今から20年ほど前、新しい世紀に変わる頃。クルマに対する考え方も変わり始めていた。そんな時代のニューモデルのインプレッションを、当時の写真と記事で振り返ってみよう。今回はマツダ トリビュートだ。

マツダ トリビュート(2000年)

画像: ブラック樹脂製のフェンダーアーチや幅広のサイドプロテクションモールなど、けっこうヘビーデューティなイメージ。

ブラック樹脂製のフェンダーアーチや幅広のサイドプロテクションモールなど、けっこうヘビーデューティなイメージ。

2000年11月に発売されたマツダの新型SUV、トリビュートは、当時マツダの親会社であったフォードとの共同開発で誕生したモデルだ。したがって、アメリカ市場ではフォード・エスケイプ、ヨーロッパ市場でもフォード・マーベリックの名で発売される。いずれも右ハンドル車はマツダの防府工場で、左ハンドルはフォードのカンザスシティ工場で生産される。つまり、2000年中には日本で発売される予定のフォード・エスケイプは日本製ということになる。

ほぼ同時期の2000年秋に発売された日産のエクストレイルも同じようなライト感覚のSUVだが、トリビュートのスタイルはエクストレイルとは雰囲気がかなり異なる。ボンネットやドアパネルにプレスラインを入れ、力強くヘビーデューティなイメージだ。これはやはり、親会社であるフォードのSUVの影響を受けているのだろうか。最上級グレードのGL-Xが採用している2トーンのボディカラーも悪くない。

だが室内に乗りこむとインテリアのイメージは一転、ソフトでミニバンライクなものだ。ATはコラムシフトを採用しているのだが、パーキングブレーキはフロントシートの間にあるレバー式なのが少し違和感を覚えた。が、これは左右両ハンドルの仕様に対応させるためだろう。まあ、慣れの問題でもある。

メーターパネルの下側に配されたATのインジケータは少し見にくいのだが、それ以外はコクピットでのメーター類の視認性やスイッチ類の操作性は悪くない。世界規格のおかげで4395mmという比較的コンパクトな全長ながら1800mm前後の余裕ある車幅のため、室内はけっこう広い。リアゲートにはガラスハッチを備え、座面取り外し可能な分割可倒式リアシートなどで、カーゴスペースの使い勝手は高い。このあたりも、フォードの影響を受けているのが分かる。

画像: ATはコラムシフトだがパーキングブレーキはレバー式。外観ほどインパネまわりにヘビーデューティなイメージはない。

ATはコラムシフトだがパーキングブレーキはレバー式。外観ほどインパネまわりにヘビーデューティなイメージはない。

今回は、2.0Lの直4と3.0LのV6、両方のエンジン搭載車に試乗することができた。試乗コースは小淵沢から清里に至るアップダウンもある中速のワインディング路。トリビュートに搭載されているエンジンはいずれもフォード製で、日本のものほどノイズや振動に関しては洗練されてはいない。直4エンジン搭載車だけに乗っていれば「こんなものだろうな」と思えたパワーフィールも、やはりV6エンジン搭載車に乗ってしまうと歴然とした差、とくに低速域から厚みのあるトルクのおかげで走りやすい。

SUVのようなレジャービークルでは、人や荷物をたくさん積んで高速移動の機会が多いもの。こうしたジャンルのクルマでは、余裕のある走りを楽しめたほうがいいにこしたことはない。しかしハンドリング面では、直4エンジン搭載車は1500kg前後の車重とは思えないほど軽快なのだが、V6エンジン搭載車はどうしてもハナの重さを感じさせられてしまう。

ソフト志向の日産エクストレイルに続き、ライトSUVのマーケットに参入したマツダ・トリビュートは、むしろハード志向のマジメな作りが売りのようだ。特にV6の走りは余裕すら感じる。いかにもマツダらしい、真面目に作られたトリビュート。抑えめの価格も相まって、静かなブームを呼ぶかもしれない。

画像: リアルーフスポイラー、サイドステップバー、アクリルバイザー、マッドフラップなどはオプションとなる。

リアルーフスポイラー、サイドステップバー、アクリルバイザー、マッドフラップなどはオプションとなる。

■マツダ トリビュートGL-X 主要諸元

●全長×全幅×全高:4395×1790×1825mm
●ホイールベース:2620mm
●車重:1510kg
●エンジン形式:V6・4バルブDOHC
●排気量:2967cc
●最高出力:149kw(203ps)/6000rpm
●最大トルク:265Nm(27.0kgm)/4700rpm
●ミッション:4速AT
●タイヤ:235/70R16
●当時の価格:254万8000円

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