2008年1月のデトロイトショーでデビューしたBMW X6。「SUVクーぺ」という新しい発想から生まれたモデルだ。北米市場を中心にビッグサイズのプレミアムSUVの人気は高まっていたが、その斬新なスタイリングはどのように受け入れられたのか。今回はアメリカ・サウスカロライナで行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine2008年6月号より)
前後はもちろんのこと左右にもトルクを配分
シェーバーのような形をしたセレクトレバーの脇にあるボタンを押して手前に引くと、軽いショックでDレンジに入る。アクセルペダルをわずかに踏み込んだだけで、長さ4.9m弱、重量2.3トン近くの巨体がZF製6速オートマチックを介して思ったより軽快に発進する。
最大トルクは1750rpmから得られるので、その後の加速は豪快だ。メーカーのデータによればスタートから100km/hまでの加速は5.4秒、最高速度は250km/hでリミッターが介入する。
アメリカンハイウェイでの65マイル走行は、鼻歌交じりで快適極まりない。また路面の悪い箇所に飛び込むと、アダプティブドライブシステムがハイスピードでクルマの動きを感知し、ダンピングを最適化すると同時に、電子制御のスタビライザーでロールを抑制する。
このX6で標準装備されているダイナミック パフォーマンス コントロール(DPC)はxDrive と組み合わさり、トルクベクトリングを行う。すなわちエンジンパワーは前後だけでなく、左右にもアクティブに振り分けられる。
例えば、コーナーでの加速中にアンダー傾向が出ると後輪外側タイヤに駆動力が加わるので、X6はドライバーのステアした方向へニュートラルに進んで行く。しかもスロットルオフでもトルク伝達は行われるので、挙動は常に安定している。ただ、このシステムの作動を確認しやすいのはドライよりもウエット路面だ。