2020年8月2日、F1第4戦イギリスGPの決勝レースがシルバーストンサーキットで開催され、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンが最終周に5.8秒差まで追い上げて2位表彰台を獲得した。さらに、スクーデリア・ホンダのピエール・ガスリーが7位、アレクサンダー・アルボンが8位に入賞し、ホンダ勢は3台がポイントを獲得した。レース終盤に見事な追い上げを見せたホンダ勢だが、レースでなにが起きていたのか、ホンダ勢のコメントをもとに振り返ってみよう。

波乱含みの展開の中、レース終盤に見せ場

レースはオープニングラップの最終コーナーで、アルボンとケビン・マグヌッセン(ハース)が接触し、早くもセーフティカー導入となる。アルボンはこのセーフティカー出動が明けた直後の7周目にピットインし、ハードタイヤに交換。ここからロングスティントを目指す戦略をとるが、接触によって5秒加算のタイムペナルティが科されることに。

一方、2台のアルファタウリは、ポイント圏内が目前となる位置で走行していたが、12周目にクビアトがクラッシュ。高速コーナーのマゴッツからベケッツにかけてのセクションでマシンのコントロールを突然失った。

これによって再びセーフティカーが導入されると、このタイミングで各車ピットへ入り、ハードタイヤに交換。ここからチェッカーフラッグまで走りきる戦略だ。ただこれがその後のレース展開に大きな影響を与えることになる。

先にタイヤ交換を済ませていたアルボンは、30周目に2度目のピットインを行い、ミディアムタイヤに交換するとともにタイムペナルティを消化して戦列に復帰。他車とは異なるタイヤのスケジュールとなっていく。

11番手を走行していたガスリーは、レース終盤にかけて見事な追い上げを見せる。フェラーリのセバスチャン・ヴェッテルの背後につけてストウコーナーで外側からオーバーテイクに成功すると、その後のターン1でランス・ストロール(レーシングポイント)もパスして、9番手までポジションを挽回。

その後方にいたアルボンも、ヴェッテルとストロールをかわして10番手に。また、フェルスタッペンはメルセデスの2台には差をつけられていたものの、後続を大きく引き離し、単独の3番手で最後の3周に入る。

画像: 第4戦イギリスGPの各ドライバーのタイヤ戦略。ほとんどのドラーバーが12〜13周目にタイヤを交換して、残り40周をハードタイヤで走り切る戦略を選択。これが終盤ドラマを生み出すことになる。

第4戦イギリスGPの各ドライバーのタイヤ戦略。ほとんどのドラーバーが12〜13周目にタイヤを交換して、残り40周をハードタイヤで走り切る戦略を選択。これが終盤ドラマを生み出すことになる。

画像: 第4戦イギリスGP決勝レース前にピレリタイヤが推奨していたタイヤ戦略。セーフティカー導入のタイミングにより、想定よりタイヤ交換の時期が少し早くなっていた。ピレリはハードタイヤで28周から34周の走行を想定していたが、実際には40周近くを走ることになった。

第4戦イギリスGP決勝レース前にピレリタイヤが推奨していたタイヤ戦略。セーフティカー導入のタイミングにより、想定よりタイヤ交換の時期が少し早くなっていた。ピレリはハードタイヤで28周から34周の走行を想定していたが、実際には40周近くを走ることになった。

ここから、レースはドラマテックな展開になっていく。ここでフェルスタッペンの前方を走行していたバルテリ・ボッタス(メルセデス)が左フロントタイヤをパンクさせてスローダウン。フェルスタッペンは2番手の座を手に入れると、後方との差も十分だったことから、ソフトタイヤに交換してファステストラップを目指すとともにタイヤを万全な状態にする。

こうしてファイナルラップに入った瞬間、首位を行くルイス・ハミルトン(メルセデス)にもパンクが発生してスローダウン。約30秒差で2番手につけていたフェルスタッペンは、ファステストラップをマークしながらその差を詰めるものの、捉える一歩手前でチェッカーフラッグとなり、2位でフィニッシュした。

