さらにMINIらしく!との想いが伝わるデザイン
「オリジナルからオリジナルへ」、これが、新型MINIのエクステリアデザイン開発の基本コンセプトであると言う。振り返れば、歴史と伝統に育まれてきた往年のオリジナル・ミニのデザインキューを巧みにアレンジし、吟味を重ねた末にスタイリングを完成させたのが2001年に登場した現行モデル。
すなわち、40年以上の時を経て復活を遂げた現行モデルも、すでに前述のコンセプトに基づいて生み出されたモデルだったのだ。この「オリジナルからオリジナルへ」というキーワードは、この先も決して揺らぐことのない、『MINI』というクルマづくりの大前提となるに違いない。
というわけで、うっかりすると見過ごしそうになるほどに見た目のイメージを踏襲したエクステリアに対し、インテリアのルックス変更はさすがにそれより大規模だ。
インテリアで最大の見せ場であるセンター配置のスピードメーターをさらに大型化したり、特徴的なデザインのトグルスイッチをルーフライナー部分にも設定したりしたのは、いずれも「MINIらしさをより強調したい」という開発陣の願望の現われと感じられる。
いずれにしても、世界のマーケットから大好評をもって受け入れられた現行モデルのイメージを強く踏襲しつつ、同時に「もっとMINIらしく!」という思いが強く込められているのが新型MINIのルックスであると言って良いだろう。
一方で新型MINIのデザインを決定したのは、そうしたイメージ的な要因のみではないだろう。BMWのMINIを成功に導いた現行モデルのユーザーの声に応え、現行モデルが誕生後の5年という時の流れが生み出した時代の要請に対応することも、新型のデザイン開発には必須の要件であったということだ。
新型の全長は現行モデルよりも6cmほど長く、うち4cmほどを「エンジン寸法の変更と従来よりも厳しくなった安全基準のためにフロントセクションに使用」とBMWは発表する。
が、未確認ながら恐らくそんな全長アップ分の幾ばくかは、後席足元空間の延長にも用いられるのではないだろうか。そう、現行MINIの居住空間は、端的に言って「後席足元スペースがかなりタイト」。MINIらしいルックスを実現させつつ居住性を向上させるのも、もちろん技術の進歩の成せる技だ。
ところで、新型のクーパー/クーパーSには、完全新開発の1.6Lエンジンが搭載される。そして実は、ハードウエアではそれこそが新型MINIの最も注目すべきニュースと言えるかも知れない。
現行MINIが搭載するのは、かつてはBMW傘下にあった旧ローバーが旧クライスラーとの共同開発で誕生させたブラジル製のエンジン。しかし、新型ではそうした過去のしがらみを清算すべく、念願のBMW製ユニットが積まれることになる。正式には「BMWとPSAグループとの共同開発による4気筒エンジン」と報じられるそんな新しいエンジンは、しかし実質的な開発を行ったのはオールBMWであるという。
言うまでもなく、航空機のエンジン開発メーカーに端を発するBMWは、パワーユニットに対して並々ならぬこだわりを抱くブランド。それゆえ、現行モデルに「自らの息がかからぬ心臓」を搭載していることは、おそらく内心忸怩たる思いがあるに違いない。そんな積年のわだかまりを一気に解消する新開発エンジンが一体どのようなパワーフィールを味わわせてくれるかも、新型MINIでの大きな注目点だろう。(文:河村康彦/Motor Magazine 2006年11月号より)
MINI クーパーS 主要諸元
●全長×全幅×全高:3714×1683×1407mm
●ホイールベース:2467mm
●車両重量:1580kg(DIN)
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1598cc
●最高出力:175ps/5500rpm
●最大トルク:240Nm/1600-5000rpm
オーバーブースト時は260Nm/1700-4500rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FF
●最高速:225km/h
●0→100km/h加速:7.1秒
※欧州仕様