2005年の東京モーターショーで大きな話題を呼んだブガッティ・ヴェイロン16.4が、2006年早々ついに日本に上陸した。特別な試乗会が行われたのは富士スピードウェイ。その性能を体感するには絶好な場所だった。早速そのサーキット試乗の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年2月号より)

超高性能高価格だが、意外なほど威圧感がない

1億6300万円のクルマに乗り込む。意外にも緊張感を持たないのはボクが図々しいからか。いやそれだけではない。ブガッティ・ヴェイロン16.4は乗る前にドライバーを威圧するようなことはしないからだ。

例えばドアハンドル。形状は一般的なバータイプで、これを握って引けばいい。そしてドアはガルウイングでもなく通常の前ヒンジで開く。ドアハンドルがボディに隠されているとか、ドアが上方に跳ね上がるようなタイプは乗る前のエンターテイメントとして楽しいが、ドライバーはここから心拍数が上がってしまう。

しかしヴェイロン16.4はまだこの時点ではおとなしい。シートスライドとリクライニング、ハンドルのテレスコピックとチルトといった調整機能は手動だ。電動タイプにしなかったのは軽量化のためである。ただしコンフォートシートのハイトコントロール(クッション部だけ動くタイプ)は電動で動く。もちろんシートヒーターは装備される。

ちなみに最新情報によると、日本仕様ではスポーツシートは選択できず、コンフォートシートに限られることになったという。その理由はスポーツシートの幅が日本の法規に合わず、認証が下りなかったためだ。ボクのお奨めはコンフォートシートだったので、逆でなくて良かった。

ドライビングポジションを取ると室内空間は予想したよりも広く感じる。ボクはかなり胴が長い方だが、ヘッドクリアランスは充分ある。そもそも地上から低い位置に座っているのでウインドシールドからの見晴らしが良いわけではないが、ダッシュボードが邪魔だったり、サンバイザーが迫ってきたりすることはなく、快適なポジションに収まることができる。ただ左コーナーではAピラーとドアミラーがかぶるので死角を減らすために頭を動かす必要がある。

エクステリアの仕上がりも素晴らしいが、インテリアの質感は桁違いだ。本革とアルミのフィニッシュがこれほどきれいなクルマは見たことがない。大衆車がビジネスホテルと仮定すると、高級車はシティホテル、ヴェイロン16.4は手入れの行き届いたお城に招かれた感じだ。このあたりになってくると1億6300万円という価格が頭に浮かんでくる。

右手でイグニッションキーをダッシュボードのキーホールに挿し2段右に捻る。これでイグニッションオンだ。インストルメントパネルの中に各種の警告灯が点灯する。それを確認したらブレーキペダルを踏み込んでシフトレバーの手前にある丸いスタートボタンを押す。

一度押すだけで自動的にエンジンが始動する。W型16気筒、8L、4ターボチャージャーはコンピュータ制御により簡単に目覚め、低い排気音でアイドリングを開始する。

7速DSGを採用するのでアクセルとブレーキの2ペダルである。ブレーキペダルを踏んだままシフトレバーを右に押すと前進ギアに入る。このときのインジケーターはP-R-N-D-1と表示されている。一番右の1がDレンジの1速の意味である。通常のATのDレンジと同じように自動変速してくれる。

シフトレバーをもう一度右に押すか、ハンドルの裏にあるパドル操作をするとスポーツモードに切り替わる。この時インジケーターは1-2-3-4-5-6-7という表示になり、現在入っているギアは数字の色が反転して示してくれる。

Rレンジに入れる場合には左に押しながら後方に引く。Pレンジはシフトレバーの頭を上から押すだけだ。

今回は富士スピードウェイでの走行なのでスポーツモードにして走る。もうひとつサーキットを走る場合に選べるのはサスペンションのセッティングだ。ノーマルではグランドクリアランスが120mmだが、ハンドリングモードでは80mmに下がる。

同時にリアウイングはルーフより高い位置に油圧で上がってくる。バックミラーで見える範囲より高くなって視界の邪魔をしない。トルクコンバータは持っていないがブレーキペダルから足を離すとヴェイロンはクリープのように動き出す。

そこからアクセルペダルを踏み込むと、その踏み込み量に従ったトルクが出て加速していく。このまったく当たり前のことが何の違和感もなく行われる。1001psのパワー、1250Nmというトルクを発揮するが、あまりにもスムーズに走れるのに驚く。これなら街乗りとしても使えそうだ。

