のないモデルである。

まずは、最新モデル、330xiから話を進めよう。BMWの4WDシステムの開発は、顧客からの要請よりずっと以前に、ハンドリング向上のためにスタートしている。しかし、当初は制御系を司るエレクトロニック技術が現在ほど進んでいなかったために、ビスカスカップリングやトルセンデフを使用せざるを得ず、BMWの目指すドライビング・ダイナミクスを100%実現させることができなかったという。

しかし、現在ではエレクトロニクス技術が進み、スピード、ステアリングアングル、ヨーレートなど様々な情報をもとに、電子制御の多板クラッチに瞬時にコントロールして、駆動力の必要なアクスルへトルク伝達することが可能になった。またそれによりABSやDSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)などの素早い介入が可能になり、例えばコーナリング時でのダイナミック・コントロールまでこなせるように進化したのである。

果たして、このxDriveのもたらす利益はドライバーにどのように伝わってくるのだろうか。こうした興味と命題を持って、我々はミュンヘンへやってきた。

しかし、ミュンヘンに期待した雪や霙(みぞれ)はなく、フォトグラファーにとっては好都合だが、4WDシステムの特徴や特性を探るにはあまり適した条件ではなかった。いずれにせよ、330d、そして比較用に借りた318iを従えて、アウトバーンへ出る。

330xiに搭載されている直列6気筒エンジンは最新の330iと同じもので、マグネシウム/アルミ合金のクランクケースを持っている。総排気量は2996ccで最高出力は258ps/6600rpm、そして最大トルクは300Nm/2500rpmを発生する。プレスキットによれば、0→100km/hは6.4秒、最高速度は250km/h(リミッター作動)とある。

ドライ路面を走り出して感じるところは少ないが、全体的にちょっと引きずっているような感じがある。4WDのイナーシャとおよそ70kgほどのシステム重量によるものかもしれない。

撮影ポイントを探しながらアウトバーンを降り、さらに南下すると、道の両脇に牧場が広がり、そこに簡易舗装の道があるのを発見した。撮影と同時にxDriveの走りを確認しようとメインロードから外れる。たしかに路面はルーズになり、後方の330dのリアが左右に振れ始めるのがわかった。

一方、330xiは何事もなかったようにステアリングを切った方向に進んでいる。ペースを上げても330xiからは土煙の上がる量が圧倒的に少ないのがわかった。

やがてちょっとしたコーナーを発見し、再び撮影をスタートさせる。はじめは慎重にスロットルをコントロールしていたが、カメラマンの指示に従ってスピードを上げてみる。

すると、これまでのビスカスカップリングやトルセンデフによる4WDシステムとの違いがはっきりとした。従来であれば、当然のように、まずフロントがむずむずと外側に滑り出すと、それを感知してトルクが前輪に伝わって軌道修正が行われる。しかし、BMWのxDriveでは他のシステムのように滑ってから介入するのではなく、様々な情報に基づいた電子信号によって瞬時に制御されるため、滑り出す前にトルクが伝わって修正が行われる印象がある。ごく自然に、スロットルを踏んだまま、ステアリングを切った方向へ330xiは進んでいく。

続いてターマックのカントリーロードに場所を移してテストを行ったが、ここでのコーナリング特性は、よほど無茶な進入をしない限りフールプルーフにニュートラルなまま出口に向かっていくというものだった。330xiは確かに後輪駆動の良さを生かしたドライビング・ダイナミック重視のスポーツ・セダンであった。

現在自動車業界では、ハイブリッドとかクロスオーバー、マルチパーパスなど、多用途性、多機能性、多面性を持つものが注目されているが、この330xiこそ、いかなるシチュエーションでも使える多様性が与えられたモデルと言えるかもしれない。

新しい3シリーズの中から一台選ぶとしたら、私ならやはりこの330xiを選ぶと思う。

画像: 2005年11月に日本でも導入が発表された330xi。電子制御多板クラッチを使った4WDシステムxDriveは、3シリーズへの採用にあわせてチューニングされている。

2005年11月に日本でも導入が発表された330xi。電子制御多板クラッチを使った4WDシステムxDriveは、3シリーズへの採用にあわせてチューニングされている。

画像: 330xiの2996cc直列6気筒ガソリンエンジンは、BMWを象徴する主力パワーユニットと言える存在。回転が上がるほどにスムーズに回る感触は出色。マグネシウム・アルミ合金を使った軽量設計が話題となった。

