2019年4月に日本市場に復活したトヨタRAV4、そして2020年6月に登場したトヨタ ハリアーがともに凄まじい人気となっている。実はこの2台、同じGA−Kプラットフォームを使った兄弟車だが、そんなことを感じさせないくらい明確に違う。ではいったいどこが同じで、どこが違うのか、RAV4 PHV ブラックトーンとハリアー ハイブリッドGで検証してみよう。

互いの存在があるからこそ、明確に違うコンセプトが実現できた

最初にRAV4 PHVの購入検討している方にお知らせしなければならないことがある。今年2020年6月に発売が開始され「販売目標台数月300台」と発表されたが、この台数の少なさには裏があった。それは駆動電池の生産数が限られていたためで、発売早々に「年度内の生産分は終了した」とアナウンスされた。

トヨタは駆動電池が車両生産のネックなことはわかっていたはずで、年度内に買うことができないとなるとファンはがっかりだ。わざわざ「年度内の生産分は終了した」とアナウンスとしたのは補助金の関係もある。年度内納車だと補助金が使える可能性があるが、それ以降になると補助金の有無や金額がはっきりしていない。それも予約注文の一時停止の遠因だ。

一方、ハリアーも人気モデルで、国産ミッドサイズプレミアムSUVとして「ブランド」化されている。1997年に登場した初代ハリアーは重要な使命を持っていた。北米市場で人気が高まりつつあるプレミアムSUV市場にレクサスRXとして切り込み、レクサスブランドを定着させるという任務があった。

北米でのレクサスの成功は、LSの効果というよりむしろ、手頃な価格で高級な走りを実現したウィンダム(レクサスES)、奥様用のセカンドカーとしても使い勝手がいいハリアー(レクサスRX)の成功が大きかった。この2車の成功がなければ今のレクサスは存在しないといっても過言ではない。

RAV4とハリアーは、北米での需要が高まるにつれてそれぞれ独自の路線を歩み、RAV4に至っては4代目の日本展開がなかった。5代目となった現行型で日本市場に復帰するが、北米用に大きくなったボディサイズが日本のユーザーに受け入れられるかが問題だった。

ところが現行5代目RAV4は日本でも大ヒット。特にラギッド感のあるデザインが受けて若いユーザーも獲得した。グローバル販売では2020年上半期で約42万6000台を販売するという絶好調さで、トヨタ車で第1位を記録している。

画像: 車両重量は同じ仕様同士で比べると、ハリアーのほうがやや重い。上質な乗り味を実現するための吸音材や制振材などの違いによるものだろうか。

車両重量は同じ仕様同士で比べると、ハリアーのほうがやや重い。上質な乗り味を実現するための吸音材や制振材などの違いによるものだろうか。

画像: 同じGA−Kプラットフォームを用いることもあり、RAV4とハリアーのボディサイズはよく似ている。RAV4ほうが全長が140mm短く、全高が25mm高いだけで、全幅1855mm、ホイールベース2690mmは同じ。

同じGA−Kプラットフォームを用いることもあり、RAV4とハリアーのボディサイズはよく似ている。RAV4ほうが全長が140mm短く、全高が25mm高いだけで、全幅1855mm、ホイールベース2690mmは同じ。

トヨタ RAV4 の車両価格(税込み) 

X:274万3000円
X 4WD:297万4000円 
G 4WD:339万1000円
G Zパッケージ 4WD:353万9000円
アドベンチャー 4WD:331万円
ハイブリッドX:334万3000円
ハイブリッドX 4WD:359万6000円 
ハイブリッドG 4WD:402万9000円 
PHV G:469万円 
PHV G-Z:499万円 
PHV ブラックトーン:539万円

トヨタ ハリアーの車両価格(税込み) 

S:299万円
G:341万円 
Z:393万円
S 4WD:319万円 
G 4WD:361万円 
Z 4WD:413万円 
ハイブリッドS:358万円 
ハイブリッドG:400万円 
ハイブリッドZ:452万円 
ハイブリッドS 4WD:380万円 
ハイブリッドG 4WD:422万円 
ハイブリッドZ 4WD:474万円 
ハイブリッドZ:452万円 
ハイブリッドS 4WD:380万円 
ハイブリッドG 4WD:422万円 
ハイブリッドZ 4WD:474万円

