AMGの主流となっている「43」エンジン
メルセデスAMGがチューニングを手掛けた6気筒ユニットで、現在最大勢力となっているのが「43」と呼ばれる3LのV6ツインターボエンジンである。セダンをはじめとするクラスの各ボディに搭載されるほか、GLCのようなSUVにも展開される。今回はこのエンジンを、クーペフォルムのSUVとして人気の高いGLCクーペで味わってみた。
43のベースとなる3L V6ツインターボエンジンの型式名は「276」。最近のメルセデスはエンジンのダウンサイジングに熱心なこともあって、V6エンジンの活躍の場は徐々に少なくなってきているが、今でも標準モデルではE450 4マティックや、Sクラスクーペ450 4マティックなどで健在。ちなみにそのパワースペックは367ps/500Nmだ。
43はこの276に装着されるツインターボをさらに大型化するなどAMG流のチューンを施し、390ps/520Nmとなる。確かにパワフルだが、標準モデル450もそれなりのハイスペックなので、チューンの度合いはそれほど高くないというのが正直なところ。
GLCクーペは昨年10月にGLCとともにマイナーチェンジを受けており、この時43も現在の390psに引き上げられたのだが、それまでは367ps/520Nmという仕様だったのである。
迫力のサウンドをともない力強く加速
ただし走らせてみるとやはりAMG一族である。まずスタートボタンを押すと湧き上がる重低音がいかにもだ。53や63のようなエキゾースト系の可変制御は行っておらず、音質の切り替えはできないが、それだけに過剰な演出のない、迫力あるいいサウンドだ。
最大トルクの520Nmは2500-5000rpmで発生するが、それより低回転域でも十分な力強さがあり、走り出しは極めて軽快。とても車重が1900kgもあるとは思えない。ただ、このV6ユニット、高回転域はあまり得意ではないと感じた。最高出力の発生回転数は6100rpmで、レブリミットも6500rpmに設定されるが、その手前で少々頭打ち感が出てくるのだ。
ATまかせで右足を踏んでいくと、5500rpmあたりで上のギアに繋ぐ。パドルでマニュアルシフトをしても伸びが軽快なのは6000rpmあたりまで。それより頑張って引っ張るよりも9速ATの利を生かして早めにシフトアップする方が速く走れる感じだ。
足まわりはエアボディコントロールサスペンションをベースに独自のチューニングを行ったAMGライドコントロール+エアサスペンション。コンフォート/スポーツ/スポーツ+とモードごとにハードな設定になっていくのだが、コンフォートモードでも結構硬めの乗り味と感じられた。
タイヤは前255/45、後285/45とかなり太めのサイズなので、減衰力を抑えたモードではややオーバータイヤ気味で突き上げが目立つ。むしろスポーツ以上に硬めにした方が、乗り心地はハードになるものの、スッキリとした味わいに感じた。
それにしてもGLCクーペはマイナーチェンジで抜群にカッコ良くなった。上辺の方が長かったグリルデザインは台形の安定感のあるものに変わり、中でもAMGモデルは縦の格子が力強いパナメリカーナグリルを採用。これが強烈な迫力を醸し出している。
インテリアに大きな変更はなかったが、液晶メーターを中心とするフルデジタルコクピットや、音声操作のMBUX、ジェスチャーコントロールなど、装備類は最新にアップデートされた。
ところで、3L V6ツインターボの43は登場してからすでに5年が経過しており、今後は53が搭載する直6+ISGにスイッチしていくものと予想される。実際メルセデスAMG GT 4ドアクーペでは、この機構で367ps/500Nmとしたユニットを「43」としてラインナップしている。AMGとて電動化の流れには逆らえないというわけだ。(文:石川芳雄)
■メルセデス AMG GLC 43 4マティック クーペ主要諸元
●全長×全幅×全高=4740×1930×1590mm
●ホイールベース=2875mm
●車両重量=1900kg
●エンジン= V6DOHCツインターボ
●総排気量=2996cc
●最高出力=390ps/6100rpm
●最大トルク=520Nm/2500-5000rpm
●駆動方式=4WD
●トランスミッション=9速AT
●車両価格(税込)=995万円