トルセンLSDと後輪操舵の効果は大きい
今回の試乗車のトランスミッションは6速の「EDC（エフィシェントデュアルクラッチ）」。6速MTの設定もあるが、EDCはサーキットでどんな走りをみせるのだろうか。
最初は慣らしも兼ねてR.S.モードはノーマルで走ってみる（その他にスポーツとレースがある）。アクセルペダルをジワリと踏み込んでみるが、加速は想像以上に強い。まだ攻めきる前だが、早くもその片鱗を見せ始めた。
乗り心地をチェックするために、縁石の凹凸を通過してみるが、タタンっという軽やかな感じで走り抜け、不快な突き上げは感じない。これには4輪ハイドロリックコンプレッションコントロール（4HCC）と呼ばれるラリーで採り入れたダンパー制御技術が効いているようで、路面の突起を通過する時の上下動をダンパーがしっかりと吸収してくれていることがよくわかる。
2周目はスポーツモードに切り替え、マニュアルモードでパドルシフトを駆使しながら若干ペースを上げてみる。限界ギリギリまで攻めているわけではないが、非常に気持ち良くコーナーを駆け抜けていく。なぜかアンダーステアが出ないのだ。
これには「4コントロール」と呼ばれる4輪操舵システムが効いていると思われる。そう、このクルマは後輪も操舵する。60㎞ /h未満の低速では走行時は後輪を前輪と逆位相に切り、旋回性を向上させてくれるのだ。4輪操舵は制御が複雑なために不自然な挙動が出て、逆に運転しにくいことも多いが、このモデルはそんな動きは皆無で、自然なフィーリングでスポーツドライビングを楽しめる。
3周目からはレースモードにスイッチ。全開で攻め込んでみる。通常、FF車だと旋回初期からアクセルをオフ、クルマの向きが変わるまで待ってジワリとアクセルオンという流れだが、あえてイジワルをして早めのアクセルオンをしてみるが、グイグイ加速しながら、想像以上に曲がってくれる。
これにはトルセンLSDが功を奏しているようで、アクセルのオンオフをうまくコントロールすれば、ハイパワーなFF車とは思えないほど意のままのコーナリングを可能にしてくれる。
たっぷり全開走行を堪能したあと、パドックで待ち構えていたカメラマンにひと言、「久しぶりに欲しいクルマが出てきちゃったかも」。このパフォーマンスで499万円という価格設定も私をその気にさせた理由かもしれない。（文：加藤英昭／新刊ムック「Motor Magazine 輸入車年鑑 2020」より）
ルノースポールが手がけたハイパフォーマンスモデル「メガーヌ ルノースポール（R.S.）」の中でも、さらに運動性能に磨きをかけられたのが「トロフィー」。
ルノー メガーヌ R.S. トロフィー 6速EDC仕様 主要諸元
●全長×全幅×全高：4410×1875×1435mm
●ホイールベース：2670mm
●車両重量：1470kg
●エンジン：直4DOHCターボ
●排気量：1798cc
●最高出力：300ps／6000rpm
●最大トルク：420Nm／3200rpm
●トランスミッション：6速DCT
●駆動方式：FF
●WLTCモード燃費：12.4km／L
●車両価格：499万円
