ハミルトンもフェルスタッペンの速さを警戒
前戦に続いて高温の下でのレースとなったスペインGPだったが、メルセデスAMGのハミルトンは安定した速さを見せ、ロングランでの速さで定評のあるフェルスタッペンをもってしてもトップの座を奪うことはできなかった。
3番グリッドからスタートしたフェルスタッペンは、見事なスタートを決めて、メルセデスAMGのバルテリ・ボッタスをターン1でパスして2番手に浮上。前を行くハミルトンにプレッシャーをかける。オーバーテイクの難しいサーキットであるため、フェルスタッペンは2ストップ戦略を選択。21周目と41周目に、早めのピットストップを行い、さらにハミルトンにプレッシャーをかけるが、ハミルトンも冷静にこれに対応。ともに、ソフトタイヤ→ミディアム→ミディアムとなったこともあり、その差は縮まらなかった。ハミルトンはレース前にワンストップも視野に入れたコメントをしていたことから、フェルスタッペンの戦略に合わせたのではと言われている。
ただフェルスタッペンのタイヤ戦略は速く、3番手のボッタスを寄せ付けずに2番手を堅守。4戦連続で2位以上となったフェルスタッペンは、ポイントランキングでも2位の座を維持している。
レッドブル・ホンダのアルボンも6番手から好スタートを決めるが、スタート直後のターン2でペースの上がらないボッタスに引っかかり6番手に逆戻り。レーシングポイント勢の前に出るべく、早めの17周目にピットインし、ハードタイヤに交換して粘り強く上位進出を狙う戦略を採る。このピットストップで順位を大きく落とすが、コースに戻るとオーバーテイクを連発。その後、39周目に2度目のピットストップでミディアムタイヤに履き替え、8位まで順位を戻してフィニッシュした。
アルファタウリ・ホンダのガスリーは、21周目にソフトタイヤからミディアムタイヤに履き替えると、43周目に再度ピットインして再びミディアムタイヤへ交換。ここで僅差の集団の中に戻ることとなり、そのままアルボンに続く9位でチェッカーフラッグを受けた。
クビアトは12番手からのスタートだったが、チームはペースがいいと見て、オーバーテイクが期待できる新品のソフトタイヤでのスタートを選択。ガスリーと同じ21周目に、チームはダブルピットストップを難なくこなすと、クビアトはそこからロングスティントを走行。46周目に2度目のピットストップを行ったが、その直後にブルーフラッグを無視したとして5秒加算のペナルティーを受ける。結局クビアトは10位から約6.7秒差の12位で完走。ポイントまであとわずかな位置でレースを終えている。
今回のレース結果について、ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターは「スペインGP決勝は、レッドブルのフェルスタッペン選手が5戦連続となる2位表彰台を獲得しました。また、トラフィックの中でレースを続ける形となったチームメイトのアルボン選手とアルファタウリのガスリー選手は素晴らしいオーバーテイクを見せて入賞を果たしてくれました。クビアト選手についてはポイント圏内まで約7秒差と、残念ながら入賞を逃す形になりました。フェルスタッペン選手とガスリー選手については、マシンの持てるパフォーマンスを十分引き出してのレースだったと思います。一方で、それぞれのライバルとの戦いの中では、まだまだ力を付けなければならないことを痛感したレースでもありました。ここで2度目の3連戦が終わり、1週間のブレイクを挟みます。ここまで6レースのデータを改めて振り返り、次に控える3連戦でさらにいい成績を残すべく、準備を進めたいと思います」とコメント。ドライバーは次のように語っている。
マックス・フェルスタッペン
「メルセデスAMGの2台はとても速かったので、そこに割って入っての2位という結果は素晴らしいし、僕もうれしく思っています。多くのポイントを獲得できて、いいレースウイークになったので、喜ぶべき結果です。スタートがよかったので、バルテリ(ボッタス)をパスすることに成功しました。最初のスティントではルイス(ハミルトン)についていこうと、すべてを試してみましたが、彼らのマシンは僕らより速かったですし、特にルイスは少し速すぎました。そこからは、自分たちのレースに集中することにしましたが、マシンの感触はよかったです。バルテリがピットインしたとき、終盤にかけて脅威になることを想定していましたが、自分のタイヤの状態には満足していましたし、追いつかれることはありませんでした。2位はもちろんいい結果ですが、僕らは2位になるためにここにいるわけではありません。勝利を目指しているので、それが叶わなければ決して満足はできません。現時点で2台のメルセデスAMGの間で戦えていますが、ルイスをもっと追い詰めたいと思っています」
アレクサンダー・アルボン
