クルマ好きなら一度は憧れたことがあるだろうスーパーカー。その黎明期から現代までをたどる連載企画。第31回は「フェラーリ テスタロッサ」だ。

フェラーリ テスタロッサ(1984-1992年)

画像: 全幅は当時異例の1976mm。魚のエラのようなボディサイドのスリット入りエアインテークがV12気筒を効率良く冷却する。

全幅は当時異例の1976mm。魚のエラのようなボディサイドのスリット入りエアインテークがV12気筒を効率良く冷却する。

1984年は、フェラーリにとってはヴィンテージイヤーだったかもしれない。春のジュネーブ モーターショーで発表した288GTOに続き、秋のパリ モーターショー(通称パリ サロン)では、栄光の「テスタロッサ」の名を復活させたフラッグシップ スポーツカーを発表したのだから。

フェラーリ好きでなくてもクルマ好きなら御存知のとおり、テスタロッサとはイタリア語で「赤い頭」を意味する。つまり、真っ赤なヘッドカバーのエンジンを搭載したクルマということだが、その車名は1950年代後半のスポーツカー世界選手権レースで活躍した、500テスタロッサおよび250テスタロッサを起源とする、フェラーリとしては由緒あるものだ。

1980年代に登場した新世代のテスタロッサは、512BBの後継としてフェラーリのフラッグシップとなる。そのデザインは、当時のフェラーリ他車と同様、ピニンファリーナの手になるもの。1976mmもある全幅と、サイドマウントされたラジエターを冷却するため、ドアからリアフェンダーにつながる深いスリットが外観上の大きな特徴となっている。それゆえトレッドは512BBと比べてフロントは12mmしか広がっていないが、リアは105mmも拡幅されており、ボディのワイド感を強調していた。

画像: シリンダーヘッドを赤く塗装した4943cc 180度バンクのV12 DOHCが車名の由来だった。

シリンダーヘッドを赤く塗装した4943cc 180度バンクのV12 DOHCが車名の由来だった。

もうひとつ外観上で特徴的だったのは、空力的に断面を考慮して2本の長いステーで支えられたドアミラーが、運転席側のAピラーにだけ装着されていたこと。だが、これはデザインバランスを崩すと不評で、1986年に小改良されたときにステーを短くしたドアミラーが左右Aピラーの根元に備わるようになった。

パワートレーンは512BBiの進化型で、下にミッションを抱えた180度 V12をリアミッドに縦置きする。車名のとおり真っ赤なヘッドカバーを与えられたバルブ直動式ベルト駆動のDOHCエンジンは、フェラーリ製の180度V12としては初の4バルブ ヘッドが与えられた。パワースペックは、欧州仕様で390ps/6300rpm、排出ガス規制の厳しい北米仕様でも380ps/5750rpmという高出力を誇った。

エンジンオイルの潤滑はドライサンプ方式で、9.3の圧縮比とボッシュ Kジェトロニック、マニエッティ マレッリ社製のMED120Bによる電子制御点火システムを組み合わせている。メーカー公表の性能値は、最高速度が290km/h、0→400m加速が13.6秒、0→100km/h加速が5.8秒という、フェラーリのフラッグシップにふさわしい動力性能だった。

テスタロッサは外観上の変更をほとんど受けないまま1992年まで生産され、その座を後継の512TRに譲る。7177台という生産台数は、高価なスーパーカーとしては大成功と言えるだろう。

画像: こちらは前期(初期)型。助手席側にドアミラーは装着されず、またセンターホイールロックのアルミホイールが特徴だ。

こちらは前期(初期)型。助手席側にドアミラーは装着されず、またセンターホイールロックのアルミホイールが特徴だ。

フェラーリ テスタロッサ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4485×1976×1130mm
●ホイールベース:2550mm
●重量:1494kg
●エンジン種類:180度V12 DOHC
●排気量:4942cc
●最高出力:390ps/6300rpm
●最大トルク:50.0kgm/4500rpm
●駆動方式:縦置きミッドシップRWD
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:前240/45VR415、後280/45VR415
●当時の価格:2430万円

This article is a sponsored article by
''.