
※広告写真提供/ライトパブリシティ

1972年9月に市販開始された4代目スカイライン、通称“ケンメリ”。(写真は2ドアハードトップだが)4ドアセダンは“ヨンメリ”と呼ばれることもある。
「優しさの時代」を巧にとらえた名コピーとともに誕生したC110型スカイライン
1957年に誕生したスカイラインは現行モデルで13代目。1955年に誕生したトヨタのランドクルーザー、クラウンに次ぐ現行国産車では3番目に古い歴史をもつGTカーの草分けだ。
そんな歴代スカイラインの中でも、もっとも売れたのが1972年9月に市販が開始された4代目のC110型、通称「ケンメリ」である。その数は64万台(およそ200台が生産されたGT-Rを含む)を優に超え、先代モデルとなるC10型の2倍近くに達した。

東京・銀座の日産ギャラリーにて。世代を超えて新たなスカイライン・ファンを獲得した“ケンメリ”は、まさにあの時代を象徴していた。
なぜ、そんな売れたのか。ハードウエアとしての魅力的だったのはもちろんだが、時代の空気を確実にとらえた巧みなマーケティング戦略によるところが大きい。
当時、スカイラインの広告は、東京・銀座にあるライトパブリシティという広告代理店が手掛けていた。同社にはコピーライターの草分けである秋山晶を始め、浅葉克己、和田誠など著名なアートディレクターや、篠山紀信、ホンマタカシらの巨匠と呼ばれるフォトグラファーが在籍していた。すでに3代目C10型で“愛のスカイライン”というコピーを打ち出していたが、レースでの活躍に象徴されるように硬派で精悍なイメージが付きまとっていた。

先代モデルとなるGC10型スカイライン。通称“ハコスカ”は「愛のスカイライン」という優しげなキャッチフレーズで登場したが、レースでの活躍により硬派で戦闘的なイメージが定着していた。
そこで一転、4代目C110型デビューにあたっては、“愛の〜”というコピーは継承しつつ、新たに「ケンとメリーのスカイライン」というキャッチフレーズを編み出し、これを軸に広告展開を図ったのだ。硬派から軟派へ〜それは硬派を気取る若者だけでなく、さまざまな年代層に新たなファンを獲得したのだ。

C110型スカイライン発表直後の新聞広告より。ケンとメリーのロゴマークはまだ控えめ(?)だった。※広告写真提供/ライトパブリシティ
ノベルティのTシャツは32万枚以上も制作された
広告ビジュアルには、相合傘のシンボルマークとともに若いカップル=ケンとメリーが登場(初代ケン&メリーは陣内たけしとダイアン・クレイ、二代目〜は前田俊彦とテリー・ミラー)。テレビCMではこの2人が全国をC110スカイラインで旅をするロマンチックなストーリー性が話題となり、都合16作が制作された。ちなみに第15作目のロケ地に選ばれた北海道美瑛にはCMに登場した“ケンメリの木”はいまも健在で、観光名所になっている。CMソングに起用されたBUZZの「ケンとメリー〜愛と風のように」はヒットチャートを駆け上がり30万枚を超える大ヒットとなった。

北海道美瑛に現存する「スカイラインの木」。CMが撮影されたのは50年近く前なので木はずいぶん成長しているが,今も人気の観光スポットとなっている。
また本来は販売促進用にノベルティとして制作・販売されたTシャツは、あまりの人気に一般向けにも販売されるようになり、一説には32万枚以上が生産されたという。
学生運動の嵐が吹き荒れ騒然とした60年代が去り、人々は安らぎと優しさを求めるようになっていた。「優しさの時代」を的確に捉えたケンメリは、優れた「商品」であったのだ。