また、カルロス・サインツ(マクラーレン)の左フロントタイヤにも同様にパンクが発生し、ガスリーとアルボンがポジションアップ。一度は後方でのレースを強いられた2人だったが、見事な追い上げで、それぞれ7位、8位でのフィニッシュを果たすことになった。

今回のレース結果について、ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターは「レッドブルのフェルスタッペン選手が安定した走りを見せ、2位でフィニッシュし、3戦連続となる表彰台を獲得しました。ライバルがトラブルを抱えたレース最終周にはトップに詰め寄るエキサイティングな展開となりました。最終的には2位で終わりましたが、高速サーキットでこの成績を得られたことは前向きにとらえています。7位に入賞したアルファタウリのガスリー選手も素晴らしいオーバーテイクを見せて、ポイント獲得を果たしました。序盤の接触により苦しい展開になったレッドブルのアルボン選手は、チームのタイヤ戦略が功を奏し、終盤に素晴らしいペースでいくつものオーバーテイクを見せました。アルファタウリのクビアト選手は、トラブルにより突然マシンのコントロールを失いクラッシュを喫し、唯一のリタイアとなりました。いいペースを見せていただけに残念です。セーフティカーの導入や終盤のタイヤトラブルなど、波乱含みの展開ではありましたが、予選結果を大きく挽回して3台が入賞できたことは、この先のシーズンに向けてポジティブな結果だったと思っています」とコメント。ドライバーは次のように語っている。

マックス・フェルスタッペン

画像: マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)。タイヤに厳しい状況の中で、うまくレースをコントロール。ファステストラップも記録、できることをきっちりとこなした。

マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)。タイヤに厳しい状況の中で、うまくレースをコントロール。ファステストラップも記録、できることをきっちりとこなした。

「勝利の可能性があったのだから、ソフトタイヤに履き替えるためにピットインすべきではなかったと言われるのは分かります。後からこういうことを言うのは簡単ですが、僕は全く後悔していませんし、ファステストラップを狙ってピットストップを行ったのは正しい決断だったと信じています。僕にもパンクの可能性はありましたし、現代のF1でこのようなことが起こるのは非常に稀ですから、僕らの行動は正しかったと思います。メルセデスが勝利を手にしたのは僕らより速かったからですし、ルイス(ハミルトン)がラッキーだったという人もいますが、首位を走行中にパンクを喫するのは不運ですし、ボッタスも同様です。3位が最高の結果かと思われたレースで2位ということに満足していますし、ポイントも稼ぐことができました。メルセデスには一周あたり0.4〜0.5秒離されていましたが、後方のマシンに対しては1秒ほど速いペースだったので、孤独なレースでした。エンジニアに無線で水分補給を忘れないように伝える余裕があったほどです。ほかにできるのは羊を数えることくらいでした。次戦はタイヤ選択が戦略に影響を及ぼすので、かなり違った展開になると思います。メルセデスとの差は冷静に捉えていますが、プッシュし続けていきます」

アレクサンダー・アルボン

画像: アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)。序盤の接触で苦しい展開になったが、ほかのドライバーとは違うタイヤ戦略で猛然と追い上げた。

アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)。序盤の接触で苦しい展開になったが、ほかのドライバーとは違うタイヤ戦略で猛然と追い上げた。

「8位は望んだ結果ではありませんが、マシンにダメージを受けて、さらにペナルティも科されてのものです。ケビン(マグヌッセン)とのインシデントは、50/50だと思います。彼がミスをしてスペースを開けたので、僕はオーバーテイクを試みました。彼が僕のことを見ておらず、スペースを閉めてきたのに気付いて後ろに下がろうとしましたが、接触してしまいました。コーナーの進入スピードの差が大きく、避けられませんでした。この週末は課題が多かったのですが、ベストを尽くしましたし、レースペースは十分あったので巻き返すことができました。シルバーストンは大好きなサーキットなので、またここでレースがあるのはうれしいですし、今回学んだことをフリー走行から活用していけると思います」

ピエール・ガスリー

画像: ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)。終盤、ほかのドライバーがタイヤに苦しむ中、同様に摩耗したタイヤでオーバーテイクを見せた。

ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)。終盤、ほかのドライバーがタイヤに苦しむ中、同様に摩耗したタイヤでオーバーテイクを見せた。

「7位は、僕らにとって素晴らしい結果です。力強いレースができて、僕にとってはベストレースのひとつと言えるかもしれません。この結果は予想以上で、ポイント獲得の可能性はあると思っていましたが、最初のセーフティカーのタイミングが不利に働いたことで、厳しい展開になりそうでした。その時点では12番手で、集団の中でバトルをしていました。タフな戦いでしたが楽しむことができて、ヴェッテル、ストロール、ジョビナッツィと素晴らしいバトルを繰り広げました。セバスチャンに近づくのに苦戦しましたが、一撃でパスしなければならないと覚悟していました。フェラーリをアウトサイドからオーバーテイクするなんて、なかなかないので、心から楽しみました。マシンの感触はよく、どこを改善すべきかも分かっているので、次戦ではさらなる前進ができることを願っています」

ダニール・クビアト

画像: ダニール・クビアト(アルファタウリ・ホンダ)。レースペースは良かったが、突然コントロールを失ってクラッシュ。マシントラブルか。

ダニール・クビアト(アルファタウリ・ホンダ)。レースペースは良かったが、突然コントロールを失ってクラッシュ。マシントラブルか。

「わずかな時間で終わってしまいましたが、とても強いレースができたと思います。スタートはよく、ペースもかなりよかったので、いくつもオーバーテイクをして追い上げていくことができました。いい結果が出せると思っていたところ、突然ターン10でマシンのリアを失いました。普段から、まずは自分に責任があると考えるので、原因は自分だと思いましたが、映像を見返すと僕のコントロールが及ばない範囲で何かが起こっているように見えたので、データをすべてチェックして何が問題だったのかを理解する必要があります。ポイントが獲得できるはずだったので残念ですが、また今週トライしていきます」

一方、タイヤを供給するピレリは劇的な展開となったイギリスGPを振り返って「日曜日の気温は20.9度、路面温度は約40度。土曜日と同様、気温は低く、天候は晴れながら降雨の予報もある中でレースは始まりました。メルセデスAMGのルイス・ハミルトンは、13周目にセーフティカーの下でミディアムタイヤからハードタイヤに切り替えてレースをコントロールしましたが、彼の左フロントレフトタイヤは最終ラップでダウンしました。彼のチームメイトであるバルテリ・ボッタスとマクラーレンのカルロス・サインツも、残り2周のところでタイヤに問題が発生しました。彼らの左フロントタイヤに何が起こったのかを詳細に調査しなければなりません。 今回のレースの詳細な調査は次の週末に非常に貴重な情報になるでしょう」と語っている。

なお、第4戦イギリスGPには、C1コンパウンド(ハード)、C2コンパウンド(ミディアム)、C3コンパウンド(ソフト)。 第5戦70周年記念GPは1ステップ柔らかい、C2コンパウンド(ハード)、C3コンパウンド(ミディアム)、C4コンパウンド(ソフト)が供給されることになっている。

第5戦は8月7日金曜日、70周年記念GPとして同じシルバーストン・サーキットで開幕する。第4戦の結果をふまえて各チームがどういう戦略を立てるか興味深い。

2020年 F1第4戦イギリスGP 結果

優勝 44 L.ハミルトン(メルセデスAMG)52周 
2位 33 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ) +5.856s
3位 16 C.ルクレール(フェラーリ) +18.474s
4位 3 D.リカルド(ルノー) +19.650s
5位 4 L.ノリス(マクラーレン・ルノー) +22.277s
6位 31 E.オコン(ルノー) +26.937s
7位 10 P.ガスリー (アルファタウリ・ホンダ) +31.188s
8位 23 A.アルボン (レッドブル・ホンダ) +32.670s
9位 18 L.ストロール (レーシングポイント・メルセデス) +37.311s
10位 5 S.ヴェッテル(フェラーリ) +41.857s

リタイア 26 D.クビアト(アルファタウリ・ホンダ)

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