SUVの人気は衰えることを知らず、国内外のメーカーから日本の道路環境に適したサイズのSUVが相次いで登場している。今回取り上げる日産 キックスとトヨタ ライズもそうしたモデルだが、どちらも高い人気を集めている。キックスとライズは直接的なライバルではないようにも見えるが、日産はキックスで幅広いユーザー層を狙っており、ライズのユーザーも当然視野に入っているはずだ。そこで今回はキックスとライズを比べることで、それぞれの個性や魅力、日産とトヨタのコンパクトSUV作りの考え方について探っていきたい。

同じコンパクトSUVだがコンセプトも価格も大きく異なる

キックスは2020年6月、日産にとって国内市場10年ぶりのブランニューモデルとして登場した新型車だ。欧州でデビューしているスタイリッシュな2代目ジュークではなく、幅広いニーズに対応できるまったく新しいコンパクトSUVを投入した点が興味深い。トヨタの複数のコンパクトSUVと対抗するために、新型キックスは幅広いユーザー層に使われることを想定していると理解できる。技術的な注目ポイントは、独自の電動パワートレーン「e-POWER」と最新の運転支援システム「プロパイロット」だ。

一方のライズは、ダイハツ ロッキーの兄弟車として2019年11月にデビュー。コンパクトな5ナンバー枠のボディに、広い室内空間や荷室、多彩な収納スペースを備え、日常での使い勝手の良さはもちろん、休日のレジャーにも活躍できる1台だ。トヨタにはヤリスクロスやC-HR、RAV4などSUVのラインアップが揃うため、ユーザーターゲットが絞りやすいのは利点だ。

画像: 抑揚のある先進性を感じさせるデザインのキックスに対して、ライズのデザインは基本的にスクエアでスペースを稼ごうという意図が見える。

抑揚のある先進性を感じさせるデザインのキックスに対して、ライズのデザインは基本的にスクエアでスペースを稼ごうという意図が見える。

キックスは全長4290mm、全幅1760mm、全高1610mm、ホイールベース2620mmで、全長3995mm、全幅1695mm、全高1620mm、ホイールベース2525mmのライズに対してひと回り大きなボディをもち、ホイールベースも95mm長い。

しかし、室内サイズで比べると、キックスは室内長1920mm、室内幅1420mm、室内高1250mm。一方のライズは幅と高さは同じながら室内長は1955mmと、キックスよりむしろ35mm長くなっているのが興味深い。キックスは上質さも含めたトータルなパッケージ、ライズは広々としたコンパクトカーとして気軽に使えるように考えられているのがうかがえる。

ラゲッジルーム容量はキックスが423L、ライズは303Lを確保(2段デッキボードを下段にセットすると369L)。いずれも後席は6:4分割可倒式を採用しているので多彩な荷室空間を生み出すことが可能だ。トノカバーは、キックスでは標準装備(トノボード)、ライズは販売店装着オプションとなっている。

画像: キックスとライズの寸法比較。キックスのほうがひとまわり大きいことがわかる。

キックスとライズの寸法比較。キックスのほうがひとまわり大きいことがわかる。

エクステリアデザインはキックスが新世代の日産デザイン言語をベースにダブルVモーションの大型グリルを採用。シャープな印象の薄型ヘッドランプなどでプレミアム感と先進性を感じさせる上質な都会派SUVとしているのに対し、ライズは「力強く!新しい!アクティブスタイル」をデザインコンセプトに、力強くワイドなフロントフェイスや台形に象ったロアグリル、張り出したフェンダーなどにより、アウトドアフィールドが似合うSUVらしいエネルギー感を表現している。最低地上高はキックス170mm、ライズ185mmで、ここにも両車の異なるキャラクターが現れている。

搭載されるパワーユニットは両車ともに1タイプだが、ここにも大きな違いが見える。キックスは日産のSUVとしては初めて「e-POWER」を搭載。バッテリー能力を最大限に引き出ことで最高出力を約 20%向上させた129ps/260Nmのモーターで力強い加速力を実現する。また「Sモード」と「ECOモード」の2つの走行モードをもつワンペダルの「e-POWER Drive」に加え、走りのバランスを重視した「NORMALモード 」を設定。セレナに搭載されている「チャージモード」と「マナーモード」も採用されている。1.2Lの直3エンジンは発電用で、WLTCモード燃費は21.6km/Lと良好だ。

