2003年にデビューしたゴルフVに、ワゴンモデルが設定されたのは2007年3月のこと。ジュネーブオートサロンでワールドプレミアを果たしている。今回はショーデビューから間もなく、ドイツ・ハノーバーで行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年7月号より)

フォルクスワーゲンらしいクルマ投入の第一歩

ピシェツリーダーに代わって、新しくフォルクスワーゲンの社長に就任したDr・マルティン・ヴィンターコルンは、レポーターの質問に対して「これからフォルクスワーゲンらしいクルマを市場に送り出してゆくのが、自分の使命のひとつである」と語った。

初めは何のことを言っているのかよくわからなかったが、様々な情報を集めて行くうちに、たぶんこういうことだろうと合点がいった。ピシェツリーダー時代に革新的なモデルの市場導入を優先的に行ったばかりに、お蔵入り、あるいは導入が著しく遅れている伝統的なモデルがある。それを出していこう、ということなのだろう。

たとえば、このゴルフヴァリアントがそうである。このゴルフのバリエーションのひとつである伝統的なステーションワゴンは、1993年の先々代モデルから2世代に渡って生産され(日本名:ゴルフワゴン)、世界中で120万台もがユーザーの手に渡って行った。

もちろん、こうした伝統的なモデルのユーザーを取り込んでしまおうと考えたのがゴルフプラスだったのだろうが、欧州の主要自動車市場、ドイツ、イギリス、イタリア、そしてフランスやスペインでは、相変わらずステーションワゴンの需要があり、毎年65万台の販売実績が記録されている。

そこで新社長就任の手みやげが、ゴルフヴァリアントとなったわけである。通算3世代目にあたるこのワゴンモデルのスタイルは、例によって非常にコンサバティブであるが、リアまで延びたルーフ後端から落ちるゲートは実用一点張りの垂直ではなく、斜めで太目のリアピラーとともにスタイリッシュなサイド、そしてリアビューを構成している。しかし、この幅広い柱のお陰で斜め後方の視界はかなり遮られるようだ。

また、カーゴスペースはリアシートを使用している状態で505L、リアシートを倒すと1495Lとなり、同じクラスの欧州でのライバルであるオペル・アストラキャラバン(540-1590L)と比べると、ほんの少しだが容量は少ない。やはりブランドが成長してお洒落になると、実用性はほんのちょっぴり犠牲になるのかも知れない。しかし平らな荷室は実用性に富んでおり、またフロア下にも細かな物入れが隠されているので、ワゴンとしての全般的な実力は、従来モデルと同様にかなり高いと言えるだろう。

また、クルマのサイズはゴルフのノッチバック版であるジェッタとほぼ同じだが、重量は25kgほど重くなっている。

画像: 実用性が高いゴルフヴァリアントは、日本でも人気になるだろう。

実用性が高いゴルフヴァリアントは、日本でも人気になるだろう。

主力はTSIエンジンだが当初ガソリンは1.6Lのみ

ハノーバー空港でピックアップしたテスト車に塔載されていたエンジンは、1.4TSIの出力が抑えられたバージョンだった。最高出力は140ps/5600rpm、最大トルクは220Nm/1500-4000rpmをそれぞれ発生する。

参考までにメーカー計測値では、6速DSGミッションによるスタートから100km/hまでの加速所要時間は9.5秒、最高速度は203km/hとなっている。

ゴルフ/ジェッタ系のインテリアは、ほとんど変わることなくワゴンにも踏襲され、いきなりコクピットに入っても、スイッチ操作などに迷いはない。またダッシュボードのプラスチックや仕上げなどを見ると、全体的には質感は上がっている。

さて、ガッシリしたセレクトレバーをDレンジに入れてスタートする。140psのTSIエンジンは、低回転から驚くほどのトルクを持ち、スムーズで滑らかな回転でパワーを拡散してゆく。

続いて170ps仕様のTSIにも試乗したが、こちらは豪華仕様で、このヴァリアントからオプションで採用されるパノラマサンルーフまでが装備されていた。そんなわけで、重量は空車状態で1383kgとなっているが、それでも6速DSGでスタートから100km/hまでは、8.3秒、最高速度は218km/hにまで到達するから大したものだ。

このゴルフヴァリアントは、ドイツで6月1日から発売が開始されるが、当初は1.6Lのガソリンエンジン(102ps)と、1.9TDI(105ps)、2.0TDI(140ps)のラインアップとなる。価格は1万8875ユーロ(約305万円)からと発表されている。これはスタンダードなハッチバックタイプのゴルフに比べると、およそ1400ユーロ(約23万円)ほど高い価格設定だ。

この伝統的なワゴンは、そう遠くない時期に日本でも販売されることになるだろう。日本ではこのクラスにワゴンが存在しないこと、そして従来からゴルフワゴンのファンは大勢いるので、人気モデルになることは間違いないと思われる。(文:木村好宏/Motor Magazine 2007年7月号より)

画像: 広大なカーゴスペースはリアシートを倒した場合で1495L。リアシートを使っている場合でも505Lを確保している。

広大なカーゴスペースはリアシートを倒した場合で1495L。リアシートを使っている場合でも505Lを確保している。

ヒットの法則

フォルクスワーゲン ゴルフヴァリアント 1.4TSI 170ps 主要諸元

●全長×全幅×全高:4556×1781×1504mm
●ホイールベース:2578mm
●車両重量:1383kg(DIN)
●エンジン:直4DOHCツインチャージャー
●排気量:1390cc
●最高出力:170ps/6000rpm
●最大トルク:240Nm/1500~4750rpm
●トランスミッション:6速DCT(DSG)
●駆動方式:FF
●最高速:218km/h
●0→100km/h加速:8.3秒
※欧州仕様

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