昭和は遠くなりにけり・・・か。以前に連載した「昭和の名車」では、紹介しきれなかったクルマはまだ数多くある。そこで、1960年代以降の隠れた名車を順次紹介していこう。今回は「ダイハツ リーザ」だ。

ダイハツ リーザ(L100V型):昭和61年(1986年)11月

画像: 写真はノンターボモデルだが、独特のスタイリングは変わらない。女性にも人気が高かった。

写真はノンターボモデルだが、独特のスタイリングは変わらない。女性にも人気が高かった。

スズキ アルトの登場以来、軽自動車市場は物品税のかからないボンネットバン(商用車)が中核を占め、高値安定を続けていた。各社が次のステップを模索する中でダイハツが目を付けたのが、軽スペシャリティ市場だった。当時クーペ風ボディを持つのは2代目スズキ セルボのみ。ここに商用車登録とはいえスタイリッシュなボディと軽乗用に負けない仕様と装備を備えたモデルを投入すれば「カワイイ」をキーワードとする女性ユーザーが獲得できると考えて企画・開発したのがリーザだ。

リーザは「個人の価値観の多様化に合わせ、プライベートなカーライフを演出するMINI」を目指し1986年(昭和61年)に誕生した。開発に際して与えられた課題は「新しいフォルム、自分だけの快適空間、軽を超える軽快な走り、プライベートMINIにふさわしい機能設計」の4つだ。

まずエクステリアは、「エアロヘミサイクル(半円球形)」をテーマにデザインされたオーバルフェイス&ラウンドバック・フォルムで際立った存在感を主張した。同時にセンター&クオーターピラーのコンシールド化、ドリップレスルーフ、エアロホイールキャップの採用など徹底した空力追及により、Cd値=0.36、前面投影面積を掛けたCD×Aでも0.56という優れた空力特性を達成している。

画像: ミッションはターボ車にも2速だがATも設定されていた。ブースト計などは特に設定されていない。

ミッションはターボ車にも2速だがATも設定されていた。ブースト計などは特に設定されていない。

キャビンは、インパネからドアトリム、リアシート、バックドアへと続く滑らかな曲面構成にして広々感のあるラウンドスペースを実現した。4人乗りだが、ドライバー優先設計を明確にするため、フロントシートをホイールベースのほぼ中央に配置。乗り心地と同時にドライビングポジションも向上させている。また、YとZタイプのリアシートバックは一体で前にも後にも倒せて積載性を高めたのは商用車ならではの処理といえる。

シャシは1985年に登場した2代目ミラのホイールベースを120mm短縮したもの。フロントに横置きされるエンジンもミラ用に新開発された直3 SOHCのEB型だ。EB型は鋳鉄ブロックにアルミ製クロスフローSOHCヘッドを架装したもので、カムシャフトはコッグドベルトで駆動する。標準仕様は自然吸気の32ps/4.4kgm型だが、トップグレードのZには、ネットで50ps/7.0kgmを発生する空冷インタークーラー+IHI製ターボチャージャー仕様が搭載された。シリーズ唯一のターボで、ミラTR-XXとともに550cc規格の軽で最強を誇った。

画像: トップグレードのZにはインタークーラー付きターボエンジンを搭載して、ネットで50psを発生した。

トップグレードのZにはインタークーラー付きターボエンジンを搭載して、ネットで50psを発生した。

トランスミッションは5速MTのほか、女性ユーザーを意識してYとZには2速ATも用意された。ターボパワーを有効に加速力に変え、低燃費にも貢献するロックアップ機構が付くなど、グレードアップが図られている。2速ATの60km/h定地燃費(商用なので10モード燃費はない)データは、Yの24.0km/Lに対しZは26.5km/Lと、ターボにもかかわらず10%以上の燃費向上がカタログに記載されている。

サスペンションは前:ストラット/後:セミトレーリングアームの4輪独立懸架で、フロントにスタビライザーを装備。ブレーキはY/Z/TSのフロントにディスクブレーキを標準装備。タイヤもZには軽自動車初の155/70SR12ラジアルを採用するなど、クラス最強パワーを確実に路面に伝え、スポーティなハンドリングを実現する技術が投入されている。単に女性を取り込むだけでなく、軽スペシャリティとしての走りの良さにもこだわったクルマ作りが良くわかる内容だ。

この走りの良さを形で表すため、前後バンパースポイラー、ルーフエンドスポイラー、ベルトラインスポイラー、サイドアンダースポイラーやモモ製ステアリングをディーラーオプションで用意して、自分流に仕上げる楽しさを訴求したのも、リーザらしい設定だった。

画像: ホイールベースのほぼ中央にフロントシートを配してドライビングポジションを向上させている。

ホイールベースのほぼ中央にフロントシートを配してドライビングポジションを向上させている。

昭和の名車のバックナンバー

ダイハツ リーザZ 主要諸元

●全長×全幅×全高:3195×1395×1335mm
●ホイールベース:2130mm
●重量:600kg
●エンジン型式・種類:EB型・直3 SOHCターボ
●排気量:547cc
●最高出力:50ps/6000rpm(ネット)
●最大トルク:7.0kgm/3500rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:155/70SR12
●価格:85万5000円

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