日常的に使えるスーパーカー。高性能をさらにグレードアップ
2021年1月13日、改良型フェラーリ ポルトフィーノMが日本上陸を果たした。「M」はイタリア語でアップグレードを意味する「Modificate」に由来する。
2017年に発売がスタートしたポルトフィーノは、2008年にデビューした「カリフォルニア」以来のフェラーリ流2+2 GTカブリオレの系譜へと連なるモデルだ。3年目となる今回の改良では、よりアグレッシブなスタイリングに生まれ変わるともに、SF90ストラダーレ譲りのパワートレーンなどダイナミック性能もポテンシャルアップ。パワーマネジメントやADASについても、新時代のスポーツモデルらしいアドバンテージを実現している。
もともとポルトフィーノは、日常的に乗りこなすための才覚を備えた稀有なスポーツカーだった。子供ふたりを含む家族4人で安心してスーパーカードライビングを楽しめる後席を備え、トランクルームも広く、実用性が高い。フェラーリのラインアップの中では比較的コンパクトなボディサイズは、日本の市街路でもストレスを感じることなく乗りこなすことができる。
ともすれば身構えがちな「フェラーリ」というブランドイメージのプレッシャーとは裏腹に、「日常的に使える」親しみやすいキャラクターの持ち主だったわけだ。3年目の初改良でも、そんなポルトフィーノらしさを損なうことなく、価値あるイノベーションを遂げている。「毎日乗りたくなる」フェロモンが、確実に濃度を増しているのだ。
もっと毎日乗りたくなる理由。その1「V8サウンドが気持ちいい」
従来型から継続搭載される3.9L V8ツインターボエンジンは、最高出力が620psへと20psアップ。カムプロファイルを変更してバルブリフト量を増大させるとともに、スピードセンサーを搭載した新型ターボチャージャーを採用、パワーアップだけでなくスロットルレスポンスもよりリニアなものへと進化している。
さらに、GPF(ガソリン・パーティキュレート・フィルター)を搭載した新設計のエキゾーストラインを新たに採用。フェラーリV8のサウンドが、さらに官能的な響きに生まれ変わっている。リアサイレンサーは廃止され、バイパスバルブも形状を変更、その制御についても新たなロジックが盛り込まれているという。
もっと毎日乗りたくなる理由 その2「新ギアボックスが小気味いい」
ポルトフィーノMは、新世代のフラッグシップモデルとなる「SF90ストラダーレ」に搭載されているものと同形式の8速DCTを新たに搭載。もちろんギア比はポルトフィーノM用に最適化され、ほとんどタイムラグを感じることのないキビキビとした変速感を実現している。
7速まではクロス気味のショートレシオでまとめて抜群のレスポンスとドライバビリティを演出、8速はクルージング重視のセッティングだ。シフト制御に関しては内製にこだわり続けるフェラーリだけに、操るのが楽しい絶妙なエモーショナル感が生み出されているハズだ。
もっと毎日乗りたくなる理由 その3「新ドライブモードが刺激的」
好みの走行特性を選択できるドライブモード「マネッティーノ」は、新たに2つのモードを追加して5つのポジションを備えるものに進化。雨や雪など滑りやすい路面状況でも安全性を高めてくれる「WET」などはまさに、日常性能を一気に高めてくれる新機能と言えるだろう。
それとは対照的に、ある意味「非日常的」なドライビングプレジャーを、最大限まで堪能させてくれるのが「RACE」モード。フェラーリ・ダイナミック・エンハンサーのサポートを受けて、ポルトフィーノMが持つビビットなハンドリングと絶大なトラクションを操ることができる。20ps向上したエンジンパワーの刺激を、限界域まで味わいつくすことができそうだ。
もっと毎日乗りたくなる理由 その4「快適&安心オプションで大満足」
もっと気持ちよく、小気味よく、刺激的に生まれ変わったポルトフィーノMだが、同時に普段使いでの居心地の良さもまたしっかり進化している。とくに注目したいのが、新たに設定されたオプション群だ。
たとえばシートにはヒーター機能を追加、首回りを温めてくれるネック ウォーマーも用意されている。暖かさのレベルは3段階に調整可能で、オープンエアで乗る気分をさらに盛り上げてくれそうな新装備だ。
グランドツーリングの安心感を高めてくれるのが、最新のADAS群。ACC(アダプティブクルーズコントロール)に加え、自動緊急ブレーキ、ブランドスポット・モニタリング、レーンデパーチャー・ウォーニング、ハイビームアシスト、トラフィックサイン・レコグニション、リアトラフィック・アラートを設定する。3D表示のサラウンドビューカメラも、ドライバーのストレスをしっかり軽減してくれそうだ。
フェラーリ ポルトフィーノM まとめ
パワーアップされたエンジンや最新の8速DCT、各種快適装備の充実ぶりなどを一覧すると、新しいポルトフィーノMは2019年に登場したGTクーペ「ローマ」に匹敵するポテンシャルに進化していることがわかる。
最高速や加速性能もさらに向上した上で、リトラクタブルハードトップが生み出すオープンエアドライビングの醍醐味まで味わえる・・・真に贅沢な1台がポルトフィーノMなのだ。(文:Motor Magazine編集部 神原 久/写真:小平 寛)
フェラーリ ポルトフィーノM 主要諸元
●全長×全幅×全高:4594×1938×1318mm
●ホイールベース:2670mm
●乾燥重量:1545kg
●エンジン:V8 DOHCツインターボ
●総排気量:3855cc
●最高出力:456kW(620ps)/5750−7500rpm
●最大トルク:760Nm/3000−5750rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:8速DCT
●最高速度:320km/h以上
●0→100km/h加速:3.45秒
●0→200km/h加速:9.8秒
●車両価格(税込):2737万円