2005年9月に欧州で販売が開始された3代目ルーテシア(欧州名クリオ)が日本にやってきたのは2006年3月のことだった。日本に導入されたのは5ドアと3ドアのハッチバックで、当初は1.6Lガソリンエンジンに5速MTと4速ATが組み合わされていた。ヨーロッパで人気のコンパクトカーは当時日本でどのように受け入れられたのか。その上陸ファーストインプレッションを振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年4月号より)

サスペンションはいかにもルノーらしくしなやか

ルーテシアは大ベストセラーカーだ。ここで紹介するのは3代目になるが、1991年に登場した初代は約400万台、1998年デビューの2代目は約480万台も売れている。こんなに売れていても悩みはある。それはよく出来た実用車に共通するものかも知れない。実は世界のベストセラーカーであるカローラも、同じ悩みを抱えている。それは何かというと「ユーザーの高齢化」だ。

従来型のルーテシア(欧州名:クリオ)は、欧州全体でユーザーの平均年齢は45歳、地元フランスに限ると50歳以上だった。平均年齢が高いこと自体は悪いことではない。問題はその数字がどう動いているかだ。一定ならばよいが、徐々にでも上がっているようだといけない。新規に若いユーザーが獲得できていないということになるからだ。

というわけで、このルーテシアⅢは、より若い層にアピールするように開発された。それが一番よく現れているのがデザイン面だ。アヴァンタイム以降の最新ルノーデザインには感服しているが、ルーテシアⅢも例外ではなく、スタイリッシュだ。これまでは「ふんわりと丸み帯びた」ボディだったが、それがかなり精悍で切れ味が鋭くなっている。

このスタイリングはボディサイズを拡大することで可能になった。従来モデルは全長×全幅×全高:3810×1670×1410mmだったが、ルーテシアⅢは3990×1720×1485mmと、ひとまわり大きくなった。メガーヌの弟分にふさわしい、この優美なスタイルはルーテシアⅢの最大の魅力だろう。

さらにスタイリングの魅力を引き立たせるのが、標準設定6色、注文生産7色の計13色も用意されたボディカラーだ。青系統だけでも4種、赤系統だけでも3種ある。

インテリアは、メガーヌも採用している「タッチデザイン」。これは「人間工学に基づくデザインで、操作系は手にフィットする素材・形状として直感的に使いやすく、また快適な使い心地を実現している」というものだ。スイッチ類には丸いデザインが多用されていて、その使い勝手はなかなかよい。そして、ボディサイズ拡大、クラス最大のロングホイールベースの恩恵が、インテリアに現れていることは言うまでもない。大人4名乗車でも窮屈と感じることは、まずないだろう。カーゴスペースも従来より13%ほど大きくなっている。

さて、走りはどうか。交通量が多い都内の道という限られた場所での印象だが、まず感じるのはステアリングの手応えがしっかりしていること。センター付近での曖昧さがないので気持ちがよく、安心感がある。

MTモード付き4速AT+1.6L DOHCとの組み合わせによるストップ&ゴーはスムーズ。エンジンにパンチはないが、粘り強くトルクを発揮する。AT自体は従来モデルと同じだが、制御をマイルドな方向に変えているそうだ。

サスペンションは、いかにもルノーらしいしなやかさを持っている。都心部でのちょっとしたコーナーでも、それは感じられる。ワインディングをMTモードで走ると、これは結構楽しめるだろう。プラットフォームは、日産マーチと同じ「Bプラットフォーム」を使っているが、フィーリングは従来モデルと同様、ルノーそのものだ。

2006年の欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど、ルーテシアⅢの評価は高い。全体的に見事なグレードアップをしているといえるだろう。今回は非常に限られた条件の中での試乗だったが、いいクルマであることはよくわかった。

そして、このクルマ、何かきっかけさえあれば、日本でもクリーンヒットになりそうな気がする。何かというのは、自動車雑誌編集者としてはちょっと寂しい話だが、「TVドラマに出る」とか、「芸能人が乗っている」とか、そういうことになるのだろうけれど……。(文:荒川雅之/Motor Magazine 2006年4月号より)

画像: 2005年10月に欧州デビューを果たし、2006年の欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した3代目ルノー ルーテシア。

2005年10月に欧州デビューを果たし、2006年の欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した3代目ルノー ルーテシア。

ヒットの法則

ルノー ルーテシア1.6 5ドア(2006年) 主要諸元

●全長×全幅×全高:3990×1720×1485mm
●ホイールベース: 2575mm
●車両重量:1190kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1598cc
●最高出力:112ps/6000rpm
●最大トルク:151Nm/4250rpm
●トランスミッション:4速AT
●駆動方式:FF
●車両価格:209万8000円(2006年当時)

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