クルマ好きなら一度は憧れたことがあるだろうスーパーカー。その黎明期から現代までをたどる連載企画。第105回は「アストンマーティン ヴァルキリー」だ。

アストンマーティン ヴァルキリー(2017年ー)

画像: フロントに内蔵されたウイングはF1マシン並みに大型のもの。コクピットの両側には巨大なベンチュリートンネルも備える。

フロントに内蔵されたウイングはF1マシン並みに大型のもの。コクピットの両側には巨大なベンチュリートンネルも備える。

2016年、アストンマーティンはF1グランプリに参戦しているレッドブル レーシングとコラボレーションし、スーパーカーを超えた「ハイパーカー」の共同開発を始めると発表。「AM-RB 001」というコードネームで開発プロジェクトが進められた。

2017年のジュネーブ モーターショーでお披露目されたAMーRB 001の実車には、「ヴァルキリー(Valkyrie)」という車名が与えられた。その名は、北欧神話に登場する、戦死した英雄の魂を導くという半神半人のワルキューレ(ヴァルキュリャなどとも呼ばれる)の英語読みだ。ヴァンテージやヴァンキッシュなど、アストンマーティンは伝統的に特別なモデルに「V」で始まる車名を付けており、このヴァルキリーもそれに倣っている。

アストンマーティン側ではDB11や現行ヴァンテージなどのデザインを手がけたチーフ クリエイティブ オフィサーのマレック・ライヒマンが、レッドブル側ではチーフ テクニカル オフィサーであるエイドリアン・ニューウエイが責任者として、ヴァルキリーの共同開発にあたった。

F1界で「空力の申し子」と呼ばれたニューウエイがデザインしたヴァルキリーのスタイリングは、フロントに内蔵したウイング、コクピット両側の巨大なベンチュリートンネルなど、徹底的にエアロダイナミクスを追求したものとなっている。詳細なスペックは発表されていないが、ボディやシャシにCFRP(炭素繊維強化プラスチック)をはじめ、チタンやマグネシウム合金といったハイテク素材を多用することにより、車重は1000kgにおさえられている。

画像: コクピット背後には6.5LのV12エンジンとハイブリッドシステムが搭載され、システム全体で1176psと900Nmを発生する。

コクピット背後には6.5LのV12エンジンとハイブリッドシステムが搭載され、システム全体で1176psと900Nmを発生する。

ミッドシップ搭載されるパワーユニットは、レーシングエンジン コンストラクターとして有名なコスワース社が手がけた6.5Lの65度 V型12気筒DOHCが搭載され、パワースペックは最高出力が1014ps/10500rpm、最大トルクが740Nm/7000rpmという、数値も発生回転数もレーシングエンジン並みのもの。さらに、F1で採用されたKERS(運動エネルギー回生システム)を組み合わせたハイブリッドとし、システム最大出力は1176ps、最大トルクは900Nmに達するという。

ドアはなく、サイドウインドーをガルウイング式に開いて乗り込むコクピットにはカーボンをふんだんに採用。運転席はフロアに直接設置され、メーターや操作系はステアリングにビルトインされるなど、かなりレーシングカー的だ。軽量化と空力性能向上のため、フロントノーズ先端に付けられたアストンマーティンのウイングバッジは、厚さわずか70ミクロンのアルミ製で化学的に溶着されている。

ヴァルキリーのロードモデルは150台が生産され、そのうち11台が日本に導入される予定だ。だが、既に150台のオーナーは決まっている。イギリス本国での価格は、ボディカラーや内装のマテリアルなどカスタマイズによって、200万〜250万ポンド(当時のレートで約2億8000万〜3億5000万円!)。

また、FIA 世界耐久選手権(WEC)に新たに導入される「ハイパーカー クラス」に、アストンマーティンはヴァルキリーでの参戦を計画している。

画像: リアの大型ウイングやディフューザーなど、空力性能を追求したスタイル。テールランプもLED製の軽量小型のものを採用している。

リアの大型ウイングやディフューザーなど、空力性能を追求したスタイル。テールランプもLED製の軽量小型のものを採用している。

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