2006年、フリーランダーが2代目へと進化、レンジローバーのDNAを持つオフロードの走破性能とオンロードの動力性能に磨きをかけて、フリーランダー2として登場している。都会派コンパクトSUVとして人気を集めることになるフリーランダー2は、デビュー時、どのような評価を受けていたのだろうか。2006年に開催された国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年2月号より)

4WDシステムはハルデックスカップリングで駆動

価格競争力に優れた日本車を中心に激戦区を形成しているコンパクトSUV市場にあって、1997年に投入された初代フリーランダーは、欧米においてはランドローバーのエントリーカーという後ろ支えを受けながら確実に市場の一角を担ってきた。

が、そんな当時と今とでは市場の状況がかなり異なってきていることは間違いない。原油高を引き金とした今後の社会情勢もあれば、BMWのX3を先達に、フォルクスワーゲン・アウディグループがこのカテゴリーへ参入することも噂されていたりもする。そんな中でランドローバーにとって、フリーランダーをより上方に位置づけることは、商売的な見地からも必然だったといえるだろう。

この秋に欧州で発売を開始したフリーランダー2は、その造り込みもパフォーマンスも、今までの位置づけから明らかに一歩上を行くクラスへとシフトしている。日本での価格も恐らく400万円近辺からの設定になるだろうと予想されており、囁かれるコンパクト&プレミアムSUVの来るべきブレイク?に対して先手を打つカタチとなった。

それと同時に推し進められたのはPAGグループ内での生産の高効率化であることは間違いない。フリーランダー2のエンジンは、ボルボがS80の発表に合わせてデビューさせた新開発の直6の3.2L。それを横置きで搭載し、ハルデックスカップリングで駆動させるという4WDドライブトレーンを採用している。

そう聞けばコアなオフロードファンには、ランドローバーの名前に相応しくない妥協と受け取られるかもしれない。もちろん彼らもそういう意見があるのは承知の上で、これらのコンポーネンツを徹底的にランドローバースペックに鍛え上げている。

たとえばエンジンはその特性を自らの走行ステージに合わせて最適化させるために、開発段階からランドローバーのエンジニアが逐一携わったという。

また、4WDシステムに関してもハルデックスに対して厳しいランドローバースペックを要求した結果、専用の高圧作動ポンプを開発したことによってレスポンスを従来のカップリングに比べて4分の1、車輪が15度空転した時点で駆動を配分させるところまで短縮させているという。ちなみに組み合わされるミッションはアイシンAWの6速ATだ。

画像: フリーランダー2はJDパワーのヨーロッパ工業品質金賞を受賞した高い生産技術を誇るリバプールにあるヘイルウッド工場で生産される。

フリーランダー2はJDパワーのヨーロッパ工業品質金賞を受賞した高い生産技術を誇るリバプールにあるヘイルウッド工場で生産される。

SUVとして異例となる視界の良い運転環境

その名に相応しいオフロードパフォーマンスをアシストするシステムは、先にディスカバリー3で初採用された「テレインレスポンス」だ。

DSCやトラクションコントロール、ヒルディセントなどを協調させ、各輪を電子統合制御しながらギアポジションやエンジンマネジメントとも連携するこの緻密なブレーンは、フリーランダー2に前型を上回る悪路走破性をもたらした。

ちなみにこのシステムは2007年度以降のレンジローバーにも搭載が予定されるなど、もはやランドローバーのコアテクノロジーと化した感がある。フリーランダー2に設定されるのは、通常時、泥粘地や砂地、草や砂利、雪といった4つのシチュエーションで、ドライバーに課せられるのは走行シーンに応じてセンターコンソールのセレクターノブを各々に合わせるだけだ。

前型に比べれば内装まわりの質感は劇的に向上した一方で、ダッシュボードやベルトラインを低く抑え込むことによって、フリーランダー2はこの種のクルマとしては異例に視界の良い運転環境を実現している。

直6を横置きする関係もあって前型に比べれば特に車幅は拡大しているものの、独自のボンネット形状によって車幅感覚もつかみやすい。これはフリーランダーのみならず、ランドローバー各車に共通した美点で、当然のことながらオフロードでの路面状況把握にも有利に働くものだ。

前型でもモデル末期にかけてはかなりの線に達していた運動性、そして快適性といったオンロードパフォーマンスは、間違いなくフリーランダー2のもっとも進化したポイントだろう。もちろん動力性能は排気量の拡大分以上に向上しているから、高速道路でも山道でも、まったくストレスを感じることなくアクティブなドライビングが愉しめる。そういった走りの中での燃費も車載計を見ている限り6〜9km/Lと、前型よりは確実に向上していそうだ。

その走りを支えている強烈なボディ剛性の高さは、もちろん悪路での絶大な信頼感に繋がってくる。サンドやぬかるみといった些細な操作に気遣うような場面でも、テレインレスポンスによる淀みのない駆動コントロールがサポートしてくれるおかげで何ら気を遣うことはなく、そのぶんドライバーはステアリングの操作に集中できるわけだ。類似するデバイスは他社にもあれど、そのきめ細かなプログラムには膨大な悪路の経験値が確実に働いている。

ランドローバーは自らのプライオリティを高めるために、その経験値をユーザービリティに転化しようとしている、それがよくわかる仕上がりだった。(文:渡辺敏史/Motor Magazine 2007年2月号より)

画像: SUVとして異例となる視界の良い運転環境

ヒットの法則

ランドローバー フリーランダー2 i6 主要諸元

●全長×全幅×全高:4500×1910×1740mm
●ホイールベース:2660mm
●車両重量:1770kg
●エンジン:直6DOHC
●排気量:3192cc
●最高出力:233ps/6300rpm
●最大トルク:317Nm/3200rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
※欧州仕様

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