メルセデス・ベンツ CLK55 AMG(2001年)
メルセデス・ベンツのチューナーであったAMGは、1999年にダイムラー・クライスラーの傘下に収まった。そんなAMGのインポーターは、今年(編集部註:2001年)1月からダイムラー・クライスラー日本に変わった。
現在、日本に正規輸入されているAMGのラインアップの中で、もっともホットなモデルがこのCLK55 AMG(以下、CLK55と略)だろう。いまのところ、SLやCLをベースにしたAMGモデルは、日本には導入されていないからだ。先代のW202型CクラスをベースにしたクーペのCLKに5.5LのV8を詰め込んでしまうのだから、昨年から復活したDTM(ドイツ ツーリングカー選手権)に参戦しているCLKベースのマシンを彷彿とさせてしまう。
だが、そのスペックから想像されるパフォーマンスとは裏腹に、エクステリアはおとなしめだ。よく見れば前後のバンパースポイラーとサイドステップを装着し、タイヤ&ホイールも17インチを履いているのだが、遠目にはノーマルのCLKと区別がつかない。これならフォーマルにも使えるし、まわりから「スゴいクルマに乗っている」と思われたくない人には最適な1台だ。
もはや「AMG」というブランドには、かつてのような変なアグレッシブさはなくなっている。インテリアも、ウッドパネルがブラックメープルになりステアリングやメーターがAMGオリジナルとなっているが、スパルタンさは感じられない。ノーマルのメルセデスを、よりスポーティかつ上質に仕上げたというイメージだ。
ところが、走り出してオープンロードでアクセルを踏む足に力を込めると、その世界は一変する。その加速Gの凄さは、翼を付けたら離陸してしまいそうなほどだ。3バルブSOHCのままだが5.5Lに排気量アップされたV8エンジンは、低速域からトップエンドまでトルクに満ちている。ESP(エレクトロニック スタビリティ プログラム)のスイッチをOFFにすると、発進加速では前に進んでくれないほどだ。だが大パワーユニットにありがちな荒々しさはないので、オーバーパワーという感じはしない。
ノーマルのメルセデス同様、このCLK55もトランスミッションはティップシフト付きの5速ATを採用している。マニュアルモードでは右でアップシフト、左でダウンシフトとなるから、やはりティップシフトは左ハンドルの方が扱いやすい。限界領域まで攻める気はないが、これを駆使してそこそこのペースでワインディングを走ると、固められた足まわりと強化されたブレーキと相まって、けっこう楽しめる。
比較的おとなしい外観ながら、AMGのスペシャルパーツでドレスアップされ、インテリアも上質な雰囲気。そして5.5LのV8がもたらしてくれるパフォーマンスを考えると、1150万円というプライスはCLK55を買える人にはけっして高くはないといえるだろう。
■メルセデス・ベンツ CLK55 AMG 主要諸元
●全長×全幅×全高:4565×1720×1375mm
●ホイールベース:2690mm
●車両重量:1570kg
●エンジン形式:V8・3バルブSOHC・FR
●排気量:5438cc
●最高出力:255kw(347ps)/5500rpm
●最大トルク:510Nm(52.0kgm)/3000ー4300rpm
●トランスミッション:電子制御5速AT(ティップシフト付き)
●タイヤ:前225/45R17、後245/40R17
●車両価格(当時):1150万円