Gクラスよりひと回り以上大きなボディは北米市場にも対応
2005年も師走に入ってメルセデスベンツからニューモデルの発表があった。GLクラスである。
その名前から「これが噂のGクラス後継モデルか」と、誰もが思うだろう。実は筆者もそう考えた。しかし、プレスキットをよく読むとどこにも「Gクラスの後継」という言葉は発見できなかった。そこで今から27年も前に登場したメルセデスの走る化石といわれているGクラスについて調べてみると、いまだに軍用の需要があったりして、当面は生産を続行すると伝えられている。
それでは一体GLクラスとはどんなモデルなのだろうか。まずそのボディだが全長は5088mm、全幅1920mm、そして全高1840mmでGクラスよりひと回り以上大きく、ニューSクラスに近い。
これは2005年から北米や欧州で発売を開始したビッグクルーザーであるRクラスをベースにしている。つまりこのGLクラスは北米アラバマ州タスカルーサで生産され、主に広大な北米市場で消費されるMクラスのビッグブラザーなのである。
それゆえか、やや大雑把なデザインのスタイルだが、キャビンの広さが売りで、メルセデスのSUVとしては初めて3列シートを持つ。しかしこの最後列の2脚のフルサイズセパレートは2列目との距離が81.5cmもあり、またヘッドルームも92cmとたっぷりしているので長距離ツアーでも不足はなさそうである。
もちろん7名ものパッセンジャーがいない時には、この2脚のシートは電動で個々に床に畳み込まれ、フラットなフロアを持つ1240Lのトランクルームに変身する。これならば5人分の長距離旅行にも十分な広さである。
さらに2列目シートまで倒すと、キャビン後方は容積2300L、長さ2.1mという巨大なカーゴスペースとなる。これならば大型電気冷蔵庫と洗濯機、さらにオマケに食器洗い機を一度に運ぶこともできるだろう
これ以上ないほどの充実した装備、エンジンは4種用意
安全に関してはSクラス並みで、アダプティブエアバッグがフロント左右に、サイドバッグはフロントと2列目、ウインドウバッグはすべての席をカバーするようにレイアウトされている。また、アクティブヘッドレストのNECKPRO、さらに事故を未然に防ぐPRESAFEもオプションで選択できる。
さて、GLクラスはG(ゲレンデ=グランド=野原オフロード)と名乗る以上、当然4WDシステムを装備している。メルセデスでは4マティックと呼ばれるフルタイム4WDシステムは通常のディストリビューションギアによるもので、詳しい記述はないがMクラスと同一だろう。
またこの種のSUVでは牽引を行う機会が多いので、トレーラースタビリティアシストも装備されている。このシステムはESPを利用して不安定になりそうな牽引車両を落ち着かせる役割を果たす。
さらにオフロードドライブ向けにはDSR(ダウンヒル・スピード・レギュレーション)、ヒルスタートアシスト、オフロードABSなどが標準で装備されている。
本格的なオフローダーのためにはオフロードプロと呼ばれるスペシャルパッケージも用意されている。これにはローレンジのレシオを持つ2スピードトランスファーと100%のデフロック、さらには307mmまで車高を上げることができるようにプログラムされたエアマティックが含まれる。これでGLは水深60cmの川も渡ることができる。
さて、このGLクラスに用意されるエンジンはRクラスと同様に、すべて最新のスペックを持ったもので、224psと510Nmを発生するV6直噴ターボディーゼルが、まずエントリーモデルのGL320CDIに、そして306ps、700NmのV8直噴ターボディーゼルがGL420CDIに搭載される。
もちろんそれらは現在EU内で実施されている最新の排出ガス基準であるEU4をクリアするとともにメンテナンスフリーのDPF(煤除去フィルター)を標準で装備している。
また、ガソリン仕様には当面、2基のV8エンジンが用意されており、GL450には340psを発生する4.6L、そしてGL500には388psの5.5Lがそれぞれ搭載される。
すべてのエンジンには7速オートマチックが装備され、その操作はMクラスで導入されたようにステアリングコラムから生えたシフトレバーを介して行う。
このGLクラスは冒頭に述べたようにMクラス、そしてRクラスと同じく北米工場で生産されるが、まず2006年の春からアメリカのユーザーに、そして秋からヨーロッパにおけるデリバリーが始まる。残念ながら日本のスケジュールに関してはまだ公には発表されていない。(文:木村好宏/Motor Magazine 2006年2月号より)