航続可能距離480km以上のプレミアムSUV
現在、北米市場を中心に海外で販売されているコンパクトハッチバックEVのシボレー ボルトEVを展開するGMは、2020年に入ってEV攻勢を強めている。2020年3月にはプレミアムブランドであるキャデラックの電動SUV「リリック」の存在を、また5月にはハマーブランド復活の嚆矢となるGMC ハマーEVの存在を明らかにしてきた。年内には次期シボレー ボルトEVを正式に発表することも予告している。
そして2020年8月7日、GMはキャデラック初のEVリリックの内外装デザインと概要を発表した。
エンジン冷却用のラジエーターを必要としないEVらしく、空力性能を重視してフロントグリルは開口していない。そこには幾何学模様のようなデザインを施されたブラッククリスタルのグリルと、その両サイドに縦型のシグネチャーLEDライトが配置される。これは今後のキャデラックEVの新しい「顔」になるという。
ボディはスタイリッシュなステーションワゴンとSUVを掛け合わせたクロスオーバーSUVで、後方へなだらかに下がっていくルーフラインと、ブーメランのような形状のテールランプが組み合わされる。
リリック最大の特徴はEVとしての性能で、新開発された約100kWhのエネルギー容量を持つ「アルティウムバッテリーシステム」により300マイル(約480km)以上の航続可能距離を実現するという。このバッテリーの容量は現段階で100kWhとアナウンスされているが、以前の発表では200kWhも可能とするシステムであることがアナウンスされており、今後さらなるパフォーマンスモデルの登場も期待できるはずだ。
駆動方式は基本的にモーターをリアに搭載することによるRWDとするが、フロントにセカンドドライブユニットを採用したパフォーマンス4WDをオプションで設定する。また、バッテリーパックを車両センターに搭載することで前後重量は50:50に、重心も低くなることでレスポンスの良いハンドリングを実現しているという。
コクピットにはドライバーを囲むかのような33インチのLEDディスプレイを配置され、ここにはドライバーインフォメーションやカーナビ・オーディオなどのインフォテインメントコントロール、カメラビューなどが統合される。
騒音・ノイズ制御にこだわりを持つキャデラックは、EVであっても抜かりはなくノイズキャンセリング機能を進化させている。マイクや加速度センサーの搭載数を増やすことで、タイヤのキャビティノイズをターゲットにした周波数域の逆位相を発生、ノイズを低減させることでより静かな車内空間を可能にしているという。
このほかにも自動車線変更機能を含むハンズフリー運転支援システムの「スーパークルーズ」や、拡張現実(AR)対応のヘッドアップディスプレイ、ドライバーが車外にいても自動で駐車操作をしてくれるスーパーバイズドリモートパーキング(監視を要する)など、さまざまな新技術投入を予定している。発売時期や日本市場への導入時期などは未定としているが、注目度の高いモデルとなりそうだ。