クルマ好きなら一度は憧れたことがあるだろうスーパーカー。その黎明期から現代までをたどる連載企画。第113回は「メルセデスAMG ONE」だ。

メルセデスAMG ONE(2019年−)

画像: ドアはAピラーにヒンジを備えたバタフライ式。空力性能を重視してリアエンドはロングテール化されている。

ドアはAピラーにヒンジを備えたバタフライ式。空力性能を重視してリアエンドはロングテール化されている。

2017年のフランクフルト モーターショーで、メルセデス・ベンツはAMGの創立50周年を記念して、メルセデス初のハイパーカーのコンセプトモデル「メルセデスAMG プロジェクト ワン(Project One)」をワールドプレミアさせた。このモデルは、同年の東京モーターショーにも出展されたので、実車を目にした読者諸氏も多いことだろう。

メルセデス・ベンツとAMGの関係は、既にこの連載で何回か紹介しているのでここでは省略するが、プロジェクト ワンを発表した段階で、メルセデスAMGはF1グランプリにおいて、3度のワールド ドライバーズチャンピオンとコンストラクターズ チャンピオンの座を手中にしていた。そこで、F1の最新テクノロジーを投入したハイパーカーを製作するという彼らの夢を、現実のものにさせた。

2シーターのコクピット後ろにミッドシップ搭載されるエンジンは、F1由来の排気量がわずか1.6L(1600cc)のV6 DOHC24バルブで、シングルターボを装着。だが、前後に4基のモーターを組み合わせたハイブリッドシステムを採用し、エンジンとモーターにより4輪を駆動する。後輪の最高出力は500kW以上とされているが、前輪の最高出力は左右それぞれで120kW(×2だから240kW)、システム全体での最高出力は740kW以上(1000ps以上)を発生する。

リアのエンジンにはAMGスピードシフトと呼ばれる8速の2ペダルMTを組み合わせ、フロントのモーターは左右別々に駆動力を配分することで、コーナリング性能を高めている。最高速度は350km/h以上、0→200km/h加速は6秒以下とパフォーマンスは公称されている。また、モーターのみで25kmの走行も可能とされている。

画像: ステアリングにはオーディオやクルーズコントロールなど、さまざまなコントローラーを内蔵。

ステアリングにはオーディオやクルーズコントロールなど、さまざまなコントローラーを内蔵。

2018年、メルセデスAMGはプロジェクト ワンの市販モデルの車名を「メルセデスAMG ONE(ワン)」と発表した。2019年には、ここで紹介している最終プロトタイプの画像も発表され、販売台数は世界限定で275台、デリバリーは2021年ごろとアナウンスされている。

シルバーメタリックのフロントノーズにスリーポインテッドスターが輝く、レーシングプロトタイプ風のスタイルは、1990年代のWEC(世界耐久選手権)で活躍したC11をも彷彿とさせる。いかにも空気抵抗の少なそうなボディは、フロントフェンダー上の可動式ルーバーとリアの大型2段式ウイング(これも可動式だ)も特徴的だ。

インテリアは最新のメルセデス車に見られるようなワイドディスプレイがメーター用とセンターダッシュのインフォメーションディスプレイ用に備わる。シートは固定式で、ドライビングポジションはステアリングとペダルをスライドさせて調整する。ハイパーカーとはいえ、エアコンやオーディオなど、快適装備が充実しているのはもちろんだ。

F1マシンを2シーター化して公道走行を可能にしたようなメルセデスAMG ONE。価格は280万ドル(当時のレートで約3億1500万円!)と言われているが、例によって限定生産の275台は既に完売しているようだ。

画像: リアエンドの大型2段ウイングは可動式。リアウインドー上にはル・マン プロトタイプのような垂直フィンも装着されている。

リアエンドの大型2段ウイングは可動式。リアウインドー上にはル・マン プロトタイプのような垂直フィンも装着されている。

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