「厳しい結果になり、レース内容にも満足していません。どのコンパウンドのタイヤでもグリップを得られず、難しい状況でした。各スティントでタイヤをいたわりましたが、6周から7周でグリップを失いました。先週のシルバーストンとは逆で、フラストレーションの溜まる展開で、タイヤを持たせるのに苦しんでしまいました。今年はそれが問題になることはなかったので、データを見直してその理由を確認する必要があります。特にセクター3で厳しく、前のマシンに近づいていくことができなかったので、オーバーテイクできずに無防備な状態になってしまいました。なぜ、レースで先週と全く異なる状況になってしまったのかを理解して、スパに向けて強さを取り戻して前進したいと思います」
ピエール・ガスリー
「素晴らしいレースができて、チームに2ポイントを持ち帰れたことがうれしいです。僕はいいスタートを切ることができて、ターン1でシャルル(ルクレール)とランド(ノリス)をパスして8番手に上がることができました。2つ目のスティントでは、各車がDRS圏内で連なっている中での走行となり、ミディアムタイヤの長所を活かせなかったことが少し残念です。ただ、このバルセロナではポジティブな点がたくさんあり、マシンパフォーマンスの面ではかなり厳しいと思っていたのに、2台のマクラーレンに割って入ってレースができたことはよかったです。結果には満足していますし、すでに次のスパへ目を向け始めています」
ダニール・クビアト
「フラストレーションの溜まる展開で、満足いくレースとは言えません。いつも決勝で感じるマシンの感触のよさがありませんでした。詳細を確認して、なぜそうだったのかを理解する必要がありますが、タイヤの使い方も適切ではなかったかもしれません。スタートはよく、フェラーリ勢やリカルドといいバトルができたので、今日はそこからさらに上に行っていいポジションでフィニッシュできると思っていました。今週末でいくつか学んだことがあるので、次のレースではもっとうまくやれるはずです」
一方、タイヤを供給するピレリは「優勝したハミルトンと2位のフェルスタッペンはともにソフト→ミディアム→ミディアムというタイヤ戦略でした。常にフェルスタッペンが先にピットに入る展開で、同じタイヤ戦略となったことは興味深いことです。3位のボッタスはフェルスタッペンにチャージをかける意味もあったのか、ソフト→ミディアム→ソフトと違う戦略をとっています。ただ、フェルスタッペンに届かないことがわかると、最後にもう一度ミディアムタイヤに履き替えてファステストラップを記録しています。トラック温度が50度という厳しい条件でタイヤを管理することは大きな課題でしたが、30周以上のスティントが見られました。これは非常に印象的で、予想外のワンストップ戦略でも高いパフォーマンスを見せました。またアルボンはソフト→ハード→ミディアムというでユニークな戦略で8位に入りました。多くのドライバーがこれまでにレースをした最も暑い気温の中でよく戦いました。ちなみに、バルセロナでのレース中の平均ラップタイムは、2014年よりも8秒以上も速くなりました」とコメントしている。
これで、今季2度目の3週連戦が終了。次は、8月30日に決勝レースが行われるベルギーGPから、モンツァで開催されるイタリアGP、ムジェロで開催されるトスカーナGPの3連戦となる。
2020年 F1第6戦スペインGP 決勝 結果
優勝 44 L.ハミルトン(メルセデスAMG)66周
2位 33 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ) +24.177s
3位 77 V.ボッタス(メルセデスAMG) +44.752s
4位 18 L.ストロール (レーシングポイント・メルセデス)+1周
5位 11 S.ペレス (レーシングポイント・メルセデス)+1周
6位 55 C.サインツ(マクラーレン・ルノー)+1周
7位 5 S.ヴェッテル(フェラーリ)+1周
8位 23 A.アルボン (レッドブル・ホンダ)+1周
9位 10 P.ガスリー (アルファタウリ・ホンダ)+1周
10位4 L.ノリス(マクラーレン・ルノー)+1周
12位 26 D.クビアト(アルファタウリ・ホンダ) +1周
F1ドライバーズランキング(第6戦終了時)
1位 L.ハミルトン(メルセデスAMG)132
2位 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)95
3位 V.ボッタス(メルセデスAMG)89
4位 C.ルクレール(フェラーリ)45
5位 L.ストロール (レーシングポイント・メルセデス)40
6位A.アルボン (レッドブル・ホンダ)40
F1コンストラクターズランキング(第6戦終了時)
1位 メルセデスAMG 221
2位 レッドブル・ホンダ 135
3位 レーシングポイント・メルセデス 63
4位 マクラーレン・ルノー 62
5位 フェラーリ 61
6位 ルノー 36