2020年10月11日、 F1第11戦アイフェルGP決勝がドイツ・ニュルブルクリンクで行われ、メルセデスAMGのルイス・ハミルトンがシューマッハに並ぶ最多優勝記録91勝を達成したが、レース終盤にそのハミルトンとマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)が激しいファステストラップ争いを繰り広げ、フェルスタッペンが最速ラップポイントを獲得しことも大きな注目を集めた。F1撤退騒動の中、ホンダのパワーユニットが確実に進化していることを実感させるシーンだったが、ではアイフェルGPをホンダ勢はどう戦ったのか、振り返ってみよう。

明暗を分ける形となったがパフォーマンスは上々

7年ぶりのニュルブルクリンクというのに、金曜日の走行が雨と霧のためにすべてキャンセル、しかも低い気温に降雨の予報が重なって、第11戦アイフェルGPは「不確実で予測不能」な、やっかいであり、興味深いグランプリとなった。

日曜日、レース前の気温は9度、予想されたほど気温は下がっていないものの、降水確率は40%と言われる中で決勝スタートが切られた。上位10台はすべてソフトタイヤを装着、アルファタウリ・ホンダの2台はミディアムタイヤをチョイスした。

画像: 決勝レース開始前の気温は9度。天候の悪化も予想される中でレースは行われた。

決勝レース開始前の気温は9度。天候の悪化も予想される中でレースは行われた。

予選3番手のフェルスタッペンは好スタートを切ってハミルトンに並びかけるが、接触を避けてメルセデス勢に続く3番手に。予選5番手のアレクサンダー・アルボンは1つ順位を落として6番手での走行となる。

アルボンは1周目の攻防でフラットスポットを作ってしまい、7周目にミディアムタイヤに履き替えて後退。16周目にはダニエル・クビアト(アルファタウリ・ホンダ)をオーバーテイクする際に接触し(5秒加算のタイムペナルティ)、さらにデブリによりラジエターが破損してパワーユニットのデータに異常が発生したためリタイアとなった。

優勝争いでは、首位を走行していたバルテリ・ボッタス(メルセデス)がタイヤをロックしてダメージを負ったために早めのピットストップ。これでハミルトンが首位、フェルスタッペンが2番手に。その後、フェルスタッペンはバーチャルセーフティカーが発動した際にミディアムタイヤに交換してボッタスの前の2番手でレースを進める。

フェルスタッペンは45周目のセーフティカー導入の際に再びソフトタイヤへの交換、トップのハミルトンを追いかけながら、レース終盤にはハミルトンと激しい最速ラップ争いを演じ、最終ラップに逆転でファステストラップをマーク、ロシアGPに続く2位表彰台とともにプラス1ポイントを獲得した。

一方、予選12番手のピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)はスタートタイヤのミディアムでロングスティントを走りきり、折り返しを過ぎた31周目でハードタイヤに交換。レース復帰後、8番手までポジションを上げると、44周目のセーフティカー導入の際に2ストップに作戦変更。ソフトタイヤに交換すると、見事にロマン・グロージャン(ハース)、シャルル・ルクレール(フェラーリ)を立て続けにオーバーテイクして、6位でフィニッシュした。

予選13番手のクビアトは、アルボンとの接触で破損したフロントウイングを交換すると同時にハードタイヤを装着。その後、44周目のセーフティカー導入の際にソフトタイヤに交換するも、15位でポイント獲得はならなかった。

ホンダ勢はフェルスタッペンが2位、ガスリーが6位に入る一方で、クビアトが15位、アルボンがリタイアと明暗を分ける形となったが、パワーユニットは快調で次戦以降に大きな期待が持てる結果となった。

画像: アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ 左)とダニール・クビアト。この後、接触してしまう。

アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ 左)とダニール・クビアト。この後、接触してしまう。

ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターは、アイフェルGPを終えて「アイフェルGP決勝は、F1としては異例となる10度を切る低い外気温に加え、路面温度も非常に低い中で行われました。そんな中、レッドブルのフェルスタッペン選手が予選3番手から着実な走りで2戦連続となる2位表彰台を獲得しました。ファステストラップの獲得も併せて、我々に力を与えてくれる表彰台だと感じています。12番手からスタートしたアルファタウリのガスリー選手は、中段グループの激しい戦いの中でいくつものオーバーテイクを見せる強い走りで、6位入賞を果たしました。こちらも、ガスリー選手、チーム、そして我々にとって、この先の後半戦に向けて大きな励みになる結果でした。ここから1週間を空け、F1としては初開催となるポルトガル・アルガルベでのレースになります。十分に事前準備をして臨みたいと思います。最後になりますが、今日のレースでミハエル・シューマッハ選手が持つ91勝の最多勝利記録に並ぶという偉業を達成したハミルトン選手に、ホンダを代表しておめでとうの言葉を贈ります」とコメント。ドライバーは次のように語っている。

マックス・フェルスタッペン

画像: ロシアGPに続いて2位表彰台を獲得したマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)。同条件下で、ハミルトンを制してファステストラップも獲得。

ロシアGPに続いて2位表彰台を獲得したマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)。同条件下で、ハミルトンを制してファステストラップも獲得。

「全体としてポジティブな週末になりました。ロシアGPに続き2位表彰台を獲得できたことは喜ぶべき結果だと思います。レースでは前を走るハミルトン選手に迫るようにトライしていましたが、彼と戦うほどの速さはありませんでした。それでも、全体的なパフォーマンスはよかったと思っています。今週末は車体として一歩前進できたことをうれしく思っていますが、まだまだ改善が必要です。毎週末メルセデスといい戦いができるよう、さらにプッシュを続けていきます。レース途中でのセーフティカー導入後の再開時は、低い外気温により僕のマシンのタイヤが冷えていたのに対して、後続のマシンは周回遅れを回復するために走行してタイヤが温まった状態だったので、簡単ではありませんでした。もちろん、ファステストラップを獲得し、追加の1ポイントを取れたこともうれしく思っています」

アレクサンダー・アルボン

画像: 予選5位と好調だったが、1周目にフラットスポットを作ってしまい、レースをうまくまとめられなかったアレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)。

予選5位と好調だったが、1周目にフラットスポットを作ってしまい、レースをうまくまとめられなかったアレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)。

「今日のマシンのペースはよかったので、このような結果になり残念です。1周目に接触を避けようとしてタイヤをロックアップさせてしまい、フラットスポットができて深刻なバイブレーションが発生していたので、早めにピットストップを行わなければなりませんでした。ダニールとの接触は、まだ何が起きていたかよく分かっていませんので、もう一度振り返る必要があります。僕が思うに、リスタート時、彼はシケインの進入で少しワイドになったのかもしれませんし、僕もややミスジャッジがあったかもしれません。その後、チームからはマシンの温度が上昇しているのを見て、ピットインしてリタイアするように言われました。最初はデータからパワーユニットの問題のように見えましたが、チームが調査したところデブリがラジエターに入って温度の上昇を引き起こしていたことを解明してくれました」

ピエール・ガスリー

画像: ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)。ミディアムタイヤでスタート、予選12位から6位でフィニッシュ。

ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)。ミディアムタイヤでスタート、予選12位から6位でフィニッシュ。

「昨日はやや苦しい結果だっただけに、今日は本当にうれしいです。望んでいたマシンバランスに持っていけず、感触はあまりよくなかったです。いつも決勝レースではペースがよく、ポイント争いができるとは思っていましたが、今日はとても楽しかったです。コース上で多くのバトルをして、攻めたりディフェンスしたりと、いろいろな状況がありましたが、そのすべてを心から楽しみました。チームはすべて適切なタイミングで正しい判断を下してくれましたから、今日の6位には本当に満足しています」

