速いとそれだけタイヤにも負担がかかる
第4戦に続いてイギリス・シルバーストンで行われる第5戦70周年記念GP。まずシルバーストンサーキットの特徴と、前戦第4戦のレースを確認しておこう。
シルバーストンサーキットは元イギリス空軍の飛行場跡地に建設された「平坦で直線部分が長い」サーキットで、F1カレンダーの中でも随一の高速コースと言われている。イギリス特有の気まぐれな天候で、これがしばしばレースを混乱させるが、第4戦では金曜日に気温が上がったものの、土曜日、日曜日は涼しい良好な天候で、心配された雨も降らなかった。むしろドライバーを悩ませたのは「風」で、エアロダイナミクスを追求した現在のF1マシンが突風に弱いことを思い知らされた。
レースはメルセデスAMGの2台、ルイス・ハミルトンとバルテリ・ボッタスが快調に飛ばしたが、残り3周というところでボッタス、最終周にはハミルトンの左フロントタイヤがバースト。ボッタスは入賞を逃し、ハミルトンはなんとかギリギリ逃げ切ることに成功した。
結局、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンがあともう少しで逆転優勝という2位表彰台を獲得したが、ホンダ勢は、予選、決勝とも純粋な速さではメルセデスAMGに水を開けられる形となった。
今週もメルセデスAMGとレッドブル・ホンダの戦いとなっていくと予想されるが、レッドブル・ホンダはメルセデスAMGを逆転できるのか。メルセデスAMGが熱の問題を解決できているのかわからないまま4戦を終えてしまったが、新たにタイヤマネージメントの問題も浮上してきており、イギリス特有の気まぐれな天候などの助けがあれば、レッドブル・ホンダの逆転も十分にありうるだろう。
両チームともそのあたりは分析していると思われるが、第5戦は高温、雨、風、タイヤの摩耗など不確定要素の多いレースとなりそうだ。
第5戦のひとつのポイントは予選だろう。レースに不確定要素が多いため、優勝を狙うためにはできるだけ硬めのタイヤでスタートしたいところだが、それにこだわりすぎるとQ3進出を逃すことにもなりかねない。
チーム戦略という点から考えると、レッドブル・ホンダがメルセデスAMGと互角に戦うためには、アレキサンダー・アルボンの予選順位が重要となってくる。2台でプレッシャーをかけて、メルセデスAMGに思い切った戦略をとらせないようにしたいところだ。できれば2列目4番手以内、悪くとも3列目6番手からスタートしたい。アルボンの予選の走りに注目だ。
メルセデスAMGとレッドブル・ホンダの後ろは混戦模様。第4戦の終盤、ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)のレースペースが目についたが、状況や戦略によって、フェラーリ、レーシングポイント、マクラーレン、ルノーの順位があっさりと変わるのが現状だ。
もうひとつのポイントはやはりタイヤ。ピレリは「第4戦イギリスGPでメルセデスAMGの2台とカルロス・サインツのマクラーレンに起きたタイヤアクシデントは、フロント左のタイヤに長い周回数にわたって大きなストレスがかかり、摩耗が進んだことによるものでした。シルバーストンは最も要求の厳しいトラックの1つであり、しかも2020年のフォーミュラ1マシンは著しく速さを増しており(ポールポジションのタイムは2019年と比較して1.2秒速かった)、周回数の4分の3以上といなる約40ラップ走行していたということで、どのタイヤにもアクシデントの可能性はあったと考えられます」とコメント。
さらに「シルバーストンのダブルヘッダーに異なるタイヤを供給します。 第4戦イギリスGPでは、C1コンパウンド(ハード)、C2コンパウンド(ミディアム)、C3コンパウンド(ソフト)を供給しましたが、今週の第5戦70周年記念GPには1ステップ柔らかい、C2コンパウンド(ハード)、C3コンパウンド(ミディアム)、C4コンパウンド(ソフト)を供給します。 これにより不確定要素が増えて、レースはエキサイティングなものになるでしょう。今週末は最低タイヤ空気圧を上げてタイヤ構造へのストレスを軽減します」と続けている。
果たして今週はどんなグランプリとなるのか。F1第5戦70周年記念GPは、8月7日金曜日11時(日本時間19時)からのフリー走行1回目で幕を開け、予選は8月8日14時(日本時間22時)、決勝は8月9日14時10分(日本時間22時10分)に開始される。
【参考】2020年 F1第4戦イギリスGP 結果
優勝 44 L.ハミルトン(メルセデスAMG)52周
2位 33 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ) +5.856s
3位 16 C.ルクレール(フェラーリ) +18.474s
4位 3 D.リカルド(ルノー) +19.650s
5位 4 L.ノリス(マクラーレン・ルノー) +22.277s
6位 31 E.オコン(ルノー) +26.937s
7位 10 P.ガスリー (アルファタウリ・ホンダ) +31.188s
8位 23 A.アルボン (レッドブル・ホンダ) +32.670s
9位 18 L.ストロール (レーシングポイント・メルセデス) +37.311s
10位 5 S.ヴェッテル(フェラーリ) +41.857s
リタイア 26 D.クビアト(アルファタウリ・ホンダ)