個性的なビッグサイズSUVの中でも異彩を放つ
X6はBMWが考え、世に送り出したニッチモデル、「SUVクーペ」である。「セダンにクーペがあるのだから、SUVにもクーペがあってもおかしくない」。確かにそうなのだが、それが一般のユーザーに一体どれほどのインパクトを与えるものなのか。これまでショー会場で観察しただけでは、なかなかピンとくるものはなかった。
そう思いながら遥々アメリカ南部のサウスカロライナ州、グリーンビルまでやって来た。まず自然光の下、様々なクルマの間に置かれたX6は、ポジティブな意味で個性的な印象を放っていた。
X5のプラットフォーム上に、まったく新しいボディが乗っているのだが、長さ4877mm、幅1983mm、高さ1690mmと、X6は長く、幅広く、そして低い。美的かと聞かれると戸惑うが、少なくとも私は気に入って、隣に並んでいたX5が重苦しいSUVのワゴンに見えてきた。しかし実際はV8エンジン同士を比べるとX6は2265kgで、X5(2185kg)より重い。
選んだ試乗車は新しい4.4L V8直噴ガソリンツインターボエンジンを搭載したX6 xDrive 50iで、最高出力407ps、最大トルク600Nmを発生する。
コクピットに乗り込むと見慣れたX5のインテリアが迎えてくれる。ドライビングポジションはX5よりやや低めだが、目前にはそれでも十分な視界が広がる。反対に後ろを振り向くと、フラットなリアゲートに寝かされたリアウインドウを通しての眺めは、トンネルの中から外を見ているようである。リアシートがセパレートになって二人しか乗れないのは、後方視界を確保するためかも知れないと勘ぐってしまう。ちなみにリアコンパートメントは低くスラントしたルーフにもかかわらず180cm以下の身長であれば、ロングドライブでも十分に寛げる。