ライズに搭載されるのはコンベンショナルな1L直3ターボエンジンで、98ps/140Nmのスペック。組み合わされるトランスミッションはトヨタ初採用のD-CVTだ。これはベルト駆動CVTにスプリットギアをプラス、高速域において「ベルト+ギア」とすることで伝導効率を高めるとともに変速比を見直すことで、低速域での加速と高速域での静粛性・燃費性能を向上させている。WLTCモード燃費はFFが18.6km/L、4WDで17.4km/Lとなっている。

画像: キックスは全幅1760mmで3ナンバーとなるが、ライズは小型車枠にこだわって全幅1695mmにとどめている。

キックスは全幅1760mmで3ナンバーとなるが、ライズは小型車枠にこだわって全幅1695mmにとどめている。

今、新型車に求められる必須装備が先進運転支援システム(ADAS)。これはコンパクトSUVでもかわらない。キックスには「e-POWER」とともに「ニッサン インテリジェント モビリティ」を担う「プロパイロット」が標準される。これはミリ波レーダーにより先行車との車間距離や車線中央をキープするなどの制御を行うもの。さらに歩行者にも対応した「インテリジェント エマージェンシーブレーキ」や「踏み間違い衝突防止アシスト」、「ハイビームアシスト」も標準装備。「サポカーS ワイド」の対象車種になっている。ボタンひとつで専門オペレーターに接続できる「SOSコール」の申し込みも可能だ。

ライズも歩行者対応衝突回避支援ブレーキ機能をはじめ、車線逸脱抑制制御機能や前後の誤発進抑制機能などの予防安全機能を「X」グレードを除き標準装備するほか、最上級の「Z」グレードでは全車速追従機能付きACCやレーンキープコントロールなども標準装備されるが、プロパイロットを装備するキックスと比べるとやや見劣りする。

グレード構成は、キックスが「X」と「Xツートーンインテリアエディション」の2モデルで2WDのみ。車両価格は前車が275万9900円。後者が286万9900円となる。ライズは、「X」「XS」「G」「Z」の4グレードを揃え、全グレードに2WD/4WDを設定するなどラインアップが充実。車両価格は2WDが167万9000円~206万円、4WDでも191万8800円~228万2200円とリーズナブルな設定としている。

日産 キックスの車両価格(税込み) 

 X:275万9900円 
 X ツートーン インテリアエディション:286万9900円

トヨタ ライズの車両価格(税込み) 

 X:167万9000円
 X S:174万5000円
 G:189万5000円
 Z:206万円
 X(4WD):191万8800円
 X S(4WD):198万4800円
 G(4WD):213万3700円
 Z(4WD):228万2200円

キックスとライズを購入対象として比較するには、ずいぶんと価格差があるように思えるが、キックスが「e-POWER」を備え「プロパイロット」などを標準装備されていることを考慮すれば、その差はグッと縮まってくる。

SUVに先進性を採り入れたオールマイティなキックスと、コンパクトカーとしての使いやすさを備えた気軽なSUVという位置付けのライズ。キャラクターが大きく異なる2台は、ボディサイズというよりも、コンパクトSUVになにを求めるかで、どちらを選ぶか決まるのだろう。(文:丸山佳彦)

日産 キックス X ツートーン インテリアエディション 主要諸元

●全長×全幅×全高:4290×1760×1610mm
●ホイールベース:2620mm
●車両重量:1350kg
●パワーユニット:モーター
●モーター最高出力:129ps/4000-8992rpm
●モーター最大トルク:260Nm/500-3008rpm
●駆動方式:FF
●サスペンション:ストラット/トーションビーム
●タイヤサイズ:205/55R17
●WLTCモード燃費:21.6km/L
●最小回転半径:5.1m
●乗車定員:5名
●車両価格:286万9900円

トヨタ ライズ Z FF 主要諸元

●全長×全幅×全高:3995×1695×1620mm
●ホイールベース:2525mm
●車両重量:980kg
●エンジン:直3DOHCターボ
●排気量:996cc
●最高出力:98ps/6000rpm
●最大トルク:140Nm/2400-4000rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:FF
●サスペンション:ストラット/トーションビーム
●タイヤサイズ:195/65R16
●WLTCモード燃費:18.6km/L
●最小回転半径:5.0m
●乗車定員:5名
●車両価格:206万円

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