RAV4に乗った第一印象は、素晴らしく乗り心地がフラットで静粛性に優れているというものだった。まるでプレミアムSUVのように感じた。この印象はガソリン、ハイブリッド、そして遅れて登場したPHVにも共通するもので、設定価格を考えるとかなり買い得感が高いと感じられた。

なぜそんなことが実現できたのか。その秘密が現行ハリアーの登場で氷解した。ハリアーに試乗すると、プレミアムSUVらしい乗り味と静粛性を実現していて、その乗り味の質感はRAV4によく似ていたのだった。

実は現行RVA4とハリアーは、同じチーフエンジニアが手がけたモデルなのだ。もちろんプラットフォームは共通で、パワーユニットやパワートレーンも同じものを使っている。しかしそれでいて、デザインやクルマの目指すベクトルをはっきりと変えることができたのは、同じチーフエンジニアが2台を全体から見ていたからこそだ。

RAV4は本格クロスカントリーモデルに迫る塊り感のあるデザインと悪路走破性の高い4WDシステムを組み合わせて登場した。一方のハリアーは、高級感にさらに磨きをかけ、レクサスブランドに迫る質感を実現している。こうした明確に違うコンセプトによって、異なるユーザーターに訴求することができたというわけだ。

特にハリアー好きの歴代ユーザーを納得させたのはインテリアの触感。クルマの乗り込むところから運転時に手が触れる部分の触感を徹底的に作り込んでいる。レクサスRXとして北米に送り込まれた初代モデルも、こうしたプレミアム感がユーザーの琴線に響いた。現行型は車名を表す鷹(正確には鷹の一種=チュウヒ)のエンブレムはなくなってしまったが、ハリアーをブランドとして認めているユーザーは、このプレミアムなインテリアを見れば、そんなエンブレムのことなどは忘れてしまうだろう。

また、新型ハリアーは北米ではヴェンザとして販売されていて、こうした市場展開ができるからこそ、インテリアなどにコストをかけることができたわけで、ここにトヨタの底力を見る思いがする。エンジンをはじめ、新開発のパワートレーンや4WDなどを共通化することで、各車の特徴的な部分にコストをかけることができたわけだ。

RAV4とハリアーはプラットフォームを共有する兄弟車ではあるが、見事に市場に熱狂的に受け入れられて両車とも大ヒットした。ひとりのチーフエンジニアに同じセグメントの2台を任せるという方法は、カンパニー制度が導入されていなかったら実現できていなかったかもしれない。そうした意味でも、社内改革を断行する豊田章男社長の存在がなかったら、違った状況になっていた可能性も否定できない。(文:丸山 誠)

画像: ボディサイズはよく似ているが、スタイリングはかなり違う。オフロードでのタフな走りをイメージさせるRAV4に対し、ハリアーはスタイリッシュな都会派SUVに仕立てられる。

ボディサイズはよく似ているが、スタイリングはかなり違う。オフロードでのタフな走りをイメージさせるRAV4に対し、ハリアーはスタイリッシュな都会派SUVに仕立てられる。

トヨタ RAV4 PHV ブラックトーン 主要諸元

●全長×全幅×全高:4600×1855×1695mm
●ホイールベース:2690mm
●車両重量:1920kg
●エンジン:直4DOHC+モーター
●排気量:2487cc
●最高出力:177ps/6600rpm
●最大トルク:219Nm/3600rpm
●モーター最高出力:F182ps/R54ps
●モーター最大トルク:F270Nm/R121Nm
●トランスミッション:電気式無段変速
●駆動方式:4WD
●サスペンション:ストラット/ダブルウイッシュボーン
●タイヤサイズ:225/55R19
●WLTCモード燃費:22.2km/L
●最小回転半径:5.7m
●乗車定員:5名
●車両価格:539万円

トヨタ ハリアー ハイブリッド G 主要諸元

●全長×全幅×全高:4740×1855×1660mm
●ホイールベース:2690mm
●車両重量:1650kg
●エンジン:直4DOHC+モーター
●排気量:2487cc
●最高出力:178ps/5700rpm
●最大トルク:221Nm/3600-6200rpm
●モーター最高出力:120ps
●モーター最大トルク:202Nm
●トランスミッション:電気式無段変速
●駆動方式:FF
●サスペンション:ストラット/ダブルウイッシュボーン
●タイヤサイズ:225/60R18
●WLTCモード燃費:22.3km/L
●最小回転半径:5.5m
●乗車定員:5名
●車両価格:400万円

This article is a sponsored article by
''.