2008年、メルセデス・ベンツから初代GLKもデビューしている。BMW X3がほぼ独占していたプレミアムコンパクトSUV市場にアウディQ5、VWティグアンなどともに参入、にわかにマーケットが活気を帯びてきた。では、初代GLKはどんな個性を発揮していたのか、ライバルとはどう違っていたのか。今回はドイツ・デュッセルドルフで開催された国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年9月号より)

本格的オフローダーの顔も併せ持つ2面性

デュッセルドルフから南東におよそ100km。試乗の目的地はシュロスブルグという場所にある古いお城。1133年に建てられたというこの古城の裏山に、本格的なオフロードコースが常設されており、一般道試乗に続いては、そこを試走できるという。

用意されたのはオプション設定のオフロードエンジニアリングパッケージ装着車。これはセンターコンソール上のボタンでアクセル特性やシフトポイントなどをオフロード走行に適したモードに変更できるほか、急坂を下る際に設定した速度を自動的に維持するダウンヒルスピードレギュレーション(DSR)も装備される。タイヤは前235/60、後255/55の17インチオールテレインを履いていた。

助手席のインストラクターの指示でスタート。斜度が40度近くありそうな急勾配、片輪が浮き3輪での走行となるモーグル、膝ほどの水深があるウォーターウエイ、こぶ山、丸太橋など、事も無げにクリアしていく。こういう場所の走行経験が少ないのでライバル車との優劣比較はできないが、少なくともGLKは本格的コースを難なく走ることができる実力は備えている。

これは、そのエクステリアデザインからも見て取れる。前後のオーバーハングを短くし、アプローチアングルを23度、デパーチャーアングルを25度にするなど、険しい場所でも走行できるように設計されているのだ。

街中ではスポーティSUVとしての爽快な走り、オフロードでは本格コースをもクリアできる悪路走破性。この相反する性能の両立を可能にしたのが、ダンパーの減衰力特性をフレキシブルに設定した「振幅感応ダンピングシステム」を持つ新開発のアジリティコントロールサスペンション。

コンパクトSUVというジャンルに、ここまでの本格派オフローダーとしての性能が必要なのか、という率直な疑問も残るが、これから拡大していくであろうこのジャンルで生き残り、人気を博すには、ライバルにはない魅力を持つということは非常に大事なことである。その魅力、プレミアム感を「群を抜いた悪路走破性」というものに求めた手法は、プレミアムSUV市場で30年もの間君臨し続けるGクラスに倣ったものだとも言える。

画像: Gクラスを思い出させる直線を基調にしたクラシカルなデザイン。

Gクラスを思い出させる直線を基調にしたクラシカルなデザイン。

全車4MATICを採用、ただしその構造上左ハンドルのみ

そうした走りを支える基本は4MATICシステム。GLKのドライブトレーンはすべて4MATICとなり、FRモデルの設定はない。

基本的に前45:後55にトルク配分されるこの4輪駆動システムは軽量コンパクトな設計で、GLKのベースとなったCクラスを例にとると、FRモデルと比較しても45kg増、燃費は100km走行に対してわずか0.2~0.4L増と非常に優れているという。

Sクラス以降、新しい乗用車系モデルに採用されているこの4MATICシステムは、フロントタイヤを駆動させるためのプロペラシャフトを、トランスミッション右側を通り前方に「戻す」形の構造のため、コンパクトな設計とは言え右前席の足下にはスペース的な制約がある。したがってこのGLKも右ハンドル仕様はなく、左ハンドルのみの設定となる。GLKの日本への導入は、2009年初頭が予定されている。(文:Motor Magazine編集部)

ヒットの法則

メルセデス・ベンツ GLK350 4MATIC 主要諸元

●全長×全幅×全高:4528×1840×1689mm
●ホイールベース:2755mm
●車両重量:1755kg(EU)
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3498cc
●最高出力:272ps/6000rpm
●最大トルク:350Nm/2400-5000rpm
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:7速AT
●最高速:230km/h
●0→100km/h加速:6.7秒
※欧州仕様

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