ダニール・クビアト

画像: ダニール・クビアト(アルファタウリ・ホンダ)。アルボンとの接触で後退、今回はそこから挽回するチャンスがなかった。

ダニール・クビアト(アルファタウリ・ホンダ)。アルボンとの接触で後退、今回はそこから挽回するチャンスがなかった。

「アルボン選手と接触した瞬間から後方での戦いになり、いい結果にはなりませんでした。彼がどうしたかったのかは分かりませんが、結果として僕のフロントウイングは破損してしまい、フロアとブレーキダクトにも大きなダメージが残りました。さらに、ピットへ入るまではフロントウイングなしで低速走行せねばならず、当然ウイング交換にも時間がかかるわけで、そのあと僕にできることはあまり残されていませんでした。マシンはダウンフォースを大きく失っており、苦しかったです。雨が降るなど挽回できるチャンスを願っていましたが、何も起こりませんでした。力強いレースができていると感じていただけに、残念です」

画像: アイフェルGPの各ドライバーのタイヤ戦略。15周目あたりのバーチャルセーフティーカーと45周目あたりのセーフティーカーがポイントになっているのがわかる。

アイフェルGPの各ドライバーのタイヤ戦略。15周目あたりのバーチャルセーフティーカーと45周目あたりのセーフティーカーがポイントになっているのがわかる。

タイヤを供給するピレリは、アイフェルGPについて「低温のコンディションや金曜日のセッションが中止になるなど、極めて異例のレースとなりました。すべての準備作業を土曜日のフリー走行セッションで行い、タイヤの摩耗に関するデータがなかったにもかかわらず、大きな混乱はありませんでした。戦略に大きな影響を及ぼしたのは、バーチャルセーフティーカーとセーフティーカーでした。これらの導入は上位勢にとって絶好のタイミングとなり、エキサイティングなフィナーレを演出しました。1ストッパーはハースのロマン・グロージャンだけでした。また最も大きくポジションを上げたドライバーは、緊急招集されたレーシングポイントのニコ・ヒュルケンベルグでした。20番グリッドからスタートしたヒュルケンベルグは、ソフト-ミディアム-ソフトと繋ぐトップ5と同じ戦略を採り見事に8位を獲得しました」と分析している。

次戦第12戦ポルトガルGPは、10月23日から25日、アルガルベ・インターナショナルサーキットで開催される。

2020年F1第11戦アイフェルGP 決勝 結果

優勝 44 L.ハミルトン(メルセデスAMG) 60周
2位 33 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)+4.470s
3位 3 D.リカルド(ルノー)+14.613s
4位 11 S.ペレス (レーシングポイント・メルセデス)+16.070s
5位 55 C.サインツ(マクラーレン・ルノー)+21.905s
6位 10 P.ガスリー (アルファタウリ・ホンダ)+22.766 s
7位 16 C.ルクレール(フェラーリ) +30.814s
8位 27 N.ヒュルケンベルグ(レーシングポイント・メルセデス) +32.5966s
9位 8 R.グロージャン(ハース・フェラーリ) +39.081s
10位 99 A.ジョビナッティ(アルファロメオ・フェラーリ) +40.035s

15位 26 D.クビアト(アルファタウリ・ホンダ)+55.588 s
23 A.アルボン (レッドブル・ホンダ)リタイア

F1ドライバーズランキング(第11戦終了時)

1位 L.ハミルトン(メルセデスAMG)230
2位 V.ボッタス(メルセデスAMG)161
3位 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)147
4位 D.リカルド(ルノー)78
5位 S.ペレス (レーシングポイント・メルセデス)68
6位 L.ノリス(マクラーレン・ルノー)65
7位 A.アルボン (レッドブル・ホンダ)64

F1コンストラクターズランキング(第11戦終了時)

1位 メルセデスAMG 391
2位 レッドブル・ホンダ 211
3位 レーシングポイント・メルセデス120
4位 マクラーレン・ルノー 116
5位 ルノー 114
6位 フェラーリ 80
7位 アルファタウリ・ホンダ 67

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