ゴルフ カブリオレの後を担う
マーケットを見回してみると、「SUVとオープンモデル」の組み合わせはあまり反応が良くないようである。かつてBMWが初代X5(E53)で試作車を作ったが市場性が見えず、時期尚早ということで市販化を断念した。
その後、日産が2011年からムラーノ クロスカブリオレを北米で発売したがまったくといっていいほどに振るわず、15年には生産が中止されている。そして現在では、唯一のモデルとしてレンジローバー イヴォークにカブリオレモデルが残っているが、その販売台数はあくまでニッチの域を出ていない。
それでもフォルクスワーゲンがオープンSUVを発売したのは、皮肉なことに一般的なオープンモデル市場がシュリンクしていることにある。オープンモデルの販売台数は年々減少する一方で、ドイツ市場では2007年からの15年間でおよそ70%が市場から消滅した。そこでフォルクスワーゲンでは、ゴルフ カブリオレをカタログから落とすことを決定した。
しかし、この市場はゼロになったわけではなく、オープンモデルに対するニーズは、ニッチではあるものの、まだある程度は残っている。そこでフォルクスワーゲンは、販売好調のSUV、Tロックにオープンモデルを追加することを決定したのだ。
十分以上の快適性。シートレイアウトは2+2
こうした背景で登場したTロックカブリオレのサイズは、全長4268mm、全幅1811mm、全高1522mm。ホイールベースは40mm伸ばされており、全長はクローズドモデルより長い。
しかしリアコンパートメントはルーフの収納メカニズムがボディサイド両側から迫っており、大人ふたりが座るにはきつく、せいぜい子供ふたり分のスペースだが、ヘッドルームは十分に残されている。またラゲッジルーム容量は284Lで、大人4人の長期間旅行には不十分ではあるものの、キャビンバッグであれば何とか4個分のスペースが確保されている。
車重は1524kgと、同仕様の標準ボディ車(1350kg)より174kgも重くなる。それでも、最高出力150psと最大トルク250Nmを発生する1.5L直列4気筒ターボエンジンに7速DCTの組み合わせで、0→100km/hを9.6秒で加速、最高速度は205km/hと、十分以上な性能を発揮する。
インテリアは、ドライバー正面に10.2インチサイズのバーチャルコクピット、そしてダッシュボード中央には8インチのタッチパネル装備と標準車と同一で、スマホでのAndroid AutoやApple CarPlayとのコネクティビティも完備している。
市街地からアウトバーンまでのダイナミック性能は、必要にして十分。アクセルペダルの動きにキビキビと反応して加速すると同時に、シャープで素晴らしいハンドリングを発揮してみせた。それを支えるのはしっかりとしたボディ剛性で、コーナーでもクローズドボディと変わらないドライビングフィールだった。
また悪路においても、ボディの建て付けに緩さを感じることはなかった。 キャンバス製のルーフを閉じた状態ではクローズドボディよりもかえって静かなほど。耐候性はもちろん十分以上で、年間を通じて使用可能な印象だった。また230km/hまでならば、走りながらでもルーフを開けることができる。さらにその所要時間はわずか10秒とサンルーフ並みに簡単なので、素早くオープンエアドライブを満喫することができる
最後に、本国におけるこのテスト車の価格だが、オプション込みでおよそ3万2000ユーロ(約380万円)。つまり、一台二役で、クローズドボディにはできないライフスタイルをエンジョイするためには、標準ボディ車に6000ユーロ(約380万円)ほどのエクストラコストが必要、となる。なお、Tクロスが先行して発売されている日本への導入時期や価格については、まだ未定である。(文:木村好宏)
■フォルクスワーゲン Tロック カブリオレ 1.5TSI スタイル主要諸元
●全長×全幅×全高=4268×1811×1522mm
●ホイールベース=2630mm
●車両重量=1524kg(EU準拠)
●エンジン= 直4DOHCターボ
●総排気量=1498cc
●最高出力=150ps/5000-6000rpm
●最大トルク=250Nm/1500-3500rpm
●駆動方式=FF
●トランスミッション=7速DCT