今から20年ほど前、新しい世紀に変わる頃。クルマに対する考え方も変わり始めていた。そんな時代の輸入車ニューモデルのインプレッションを当時の写真と記事で振り返ってみよう。今回は「プジョー 406 スポーツ」だ。

プジョー 406 スポーツ(2002年)

画像: 2Lや3Lを搭載したモデルと、外寸はホイールベースを含めてまったく同じ。スッキリしたスタイルは7年経っても古さを感じさせない。

2Lや3Lを搭載したモデルと、外寸はホイールベースを含めてまったく同じ。スッキリしたスタイルは7年経っても古さを感じさせない。

プジョーのミドルセダン、406は1995年のフランクフルト モーターショーで発表され、日本へは翌1996年から導入開始。1年後にはワゴン版のブレークも販売されている。日本でもけっこう人気を集めた先代405の後継車として、もう6年近くになる。2Lの直4エンジンだけだったパワーユニットには3LのV6も追加されたり、ピニンファリーナがデザインしたスタイリッシュなクーペも販売されているが、そろそろモデル末期に近い。フランス本国では次期モデル(たぶん、407となる)の登場も噂されている。

とはいえ、406は世界中のメーカーがミドルセダンのベンチマークにするほど、出来の良いクルマだ。その秘密は、操縦性とバランスの良さにあった。「猫足」と呼ばれるサスペンションはしなやかに動き、セダンとしてじつに理想的な、心地良い走りの世界を築き上げている。日本のメーカーも十分に研究しているようだが、このあたりのバランス感覚は、いまだに日本車では味わうことができない。

もっとも、406にも欠点がないわけではない。いちばん指摘されているのが、日本仕様では唯一のトランスミッションである4速AT。セッティングやギアリングが日本の交通事情にはマッチせず、走りの印象をスポイルしていた。

そんな声に応えてくれたのか、プジョー ジャポンは406に「sport=スポーツ」というモデルを導入してくれた。トランスミッションには5速のマニュアルシフトを採用。それに合わせて、エンジンは従来のモデルより0.2Lキャパシティアップした2.2Lの直4 DOHCを搭載。ハンドル位置は左のみとなるが、これが限定モデルではなくカタログモデルとなったことがうれしい。

画像: インパネにはブルーのトリムが入り、本革巻きステアリングにもブルーのステッチが入る。ハンドル位置は左のみの設定。

インパネにはブルーのトリムが入り、本革巻きステアリングにもブルーのステッチが入る。ハンドル位置は左のみの設定。

外観は普通の406と大きく変わらない。識別点は、インチアップされたタイヤとホイールくらいだろうか。インテリアでは、シート地に本革とファブリックのコンビを採用したスポーツシートを装着している。オートエアコンやCDチェンジャー、オートヘッドランプなど、快適装備も充実している。

2Lエンジンのボアを1mm、ストロークを8mmアップした2.2Lエンジンは、吸気側の可変バルブタイミング機構とバランサーシャフトを内蔵したおかげで、スムーズな吹け上がり感が印象的だ。5速MTとの相性も良く、クラッチの重さも普通だから、ワインディングでシフトを駆使して走るのはもちろん、街中でのシフトワークも好きな人なら苦にはならないだろう。

ハンドリングもシャープで軽快だ。しなやかな走りの良さに気持ち良さが加わっている。前述のように406には3LのV6も設定されているけれど、これはパワフルだがノーズの重さを感じさせられる。この2.2Lエンジンは406によく似合っている。

実用的なセダンでも、スポーティな走りを味わいたい。そんな人は、おそらく左ハンドルもMTも苦にしないはず。プジョー 406スポーツは、そんな人のために本場の味が楽しめるスポーツセダンといえるだろう。

画像: 「sport」といったエンブレムも装着されておらず、後ろから見ただけでは従来のモデルと識別することは難しそうだ。

「sport」といったエンブレムも装着されておらず、後ろから見ただけでは従来のモデルと識別することは難しそうだ。

■プジョー 406スポーツ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4600×1780×1430mm
●ホイールベース:2700mm
●車両重量:1340kg
●エンジン形式:直4・DOHC・横置きFF
●排気量:2230cc
●最高出力:116kW(158ps)/5650rpm
●最大トルク:217Nm(22.1kgm)/2750rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤ:205/55R16
●車両価格(当時):332万8500円

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