2008年、ビッグマイナーチェンジを受けたメルセデス・ベンツSLは、目を見張る充実した内容となっていた。ダイレクトステアシステム、SL63AMG、AMGスピードシフトMCTの設定など、見所もたっぷり。ここではアメリカ・カリフォルニアで行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年6月号より)

こうして、フロントセクションを中心としたボディのリファインにより全長も30mmほど伸びた新型。そのエンジニアリング上の興味の焦点はまず、SL350に搭載される3.5LのV6エンジンが大幅なパワーアップを果たしたことにある。

さらなる高回転・高出力化をという命題の下に吸気系の徹底したチューニングや圧縮比のアップ(10.7→11.7)が行われた新エンジンは、従来型に対して実に44psもの出力上乗せに成功。そんな新たな心臓を7速ATと組み合わせた結果の6.2秒という0→100km/h加速タイムは、従来型のデータをコンマ4秒短縮したという。

実際、そんな新しいSLの速さは、アクセルペダルのひと踏みで実感ができる明確さ。どんなシーンからも「文句ナシのリアルスポーツカー」と思える加速感が味わえるのが、今度のSL350と言って良い。さらにそんな加速をフィーリング面からサポートするのが、やはり新たに手に入れた逞しいサウンドだ。中でも、パドルシフトの操作でダウンシフトを命じた際の、ブリッピング制御による歯切れの良い音色などは、スポーツ派ドライバーの心を大いにくすぐるものに違いない。

アメリカは、カリフォルニアの山間部を舞台に開催された国際試乗会に用意されたテスト車には、そのすべてにやはり新テクノロジーであるダイレクトステアシステムが採用されていた。中立付近では標準レシオよりもわずかに遅く、ステアリング舵角上で5度から100度の間ではプログレッシブに変化。そして100度以上では3割ほど速いギア比に設定するという制御をラックの歯の刻み方によって実現させるこのシステムが、安定感を維持しつつシャープなハンドリング感を演出していたことには感心した。

が、大変残念なことに本来はメーカーオプションとして用意されるこのアイテムは、今のところ日本導入の予定にはなっていないという。個人的には、むしろこれを新しいSLの大きな売り物として標準仕様化しても良いくらいと思えたのが⋯⋯。

画像: フェイスリフトで新しい顔つきとなったメルセデス・ベンツSL。リアはバンバーとエグゾーストパイプフィニッシャーのデザイン変更に留まる。 写真はSL350。

フェイスリフトで新しい顔つきとなったメルセデス・ベンツSL。リアはバンバーとエグゾーストパイプフィニッシャーのデザイン変更に留まる。 写真はSL350。

This article is a sponsored article by
''.