あいにくのウエットコンディションの中を走り出せば、2000rpmあたりから立ち上がる0.5kg/平方センチのブーストによって、グッと盛り上がる加速を見せる。ウエットのワインディングを時には乱暴に、時には余裕を持ってスピードを乗せて行くこの感覚は、自然吸気エンジンでは表現できないものだ。
コンパクトな車体にオーバーパワーとも言えるこのテイストは、やはり往年のボーイズレーサーを彷彿とさせる。とはいえ、すべてが懐古主義に浸っているわけではない。
足まわりは今回のマイナーチェンジでややマイルドな方向へと変更され、乗り心地の向上だけでなく、コントロール性を増した印象が強い。今回、コンディションとしては最悪だったウエットのワインディングでこう感じられたことがそれを証明している。これならパッセンジャーから文句が出ることもなく、またロングドライブでも許容できるレベルだろう。マイナーチェンジ前のシャープな乗り味も捨てがたいが、トータルして考えれば正常進化だろう。
リファインされたヴィッツ TRDターボMは、ボーイズレーサーという懐かしさを持ちながらも、現代が求める安全性や快適性をきちんと備えることで成長している。トータル性能を高めたこのクルマなら、今後もより多くのファンを獲得することだろう。
■モデリスタ ヴィッツ TRDターボM 主要諸元
●全長×全幅×全高:3800×1695×1505mm
●ホイールベース:2460mm
●車両重量:1060kg
●エンジン種類:直4 DOHCターボ
●排気量:1496cc
●最高出力:110kW<150ps>/6000rpm
●最大トルク:196Nm<20.0kgm>/4800rpm
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:横置きFF
●タイヤ:205/45R17
●当時の車両価格<税込み>:221万5500円