ルノー カングー(2002年)
今春(編集部註:2002年春)、マイナーチェンジしたルーテシアを導入したばかりのルノー・ジャポンが続いて日本に送り込んだのは、小型ハイトワゴンの「カングー」だ。現在、このタイプの輸入車は日本には正式輸入されていない。昨年の東京モーターショーでも注目を浴びていたから、けっこう人気車種となるかもしれない。
パリの街中でも郊外でも、フランスでは小型ハッチバックをベースにした商/乗用車をよく見かける。プジョーのエクスプレス、シトロエンのエバション、そしてこのルノー カングーなどだ。フランスでは1997年に発売開始されたカングーは、今年3月には総生産台数が100万台を超えている。商/乗用車と前述したようにリアを完全に荷室用にしたモデルもあるが、今回日本に導入されるのは5シーターの乗用車バージョンだ。
写真で見たときはトヨタのファンカーゴくらいの大きさと思っていたのだが、実際のカングーはそれより135mm長く、15mm幅広く、そして147mmも高い。それでも4mを切るコンパクトなサイズながら存在感があって、なかなか可愛らしい。またルーテシア(マイナーチェンジ前)をベースとしながらも、フロントまわりをはじめまったくの別デザインとしているので、スタイリングは新鮮だ。
インパネまわりは、ベースとなったルーテシアとほぼ共通だ。ただしエアコンの吹き出し口は丸型に変更されている。イギリス仕様をベースにした右ハンドルとATの組み合わせは、国産車から乗り換える輸入車ビギナーにはうれしい設定だ。高い車高のおかげで当然ながら室内のヘッドスペースはタップリ。アイポイントが高いので視界も良く、室内は明るく開放感に満ちている。スライドドアを開けて乗り込むリアシートも、このクラスとしては十分な広さだ。
カングーのウリのひとつは、小型ワゴンとしての使い勝手の高さだ。カーゴルームの床は低くスクエア。リアシートはもちろん60:40のダブルフォールディングで、全倒すれば最大2750Lという広大なカーゴスペースが生まれる。フロントウインドー上とサイドウインドー上には旅客機の荷物入れのようなオーバーヘッドコンソールもセットされ、小物入れも室内のあちこちに備えられている。
パワーユニットは最高出力75psと最大トルク11.9kgmを発揮する1.4LのSOHCだから、走りにはあまり期待をしていなかったのだが、これが思いのほか軽快に走る。2000rpm以下では少しトルクが細いが、それより上の回転域ならピックアップも良い。タイヤは少々ゴツゴツ感もあるが不快なレベルではなく、乗り心地もまずまずだ。何よりも目線が高く、コンパクトなサイズで見切りがいいので、狭い道でも運転がすごく楽だ。
今回は試せなかったが、高い車高ゆえの高速での安定性(特に横風)や、人や荷物を満載したときの動力性能は気になるところ。もっとも、インポーター側の話では、いずれも問題ないレベルにあるという。
いずれにせよ、可愛いスタイリングに高い使い勝手、動力性能もまずまずで装備も充実、これで価格は175万円と、ファンカーゴより約30万円高いだけ。年間販売予定台数は800台というから、お目立ち度抜群の小型ハイトワゴンをお探しなら、早めに予約しないと手に入らないかもしれない。
■ルノー カングー 主要諸元
●全長×全幅×全高:3995×1675×1827mm
●ホイールベース:2600mm
●車両重量:1180kg
●エンジン形式:直4・SOHC・横置きFF
●排気量:1389cc
●最高出力:55kW(75ps)/5500rpm
●最大トルク:114Nm(11.9kgm)/4250rpm
●トランスミッション:4速AT
●タイヤ:175/65R14
●車両価格(当時):175万円