画像: 富士スピードウェイに姿を現したブガッティ・ヴェイロン16.4。実際に目にすると意外や小柄に見えるのは、全高が1204mmと低いからか。タイヤはヴェイロンのために専用開発されたミシュラン・パイロットスポーツPS2 PAX。ランフラットタイヤで、継続生産されるタイヤとしては世界で最もワイドなものだ(デビュー当時)。

富士スピードウェイに姿を現したブガッティ・ヴェイロン16.4。実際に目にすると意外や小柄に見えるのは、全高が1204mmと低いからか。タイヤはヴェイロンのために専用開発されたミシュラン・パイロットスポーツPS2 PAX。ランフラットタイヤで、継続生産されるタイヤとしては世界で最もワイドなものだ(デビュー当時)。

シフト操作が間に合わないほどの回転の上がりの早さ

さあ本コースへ向かおう。ピットロードはゆっくり走っていく、というつもりでもスピード感がないので80km/hは出ている。

ピットエンドからアクセルペダルをグイッと床まで踏みつけると、それまでとは一変して強烈な加速Gが全身を包み込む。スポーツモードでも、タコメータの針が6500rpmから始まるレッドゾーンに入りそうになると自動的にシフトアップしてくれる。相当ハイギアードだがあまりにも早く回転が上がるのでパドルシフトは追いつかず、この自動シフトアップに頼ることになる。

富士の第1コーナーがこんなに近かったのかと思うほど早く到達する。クリッピングポイントからアウトに膨らみながら再びアクセルペダルを踏んでいくと、加速Gを持続しながら次々とシフトアップしていく。パワーメーターを見ていると、6000rpmに近づくと1001psを発揮しているのが分かる。

あっという間に昔のAコーナーをクリアして100Rに向かう。右寄りのラインから加速しながらクルマなりで左に膨らんでいく。ヘアピンに向けて右に少しタイトになっているところでアクセルオフ、そして緩くブレーキを掛けながらハンドルを切ると少しリアが流れ出す。太いタイヤでベタベタにグリップしているのかと思ったら、リアの滑りを誘発することもでき、意外と姿勢を変えやすかった。実はそれだけスピードが速かったと分かったのは後からだ。

ヘアピンでも左にターンインするときにクイックに向きを変えることもできる。リアを滑らせて向きがちょうど良くなる前からアクセルペダルを踏み込んでいくと、リアのグリップが回復してオーバーステアからアンダーステアに戻っていく。

300Rに向かってアクセルペダルを踏んでいくと、コース幅が狭く感じるほどスピードが出て、左の縁石まで使うライン取りが必要になる。ツイスティな登りでもアクセルコントロールによって上手くライントレースできる。アクセルペダルは過敏ではないし、トルクはドライバーが制御できるので、きちんと操っている感じになるから楽しい。

最終コーナーを立ち上がって長い直線を再びアクセル全開だ。何速で加速しているのかよく分からないほど次々にシフトアップしていく。あっという間に250、270、そして300km/hに達する。ボクがテスト走行したときには暗くなっていてハイビームのヘッドライトが頼りだったのでここでやめたが、第1コーナーまでまだまだ余裕があった。

富士スピードウェイで300km/hを体験したのは初めてだが、緊張感はなかった。それはクルマが安定していたからだ。専用開発されたミシュランタイヤが路面を捉え、正確に直進してくれる。剛性の高いカーボンファイバーのボディとそのエアロダイナミクスの成果だろう。

実はこのスピードでも車内で会話ができるほど静粛性が高い。これも驚きだ。外からは新幹線が通過している音に聞こえるくらいなのだから。300km/hからのブレーキも安定していて効きもいい。ハンドリングモードだとリアウイングが跳ね上がりエアブレーキになるのが効いていると思う。これは200km/h以上でのブレーキングで作動する。

車内の静粛性とハンドリングの安定性から、富士スピードウェイでは300km/hの迫力はあまりない。つまりここでも緊張を強いられないのだ。400km/hの実力を持つクルマの余裕を見た気がした。(文:こもだきよし/Motor Magazine 2006年2月号より)

画像: ヴェイロンは2ペダルの7速DSGを採用。ステアリングにパドルシフトを装備する。日本仕様はコンフォートシートのみになる。

ヴェイロンは2ペダルの7速DSGを採用。ステアリングにパドルシフトを装備する。日本仕様はコンフォートシートのみになる。

ヒットの法則

ブガッティ・ヴェイロン16.4 主要諸元

●全長×全幅×全高:4462×1998×1204mm
●ホイールベース:2710mm
●車両重量:1888kg
●エンジン:W16DOHC
●排気量:7993cc
●最高出力:1001ps/6000rpm
●最大トルク:1250Nm/2200-5500pm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:4WD
●車両価格:1億6300万円

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