330xiの2996cc直列6気筒ガソリンエンジンは、BMWを象徴する主力パワーユニットと言える存在。回転が上がるほどにスムーズに回る感触は出色。マグネシウム・アルミ合金を使った軽量設計が話題となった。

330dは欧州を代表するプレミアムディーゼル

続いて330dに乗り込む。実は私のドイツでの足は2003年型の320dツーリングで、150psのパワーと320Nmのトルクは数字上では問題ないのだが、発進時のもたつきが唯一の欠点だと感じている。現在の走行距離は5万kmに達しており、そろそろ買い替えを考えているところ。その第一の候補が330dで、個人的にも興味のあるモデルということになる。

このエンジンは2993ccの直列6気筒で、最高出力は231ps/4000rpm、最大トルクは500Nm/1750rpmとガソリンエンジンに匹敵するパワーを持っている。

テスト車は6速マニュアルであったが、スタートではまったくモタツキは感じられない。むしろ豪快に加速を始める。6速マニュアルを介してスタートから100km/hまでをおよそ6.7秒で走り切る。これは330xiに遅れることわずか0.3秒。また最高速度はリミッターが効く250km/hに達する。こうなれば立派なスポーツリムジンである。さらにアウトバーンでの追い越し加速も圧巻で、むやみにシフトダウンする必要なく、5速あるいは6速でもことが足りてしまう。

ただし、最近のBMW車全体がそうであるように、シャシセッティングはスポーティという名目で固められており、さらにランフラット・タイヤを装着することもあって、乗り心地は決して良いとは言えない。

この日テストしたディーゼルエンジンのドライバビリティを総合的に判断すると、その豪快な加速性能、トルク感、静粛性など、日本でも商品価値の高いモデルだということができる。もし導入されれば、人気となるかもしれない。まさに欧州を代表するプレミアムディーゼルなのである。

問題はNOxと価格。330dのドイツでの価格は3万7600ユーロ(約530万円)。同等のパワーを持つ325i(3万2500ユーロ)と比べると5100ユーロ(約72万円)の差がある。これを軽油とガソリンの価格差や燃費で計算をすると、走行距離およそ2万4000kmでその差が埋まる計算になる。

日本で距離を多く走るドライバーで2年、一般的なのドライバーならば3年くらいでディーゼルの価格デメリットを埋めることができる状況である。

しかし、日本ではディーゼルの燃費メリットが見えにくいのも問題となる。駐車料金や高速道路通行料などの周辺出費の方が多いため、燃料代をそれほど重視しない傾向もある。とはいえ、欧州のディーゼル車の性能や品質への認識は急速に高まりつつあり、日本でも近い将来、ガソリンと対等、いやそれ以上の評価を得る可能性もある。(文:木村好宏/Motor Magazine 2006年1月号より)

画像: 日本では導入の予定がなかった330d。ディーゼルでもダイナミック性能は損なわれていない。それどころか、むしろよりスポーティで、プレミアム性も増しているようにも感じられた。

日本では導入の予定がなかった330d。ディーゼルでもダイナミック性能は損なわれていない。それどころか、むしろよりスポーティで、プレミアム性も増しているようにも感じられた。

画像: 330dの2993cc直列6気筒ディーゼルは231ps/4000rpmというパワーもさることながら、500Nmというトルクが強烈。しかもその最大トルクを1750-3000rpmで発揮する。もちろんターボが装着されている。

330dの2993cc直列6気筒ディーゼルは231ps/4000rpmというパワーもさることながら、500Nmというトルクが強烈。しかもその最大トルクを1750-3000rpmで発揮する。もちろんターボが装着されている。

BMW 330xi(2005年)主要諸元

●全長×全幅×全高:4520×1817×1421mm
●ホイールベース:2760mm
●車両重量:1655(6速AT:1670)kg
●エンジン:直6DOHC
●排気量:2996cc
●最高出力:258ps/6600rpm
●最大トルク:300Nm/2500-4000rpm
●トランスミッション:6速MT/6速AT
●駆動方式:4WD
※ドイツ仕様

BMW 330d(2005年)主要諸元

●全長×全幅×全高:4520×1817×1421mm
●ホイールベース:2760mm
●車両重量:1675(6速AT:1690)kg
●エンジン:直6DOHCディーゼルターボ
●排気量:2993cc
●最高出力:231ps/4000rpm
●最大トルク:500Nm/1750-3000rpm
●トランスミッション:6速MT/6速AT
●駆動方式:FR
※ドイツ仕様

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